映画評「五瓣の椿」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1964年日本映画 監督・野村芳太郎
ネタバレあり

3年前にもNHKでTVドラマ化された山本周五郎の同名小説を、野村芳太郎が映画化した時代劇大作。

天保5年の江戸、常磐津の三味線弾き(田村高広)と婦人科医(伊藤雄之助)が殺される。死体の傍に一瓣の椿が置かれ、二人とも直前に若い女性と会っていたという共通点があることから連続殺人事件として扱われるが、そこから映画は薬種問屋の娘・おしの(岩下志麻)の回想に入っていく。
 彼女は父(加藤嘉)の死を見取らず若い男と遊んでいた淫乱な母親・おその(左幸子)を恨み、家に火を放ち父の死体と共に焼殺して隠棲する。世間は三体の死体が発見されたことから娘も死んだことにされ、そこから彼女は復讐を始めていくのである。ここで休憩が入り第一部完了。殺人事件と物語の発端が逆転している上に与力・青木(加藤剛)がおしのに接近するので、犯人を知っている我々には倒叙ものの推理小説を読んでいるような楽しさがある。

第二部。
 母と関係した男一人と全て手引きしてきた佐吉(西村晃)を殺したあと、死の前の母の告白により判明した実の父親・源次郎(岡田英次)に接近するが、真相を告白することで実父に罪の意識を植え付けると、番所へ自首する。死体の掘り起こしなど与力の青木(加藤剛)が活躍するが、自首により探偵小説的な楽しみは終わる。その代わり、与力の青木が彼女に同情を示すように人情味が盛り上がって行くのが山本周五郎らしい。

ところが、彼女が澄んだ気持ちで死に向かい合っているところへ無関係の源次郎の妻の自殺を知って動揺、針仕事の為に特別に与えられていた鋏で手首を切って果ててしまう。
 天下の法律、当時の言葉で言えば御定法(ごじょうほう)で裁き切れない罪があると言っていたヒロインの大胆さと繊細さが複雑に絡み合い見ごたえのある幕切れであるが、本作の一番の収穫もその部分であろう。犯行前の清潔感溢れる商人の娘から男を誘い込んで殺害する妖艶な女性(にょしょう)への鮮やかな変身ぶりは、演ずる岩下志麻の熱演もあって実に手ごたえがある。疑問があるとしたら、【いつあのような手管を習ったか】ということだが、母親からの遺伝かもしれない。

物語全体は現代とオーヴァーラップさせる作り方で風刺性も持たせているので、松本清張の社会派推理小説のような印象がある。赤い空や俯瞰撮影などで工夫している部分はあるが、絵づらは(現在の感覚では)存外平凡。

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この記事へのコメント

r-bl管理人
2005年12月01日 20:12
突然のコメント失礼します。R-Blog 管理人です。

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