映画評「おはん」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1984年日本映画 監督・市川崑
ネタバレあり

宇野千代の代表作たる同名小説を市川崑が映像化した秀作。再鑑賞作品。

はっきりした年代は分からないが恐らくは大正時代、関西地方のとある町で古道具屋を細々と営んでいる幸吉(石坂浩二)は芸者おかよ(大原麗子)と懇ろになった為何の落ち度もない妻おはん(吉永小百合)と別居する。
 七年後置屋の女将になったおかよに食べさせてもらっていた幸吉は、おはんが自分の子供を産んでいたことを知ったことから縁りを戻すが、密会の最中に息子が崖から墜落死するとおはんは故郷を旅立つ決意をする。

誉めたいことは色々あるが、まずは大正時代のムードの再現が素晴らしい。実際の大正時代を知らぬ者が何を言うかと怒られそうだが、映画は現実と寸分違わぬ必要はないのだから許されたし。

おはんと幸吉とおかよという三者三様の人物像が言動から鮮やかに構築され、それを演じた俳優の見事さ。特に、古い人情の世界に生きその時代の女性の儚さを表徴するおはんを演じた吉永小百合、甲斐性もなく意志の弱さで流されてしまう幸吉を演じた石坂浩二は大好演で、生涯の代表作と言って過言ではない。
 序盤おかよと幸吉が文楽を観る場面があるが、その文楽の人形を思わせる吉永小百合の透明な美しさは本当に夢のよう。特段のサユリストではないが、文字通り陶然とさせられたのでござった。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2008年03月20日 15:15
TB有難うございます。市川崑監督は、こういう文芸ものも上手いですねー。今度は「古都」がまたみたくなりました。
オカピー
2008年03月21日 01:32
ぶーすかさん、こんばんは!

>文芸ものも
何でも上手く処理する才人でしたが、70年代がミステリー中心の大衆よりと言えるとすれば、80年代は素晴らしい文芸映画を作りましたね。

>「古都」がまたみたくなりました
はいはい。^^
山口百恵の出演した作品の中では断然好きな作品です。
中村登監督、岩下志麻主演の63年版も秀作らしいですが、未見。これもぜひ観たいと思っております。

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