映画評「こわれゆく女」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1975年アメリカ映画 監督ジョン・カサヴェテス
ネタバレあり

70年代末くらいから80年代にかけてインディーズの雄ジョン・カサヴェテスのブームがあったのを思い出す。ウッディー・アレンの前に小市民の生活を写生し続けた写実作家だが、僕には「ローズマリーの赤ちゃん」などの俳優としてのイメージが強い。

土木課の作業員ピーター・フォークは 水道事故で妻ジーナ・ローランズと水いらずに過ごす約束を果たせない。神経症の彼女は夜の街を歩いてバーでその気もないのに男を引っかける。翌朝旦那が同僚を7、8名連れて戻り、彼女はお決まりのスパゲッティで供応するが、旦那は妻の子供じみた言動が気に入らない。
 夫婦にはまだ幼い三人の子供たちがいて、妻が子供たちの友達を預かることになる。そこへ仕事でいらいらしている夫が帰宅して激怒、均衡を失っていた彼女の神経はここにプツンと切れてしまう。

妻は愛情が異常に強い故に神経症になり、夫は彼女を愛しながら支えきれないことにイライラし、悪循環を重ねていたようだ。精神分析的にはそういうことだろうが、映画としてはどうか。

映画文体のしっかりした作品が好きなので、時々被写体にピントが合わなかったりといった、かかる即興演出的な作品にはそれほど惹かれないが、ワン・カット・ワン・シーンを基本としているような長廻しは演劇的なムードを醸し出し、そこへクローズアップを駆使されると無視出来ない凄みが現れる。

精神の均衡を失う主婦という共通性のあるユージーン・オニールの三幕戯曲「夜への長い旅路」を思い出させる心理劇になっているが、あの作品の幕切れが救われないのに対し、病院から帰宅した彼女が小異変の後突然至極冷静になり、夫婦の愛情が復活するというハッピーエンドになっている。
 一般的とは言えないが、演劇的な演技合戦が観たい方には是非お勧め。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2006年06月09日 17:02
TB&コメント有難うございます。こちらにもTBさせて下さい。
不覚にも「ローズマリーの赤ちゃん」を観てないのです(>.<)。ポランスキーの初期の作品って恐そうなものばかりで…。ぜひ観たいとは思っているのですが…。
オカピー
2006年06月10日 03:49
ぶーすかさん、こんばんは。
「ローズマリーの赤ちゃん」は「エクソシスト」より不気味ですよ。
ポーランド時代の「水の中のナイフ」なんてのはなかなか面白い味をしていると思いますが、なかなか観られませんね。

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    Excerpt: ●こわれゆく女……………………………★★★★★ 【NHKBS】ジーナ・ローランズ、ピーター・フォーク主演、ジョン・カサベテス監督の名作。子供の頃に観た時、ジーナのあまりにも鬼気迫る演技に息が詰まり苦.. Weblog: ぶーすかヘッドルーム・ブログ版 racked: 2006-06-09 16:43
  • <こわれゆく女> 

    Excerpt: 1974年 アメリカ 147分 原題 A Woman Under the Influence 監督 ジョン・カサヴェテス 脚本 ジョン・カサヴェテス 撮影 マイク・フェリス  デヴィッド・ノウ.. Weblog: 楽蜻庵別館 racked: 2007-08-06 20:14