映画評「盗まれた欲情」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1958年日本映画 監督・今村昌平
ネタバレあり

今村昌平は殆ど観ているが初期の作品二、三本が抜けている。これはその一本である監督デビュー作。原作は今東光の「テント劇場」。

大学出の演劇青年・長門裕之はどさ回りの芝居一座に演出家兼雑用として働いているが、実際のところその通俗ぶりに飽き飽きしている。彼を引き止めているのは看板役者・柳沢真一の美しい妻・南田洋子への恋情であるが、その一方で彼女の妹・喜多道枝は彼に惚れ込んでいる。

本流はこの四角関係だが、傍流である一座の情景のほうが面白い。特に、印象的なのは、田舎で一座が土地所有者・小沢昭一と土地を貸す・貸さないと喧々囂々と繰り広げるやり取りで、どさ回りのムードがよく出ている。また、田舎風景の点出もなかなか優秀。

青年は一座と離れる決心をするが、結局恋しい人は夫と離れられず、妹が青年の後を追いかけて来る。
 映画としてはこの幕切れが圧倒的に良い。そこはかとないペーソスが漂い、かつ二人がそれなりに前向きなのが実に宜しい。

今村監督としてはまだ目覚める前といった小品的風情で、ネオ・リアレスモ時代のフェデリコ・フェリーニと似通ったリアリズムの味わいだが、デビュー作としては堂々たる印象を残す。川島雄三の助監督時代の経験がものを言っているようだ。

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この記事へのコメント

みのり
2006年04月28日 07:46
TBありがとうございます。
>本流はこの四角関係だが、傍流である一座の情景のほうが面白い。
全くその通りだと思います。 脇役の役者さん達が達者なせいか、旅役者一座のエピソードの方が楽しかったです。
オカピー
2006年04月28日 10:02
みのりさん、こんにちは。
今村監督もこの頃は大分庶民的で、まるでイタリア映画を観ているようですが、「にっぽん昆虫記」あたりから強烈な今村節が出てまいります。
恋愛模様そのものより、もっと人間くさい部分に焦点を当てる今村さんらしいところが僅かに出ているようですね。
viva jiji
2006年05月28日 19:56
未見です。今、これ、手に入りますかね?何ともはやチープな題名ですね。「テント劇場」じゃ、まあ客こないですね。(笑)スケールは全く小粒ですけど、テリー伊藤がアタマ丸めたら、生臭坊主の権化、現代風「今東光」になりそう!(笑)和尚の著書は大部読みました。ところでやっと昌平さんの「赤い殺意」脱稿しました。近日UPします。読んでやって下さい。
オカピー
2006年05月29日 14:40
viva jijiさん、返事が遅れました。
DVDで手に入りますが、同じ年に作られた「西銀座駅前」と二本立てで4000円を超えます。ちーと高いです。
「赤い殺意」も個人的にDVDを作り、時間が出来たら再鑑賞の予定ですが、時間がないのですよ。「アナコンダ2」を観る代わりに古い映画を観た婦がいいのは分っているのですが。観たら、拝読してこっそり盗作し映画評を書きますよ(笑)。
和尚ねえ、昔TVでお姿を拝見しただけです。私と違って随分現代文学を読んでいらっしゃいますね。

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  • <盗まれた欲情> 

    Excerpt: 1958年 日活 93分 監督 今村昌平 脚本 鈴木敏郎 撮影 高村倉太郎 音楽 黛敏郎 出演 国田信吉:長門裕之    山村千鳥:南田洋子    山村民之助:滝沢修    山村栄三郎.. Weblog: 楽蜻庵別館 racked: 2006-04-28 07:41