映画評「お茶漬の味」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1952年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり
 
久しぶりの再鑑賞。

ああ、これは自身の傑作「淑女は何を忘れたか」の焼き直しであったのか! 
 かかあ天下の紳士(佐分利信)が最後には奥方(木暮実千代)に認められる、という構図だけでなく、紳士と姪(津島恵子)の関係、姪と紳士の後輩との関係(鶴田浩二)はそのままである。ないのは子供の描写であり、奥方が嘘を付いて旅行するというアイデアは新しい要素であるが、立場を入れ替えれば似ている部分もある。紳士と姪がパチンコする場面は、「淑女」の宴会に相当しよう。この時の嘘と奥方の嘘が似ているわけである。比較はそれくらいにして、この作品の評価と行こう。

序盤から中盤にかけていつもの小津節に辟易しかけるのだが、そこは話術の巧みさで結局退屈もしないで最後まで見てしまう。パチンコ、競輪、プロ野球観戦、飛行機と当時流行り始めたものを敏感に取り入れた風物の扱いも面白い。

但し、終盤の夫婦仲直りの一幕は「淑女」に比べれば大分物足りない。ウルグアイに向かったはずの飛行機が不調でとんぼ返りするのだが、僅かに彼がいない間に味わった孤独で見直す、といった印象に留まってしまうのだ。上流階級出身で鼻持ちならない奥方が夫君の愛するお茶漬けを食する、というアイデア自体は良いだけに惜しい。しかし、何だかんだと言ってもうまいね。

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この記事へのコメント

FROST
2005年12月06日 15:36
どうもオカピーさん、こんにちは。この映画、遊びの要素が多くて妙に気に入りました。鶴田浩二はどこから任侠の世界に行ってしまったものでしょう(笑)”淑女は何を忘れたか”は小津自身の映画だったのですね。なおさら興味津々です。夫婦仲直りは台所の共同作業のシーンだけで妙に満足してしまいました^^
オカピー
2005年12月06日 17:49
FROSTさん、ようこそ。
「お茶漬の味」だけに味が良い映画でしたね。また寄らせて戴きます。
chibisaru
2006年05月07日 02:34
気の強い奥さんだっただけに、なんで外国行っちゃったのよ!なんて思いながらも、心の中ではこんなことなら神戸に行かなければよかった・・・とか思っていたんだろうなぁと微妙な心の変化がなんとなくですが、伝わってきて、旦那さんが帰ってきたときの表情で全て表せていたような気がしました。あんなに嫌がっていたお茶漬けをいそいそと準備して、二人で仲良く食べて・・・
安堵感というか、お茶漬けを食べた時に感じるような「あぁ、日本人でよかったなぁ。この映画見れて」って思えてしまいました。
オカピー
2006年05月07日 13:38
chibisaruさん、こんにちは。
唐突のように感じますが、あれが夫婦の機微なんだろうと思いますね。離れていく家族を描きながら、小津映画では夫婦の絆はいつも強い。
小津には<喜八もの>という作品が何本かありますが、どれも人情たっぷりでなのでご覧になられては如何でしょうか。

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