映画評「二人で歩いた幾春秋」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1962年日本映画 監督・木下恵介
ネタバレあり

河野道工の歌集をベースにして木下恵介が脚本化して映像化した人生ドラマ。「喜びも悲しみも幾年月」と似た題名というだけでなく、主演二人が同じで、音楽(恵介の弟・忠司)も似ているので時に微苦笑を誘われることもある。

山梨県、昭和21年無事に復員した佐田啓二は老いた両親、妻・高峰秀子、息子を養う為に道路工夫になるが、食べていくのがやっとである。見込まれて妻が役所の用務員になりややゆとりが出来たとは言え、人情味に欠ける上司や一向に向上しない生活に不満もたまり、学業優秀の息子(山本豊三)の行く末だけを楽しみにする日々。

そうした日常の喜怒哀楽が短歌で表現されるのが特徴で、なかなか巧い歌が多いなあなどと能天気に感心していたら後で歌集が原作と判った。

佐田が初恋の人である未亡人・久我美子と密会する場面に曖昧さが残るのが気になるが、概してトーンは一貫していて、いよいよ終盤に入る。
 京大に入ったものの仕送りが少なくバイトで学費を稼ぐ必要から成績芳しからず留年、遂に中退を決意するが、両親は懸命に説得、昭和37年彼は京大を巣立っていく。

終盤母親が下宿先に訪ねる場面に我が学生時代を思い出し泣けてきた。僕も似たような環境にいて、心配した母親が時に遠方からやって来たものだが、どうしてもオーヴァーラップしてしまうのである。
 この作品の両親は「息子の為に働いてきたようなもの」と嬉しさをもって述懐するが、多かれ少なかれ親とはそういうものなのだと胸に迫り、そうした感慨は、新味不足の感の否めない映画の出来栄えを超えたものがある。

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