映画評「人間の壁」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1959年日本映画 監督・山本薩夫
ネタバレあり

石川達三の同名小説の映画化だが、現在ならここまで具体的な(実名で語られる)プロパガンダ映画は作れないと思う。

寂びれ始めた炭鉱と浜辺の間に町並みがあり、山麓に小学校がある。その学校に勤める女教師・香川京子が、県の財政緊縮の折り、共働きを理由に退職を勧告される。県教組の執行委員である夫は出生主義で家庭を顧みずやがて離婚、自らの退職を拒んだ彼女は徐々に日教組の活動に目覚めていく。一方で彼女の同僚でやめめになったばかりの宇野重吉が、足の不自由な生徒をからかった同級生を突き飛ばす。実際には怪我などなかったが、一家は町の実力者やPTAを巻き込んで先生を首にするよう学校に働きかけ、宇野はある信念を秘めながらも静かに学校を去っていく。

昭和30年に合体して勢いに乗る自民党が日教組に圧力を掛けている事実を露骨に訴えているもので、余りにも生々しくて好きになれないが、現在の教育現場が荒む原因がこの辺りから形成され始めたことが解り、とても無視することもできない。

以下、映画の出来栄えに関係ないが、一言。
 映画の中で自民党議員が「日教組は民主主義の曲解により生まれ、その存在が教育を歪め子供に悪い影響を与える」と言っているが、実際には逆ではないか。日教組の功罪について正確にはわからないが、教育を歪めた主たるも要因は間違った民主主義から生まれた日本流PTAの存在であり、大局的な視野に欠ける愚かな政治家と役人が考え出したその場凌ぎの教育方針であろう。おかげで生徒は勿論教師のレベルまで下がり、治安は悪くなるばかり。宇野重吉は父兄に「赤じゃないか」と揶揄され、最後には「軍隊式教育の名残り」と全く正反対のことを言われる。こんな父兄も正犯である。

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