映画評「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2003年フランス映画 監督フランソワ・デュペイロン
ネタバレあり

26年前パリに住むアラブ人少年とユダヤ人老婆の交流を描いた「これからの人生」という秀作を観たが、こちらはパリに住むユダヤ人少年とイスラム教徒の老人の交流を描いている。

1960年代初頭、父と二人でアパート暮らしする13歳の少年モモ(ピエール・ブーランジェ)が16歳と年齢を偽って街娼に筆卸しをして貰うのが第一章。パリの貧民街を描いてなかなかムード宜しく好調な出だしである。
 貧しく近くの食料品店で万引きもするが、アラブ人のようで実はイスラム教徒のトルコ人である老店主イブラヒム(オマー・シャリフ)は「ここ以外で万引きをするな」と言って生活の知恵を授けるうちに、二人は深い信頼で結ばれていく。
 やがてリストラされた父が自殺、母親が引き取りに現れるが他人のふりをして無視、老人の養子になる。“息子”を連れて故郷に戻る決心をした老人は免許を取って新車でいざ出発、スイス、アルバニア、ギリシャを経てトルコに到着した途端に事故を起こし死亡する。
その遺言に従いパリで彼の食料店を経営している現在のモモを映して映画は終わる。

ユダヤ人とアラブ人若しくはユダヤ教徒とイスラム教徒は水と油のイメージがあり、現に本作の中でユダヤ人少年やその父親もアラブ人を差別をしている。交流が深まるにつれてその差別意識が相手の人間的な魅力により消えていく、という辺りがこの作品の中で僕が惹かれる部分である。しかし、パリの描写では期待したほどムードが出てこず、比較しても仕方がないが「これからの人生」に程遠い。

スイス以降の紀行は面白い景色が続いて興趣を呼び、特にトルコに到着してからのアッバス・キアロスタミ風のロング・ショットは印象に残る。しかし、僕の感覚ではずっとパリに拘って話を続けてもらいたかったところではある。その方が現在のモモが登場する最終章の味が増したように思う。

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