映画評「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」

☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1975年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

「男はつらいよ」シリーズは第1作を除いてテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。

シリーズ第15作はご贔屓マドンナ、フーテン・リリーこと浅丘ルリ子の再登場である。前回に増して、フーテンの侘しさが身に染みる。

今回は、転々とする二人に家出サラリーマン船越英二が絡んできての珍道中。可笑し味も至極ハイテンションである。
 リリーは寅さんに惚れ込んでいるが、彼は避けようとする。この流れは心情的にクライマックスに達する第25作「寅次郎ハイビスカスの花」まで続く。リリーの出演は計4作となるが、格別の味わい。
 
身内に愛されようと努力したり、浮草稼業を止めようと努力するのにいつも空振り。追いかけてくるマドンナからは逃避する。
 寅さんには色々なジレンマがある。彼のジレンマが分らなければこのシリーズを理解したことにならない。彼の傍若無人ぶりに怒っても仕方がなく、笑っているだけでは能がない。彼の心中の侘しさに触れなければ観た意味がないのだ。

その全てが収まっているリリー・シリーズ、その中でも浮草稼業の悲哀がピークに達する本作と二人の関係がクライマックスに達する「ハイビスカスの花」に敬意を込めて最高点を進呈したいと思う。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2006年04月13日 19:50
テレビで再放送をまた観ましたのでTBさせて下さい。寅さんは何度観ても面白いですね。
私も、今まで観た寅さんシリーズのなかで最高点をつけました。同じフウテン暮しで、理解し合えるリリーと寅さん。理想的な相手に出会ったように思えるのに、近すぎるのがアダになっているのか、一緒になれないジレンマが悲しいです。
オカピー
2006年04月14日 02:04
ぶーすかさん、こんばんは。
「寅さん全集」DVD化を進めております。
人が病気にならなくても、死ななくても、残酷な別れがなくても泣けるんでるよ。それが人情!
「釣りバカ日誌」では寅さんの代替はできまへん!
蟷螂の斧
2020年08月02日 07:40
おはようございます。「寅次郎 相合い傘」ちょっと前にBSテレ東から録画して見ました。
メロンを食べられて怒る寅次郎。リリーが寅さんの結婚相手にどうかと言う話を聞かされた後だけに・・・。面白くも悲しくもありました。

>吉本隆明「共同幻想論」

1968年。学生運動がピークだった時代に出版されたんですね。「国家とは何か? 国家と自分とはどう関わっているか?」

>香港映画のギャグは昔の西洋映画を勉強した結果

ジャッキー・チェンの映画や「Mr.Boo」シリーズがそうでしょう。

オカピー
2020年08月02日 18:35
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>面白くも悲しくもありました。

それが寅さんですね。昔こんな一句を読みました。“おかしくて やがて哀しき 寅次郎」

>>吉本隆明「共同幻想論」
>1968年。学生運動がピークだった時代に出版されたんですね。

実はまともには読んでいないんですよ^^;
しかし、どういう書籍かはしっていましたし、たまたまNHKのEテレでやっていましたので、たまたま良い素材と思い、紹介してみました。

>ジャッキー・チェンの映画や「Mr.Boo」シリーズがそうでしょう。

仰る通り。
 その何年か前までは、日本映画がしきりにアメリカの西部劇、アクション、スリラーからしきりに借用していました。
 小津安二郎も「東京物語」他で、も戦前のアメリカ映画「明日は来らず」の影響を受けていますよ。
蟷螂の斧
2020年08月02日 18:41
いつもご丁寧なレスをありがとうございます。

>かしくて やがて哀しき 寅次郎

良い五七五です。

>戦前のアメリカ映画「明日は来らず」

小津監督もそういう良き影響を受けてるんですね。

さて、昨日僕は「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を見ました。メリル・ストリープ、好演でした。女性首相の苦悩。アルツハイマー。育児。夫との関係。家柄。いろいろありました。
オカピー
2020年08月03日 18:21
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>小津監督もそういう良き影響を受けてるんですね。

一番影響を受けているのは、エルンスト・ルビッチという、ビリー・ワイルダーの師匠に当たる艶笑喜劇を得意とした大監督で、「淑女は何を忘れたか」は一見してそれと分り、ゴキゲンでした。

>マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を見ました。
>メリル・ストリープ、好演でした。

彼女は何をやっても上手いですが、僕の周辺では彼女を嫌う人が多いです。僕は複数の映画で聴いた彼女の歌唱力に感心しましたよ。

>アルツハイマー

レーガンもサッチャーもアルツハイマーを患い、政治家に負わされた重荷のせいかと思ってしまいます。たまたまですかね?
 彼らと仲の良かった僕の母校の先輩・中曾根康弘氏は100歳を超えるまで矍鑠と過ごして、大往生しました。表立って強くは批判しなかったものの、安倍政権に対しては文句を言いたいことが多かったのではないでしょうか。
蟷螂の斧
2020年08月06日 18:54
こんばんは。家出サラリーマン船越英二。初恋の女性が経営する喫茶店に行く。未練。男にはああ言う面がある。女々しい。男々いいと言う言葉が無いのが不思議。男の腐ったような奴と言う言葉も無い。

>エルンスト・ルビッチ

僕が知らない大監督です。

>僕の周辺では彼女を嫌う人が多いです。

なぜでしょう?

>安倍政権に対しては文句を言いたいことが多かった

文句を言いたかった事の上位1~3位は何でしょう?

いつも勉強になります。ありがとうございます。

オカピー
2020年08月07日 18:49
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>>僕の周辺では彼女を嫌う人が多いです。
>なぜでしょう?

うまいから? 時々それが計算に見えるのではないでしょうか?

>>安倍政権に対しては文句を言いたいことが多かった
>文句を言いたかった事の上位1~3位は何でしょう?

1位から3位というわけには行きませんが、中曽根氏はそもそも二世三世の政治家を余り信用していなかったようです。自分の子息も議員ですけどね。
 安保法についても、9条改正についても、タカ派と言われた人ですから、反対する理由はなかったわけですが、(戦争を肌で知っている自分と比べて)安倍氏の名前を残したいがためにするようなところを買っていなかったと思います(インタビュー等では、よくやっている等褒めていますが)。
蟷螂の斧
2020年08月09日 10:46
こんにちは。中曽根氏は材木問屋の息子さんですよね。海軍の少佐までなった人。戦争の怖さはわかっていたでしょう。日米同盟と防衛力の強化に努めた人ではありますが。そして「歴代首相の中で一番答弁が上手な人だ。」と僕の親父が言ってました。出身高校(旧制中学)はオカピー教授と同じ『高高』(たかたか)でしょうか?
コロナウイルスに猛暑。経済的な不安。これから色々起きるでしょう。だからこそ昭和の時代の「男はつらいよ」を見ると皆さんほのぼのとした気持ちになるのでしょう。松竹の映画と言うのはほのぼの路線が多いのでしょうか?東映は濃い作品が多いです。
オカピー
2020年08月09日 22:11
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>日米同盟と防衛力の強化に努めた人

その意味ではあべっちに通じますね。先の文章を書いた後で、中曽根さんが安倍政権について何か言っているか調べたところ、「今の人たちは、ファッションで政治をやっている」と言っているのがありましたよ。

>「歴代首相の中で一番答弁が上手な人だ。」と僕の親父が言ってました

異議なしですね。当時「言葉は明解だが、意味不明」とも言われましたが(笑)

>出身高校(旧制中学)はオカピー教授と同じ『高高』(たかたか)でしょうか?

そうです。在籍中学校で講演を聞いたことがありますが、素晴らしい声で全くカリスマ性がありましたね。当時はまだ首相ではなかったですが。
 当時首相だったのはもう一人の先輩・福田赳夫氏で、高中きっての秀才と言われ、入学前に既に今で言う生徒会長に決まっていたとか。
 当時の群馬三区はこの二人がいつも選挙に出るので大変でした。うちの両親は親父が勤める町工場にもやって来るなどする素朴な福田さんが好きだったようです。

>コロナ・・・「男はつらいよ」を見ると皆さんほのぼのとした気持ちに
>なるのでしょう。松竹の映画と言うのはほのぼの路線が多いのでしょうか

小津安二郎が活躍し始めた戦前から松竹は一貫して家庭的な作品を多く撮ってきました。面白いのは、山田洋次は松竹入社した頃はとんがっていて、小津が大嫌いだったようですが、本人曰く「いつの間にか、小津さんそっくりになってきた(苦笑)」そうです。

>東映は濃い作品が多いです。

五大映画会社の中では圧倒的に見ていないですね。殿様映画の後は任侠映画ですから、とうも若い僕の食指が動かなかった。たまに「飢餓海峡」のような素晴らしい現代劇も発表しましたが。

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