映画評「ロスト・イン・トランスレーション」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2003年アメリカ=日本映画 監督ソフィア・コッポラ
ネタバレあり

アカデミー脚本賞受賞作となったソフィア・コッポラ監督第2作だが、脚本賞にはもっとテクニカルな作品がふさわしいような気もする。

東京へCM撮影に来たハリウッドのかつての人気スター、ビル・マーリーは通訳を介してもコミュニケーションがうまく取れず、また、カルチャーの違いに苛立ちを覚える。他方、多忙を極めるカメラマンの夫についてきた若い妻スカーレット・ヨハンスンは同じホテルで時間を持て余している。
 この二人が知り合って同病相憐れむ状態になり、夜間ホテルを抜け出して彼女の日本人の友人たちとパーティーを過ごす。朝には二人の間に精神的に強い絆が築かれるが、やがて彼の帰国の日が訪れる。

日本に来たアメリカ人に限らず、異邦を訪れる人には多かれ少なかれこのような孤独感に苛まれることがあるだろう。カルチャー・ギャップをお笑いとして捉える作品は多いが、ギャップ以上に外国人の寂寥感を軸にした作品は実に珍しい。

スケッチ的でとりとめない印象もあるが、気に入ったのは、序盤は日本人との不十分なコミュニケーションに苛立ちを覚えた彼が、次第にそれに代えて故郷の夫人への苛立ちを強めていく、という展開である。
 夫人はインテリアに関して何度もファックスを送ったり、色サンプルを送ってきたりする一方で、彼の用件は一切聞かない。コミュニケーションの問題は必ずしも言葉だけの問題ではない、それどころかごく親しい人間の間にある距離感は何なのか、そうした疑問を作者は提示し、テーマを現代人の孤独に収斂させていったようである。

ビル・マーリーの当惑演技もうまいが、若いスカーレット・ヨハンスンが「真珠の首飾りの少女」に続いて抜群。

この記事へのコメント

カカト
2008年02月20日 14:17
この映画は音楽が素敵過ぎて、忘れられない映画になりました。
音楽を聴いて、映画のいろんな場面を思い出してしまいます。
そういう種類の映画は私にとっては珍しいので、貴重な作品です。
オカピー
2008年02月21日 01:22
カカトさん、こんばんは!

そうでしたか。
僕は、コミュニケーション不全という現代的なテーマをなかなか上手く消化しているなあ、とそちらばかり感心していたので、音楽はそれほどでもなかったですかねえ。^^;
家族がいるので、そう大きな音を立てられないというのも原因かもしれませんが。

本館でチェックしたら、TVコマーシャルでも盛んに使われたロキシー・ミュージック「夜に抱かれて(モア・ザン・ジス)」といった既成曲が使われていたようですね。
すっかり忘れちゃったなあ。^^;

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