映画評「わが青春に悔なし」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1946年日本映画 監督・黒澤明
ネタバレあり

黒澤明の長編第5作で、戦後第1作。

農村出身で共産主義を信奉する京大学生・藤田進と恋に落ちた大学教授令嬢・原節子が父の反対を押し切って結婚、彼が獄中で死んだ後も彼の実家で百姓稼業に精を出し、戦後農村のリーダーとして迎えられる。

戦後流行ったイデオロギー映画に数えて良いのだろうが、人間の描写がしっかりしているし、黒澤明が恐らくヒューマニズムをまぶししたせいで、イデオロギーだけが必要以上に目立つ印象がない。独身時代はピアノを弾いた手に鍬を持つ、原節子の汚れ役という意味でも注目したいが、最初観た時ほど素直に受け止められない。僕が小賢しくなったのか。

82年5月のメモにはこんなことを書いている。参考までにどうぞ。当時の評価は☆☆☆☆★(9点)に相当します。

<幸江(原節子)のような女性は恐らく理想の上にしか存在し得ないのではないか? しかし、彼女が夫の言うように理想と信念を貫き野良仕事に明け暮れる気迫は理屈を超えた強烈なインパクトを与える。戦争終了の翌年製作だけに、彼女のように信念を貫き通せと、人々を励ますスタッフの意気込みが感じられ感銘させられたが、黒澤監督の演出では心理の流れや時間の経過を細かいカットで割りで表現しているのが珍しく、興味深い。>

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この記事へのコメント

ぶーすか
2006年08月09日 07:11
TB&コメント有難うございます。こちらにもTBさせて下さい。
<幸江(原節子)のような女性は恐らく理想の上にしか存在し得ないのではないか?
コメントを拝見して原節子が改めて、小津作品の女性と同じくこの作品でも「理想の女性像」を見事演じているなぁ…と思いました。そんな原節子が魅力的な作品だと思います。
オカピー
2006年08月10日 02:10
ぶーすかさん、こんばんは。
今回(と言っても2年前ですが)はどうも醒めていましたが、学生時代はひどく感銘しました。純情でしたなあ。
よく考えてみると原節子がそのイメージを確立したのは、これより後の「晩春」「麦秋」ですから、ここではまだ自由に扱える余地があったわけですね。この作品でも前半はお嬢様ですし。
トム(Tom5k)
2009年10月04日 13:43
オカピーさん、こんにちは。
こちらも観てしまいました。
>ヒッチコックにおけるグレース・ケリー、ジョン・フォードにおけるジョン・ウェイン、デュヴィヴィエにおけるジャン・ギャバン・・・
まったくです。でも、
クレマン、ヴィスコンティ、メルヴィル、ロージーなどにおけるアラン・ドロンもお忘れなく・・・(笑)。
>環境問題の提示で終わってしまう・・・山本薩夫作品で不満を・・・
オカピーさん凄いです!わたしもこれは本当にそう思ってしまいます。山本薩夫はあきらかに問題提示で終える監督ですよね。「白い巨塔」でも、そうだと思います。「太陽のない街」なんて、「なんじゃこの終わり方はっ!?」って感じでした。
>僕は余程悪運が重ならない限り道を誤らない自信・・・
わたしもそう思います(笑)。そこをわけるのは、おっしゃるように欲の大小なのかな?
>「酔いどれ天使」と「野良犬」にはデュヴィヴィエの香りが・・・
わたしは「蜘蛛巣城」「醜聞」「羅生門」・・・カラー時代の「影武者」「乱」「夢」・・
まだまだ多くの作品から感じるようになりました(オカピーさんの影響です(笑))し、映像のみならずテーマも似ているように思います。おふたりともヒューマニズムに徹していますし、「夢」のオムニバス形式なんて驚いてしまいますよ。
それから、オカピーさんの記事ですけれど、82年5月のメモにとっても説得力を感じます。9点でもいいんじゃなですか(笑)。
では、また。
オカピー
2009年10月04日 23:40
トムさん、こんばんは。

>山本薩夫監督
ダイナミックで良い作品を作りますが、大半の作品において人間が見えて来ないのが不満です。
「白い巨塔」にしても人間を徹底して追究してはいませんが、何となく人間が見える気がしませんか? 面白さ以外にその点でもこの作は評価できると思っています。問題提示で終わっても、不満を感じませんでしたよ。

>道を誤らない自信
自分自身の経験から、欲の大小は決定的に道を分けるように思いますね。
少なくとも誤った道に陥る確率が減るのは確かでしょう。

>デュヴィヴィエ
黒澤明の選ぶベスト100にルノワールがあって、デュヴィヴィエは入っていないようですが、彼が自分に似ているから避けた可能性もありますね。

>影響
あはは、困ったなあ。
「酔いどれ天使」がデュヴィヴィエの戦前作「モンパルナスの夜」に似たムードだなあと思ったのが始まりなんですが。

>82年5月のメモ
この時はもの凄く感激しました。
文章にもその辺りがよく反映されていて、それなりに書けていますかね。
最近はちょっとひねくれているから(笑)。

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