映画評「少年期」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1951年日本映画 監督・木下恵介
ネタバレあり

心理学者・波多野勤子と長男・一郎との往復書簡は戦後書物化されてベストセラーになり、直後に木下恵介により映画化された。脚色は田中澄江。

太平洋戦争末期、心理学者・波多野完治(笠智衆)と勤子(田村秋子)は勉学に励みたい長男・一郎(石浜朗)を東京の小石川に残し長野県の諏訪に疎開。数ヶ月一人で過ごす間も空襲警報がある度に疎開先に赴いていた少年も、恩師(三國連太郎)の戦死に衝撃を受け、遂に本格疎開をする。父親が自由主義である為同級生からのいじめを受けるのみならず、母ばかりに仕事をさせるので父親に反感を覚えるが、母親は「歴史がお父さんが正しいか証明するでしょう」と彼を諭すのである。

映画として名作であるか否かは些か疑問を残すところはあるが、思春期映画の形をした反戦映画として記憶に留めたい作品である。
 父親は疎開後本を読む以外は釣りをするなど当時の日本人の目には非国民的であり、それが即ちその血縁である少年の苦悩でもある。冷静に見れば少年は青臭いが、それを根底から許さないのが当時の空気であり(少年はいつの時代も概ね青臭いのだが)、この作品はその辺りを実に丁寧に描き出している。積極的に反戦活動などはしないが、当時のインテリ層の多くが「何が正しいのか」と苦悩していたらしいこともよく伺われる。

終戦後数年もしないうちに大半の日本人は軍国主義から民主主義へと素早く宗旨変えするが、終戦の翌8月16日父親は一郎をいじめた軍国少年に「生きることが一番大事なのだ」と訥々と語る。本来なら軍国主義を冷笑したいところだが、心優しき木下恵介は純粋に平和の訪れを喜ぶのである。

教練の授業で一郎が走らされている情景を背景に母親の手紙が語られる場面が映画的に素晴らしい。

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