映画評「エル・シド」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1961年アメリカ映画 監督アンソニー・マン
ネタバレあり
11世紀のスペインの英雄エル・シドの伝説的活躍を描いた歴史大作だが、今回のハイビジョン放映版の映像の質に驚く。昨年作られた新作と言っても良いほどの色彩なのである。アンソニー・マンの演出とチャールトン・ヘストンらの演技も古くない。再鑑賞作品。
当時のスペインは事実上都市国家の集まりで、スペイン(イスパニア)という国名はまだなく、カスティーリャなどの都市が一人の国王により支配されていたのだが、その中で突然現れたのがエル・シドである。これは救ったムーア人の王(の一人)に名付けられた最高級の尊称であり、本名はドン・ロドリグ。二人の友情が後にエル・シドに有利に働くのだが、妻子を軟禁する王に対しても無条件で働く彼の雄姿。息絶えてもなお遺志に則り馬に乗って出陣、ムーア人は驚いて敗走してしまうのである。
この辺りは伝説で、実際のエル・シドはその後も生き延びて事実上の君主であったようだが、それはともかくヘストンの魅力に見ほれずにいられない。全米猟銃協会の会長などを務めて最近の印象は良くないのだが、映画の中の彼は魅力的である。
エル・シドの妻シメーヌは彼が殺した貴族の娘であるが、その辺りの二人の葛藤は前半でたっぷり描かれ、後半にも負けず劣らず見ごたえがある。この前半は、フランスの劇作家コルネイユの名作「ル・シッド」を相当に参考にしていると思われる。
1961年アメリカ映画 監督アンソニー・マン
ネタバレあり
11世紀のスペインの英雄エル・シドの伝説的活躍を描いた歴史大作だが、今回のハイビジョン放映版の映像の質に驚く。昨年作られた新作と言っても良いほどの色彩なのである。アンソニー・マンの演出とチャールトン・ヘストンらの演技も古くない。再鑑賞作品。
当時のスペインは事実上都市国家の集まりで、スペイン(イスパニア)という国名はまだなく、カスティーリャなどの都市が一人の国王により支配されていたのだが、その中で突然現れたのがエル・シドである。これは救ったムーア人の王(の一人)に名付けられた最高級の尊称であり、本名はドン・ロドリグ。二人の友情が後にエル・シドに有利に働くのだが、妻子を軟禁する王に対しても無条件で働く彼の雄姿。息絶えてもなお遺志に則り馬に乗って出陣、ムーア人は驚いて敗走してしまうのである。
この辺りは伝説で、実際のエル・シドはその後も生き延びて事実上の君主であったようだが、それはともかくヘストンの魅力に見ほれずにいられない。全米猟銃協会の会長などを務めて最近の印象は良くないのだが、映画の中の彼は魅力的である。
エル・シドの妻シメーヌは彼が殺した貴族の娘であるが、その辺りの二人の葛藤は前半でたっぷり描かれ、後半にも負けず劣らず見ごたえがある。この前半は、フランスの劇作家コルネイユの名作「ル・シッド」を相当に参考にしていると思われる。
この記事へのコメント
感想は人それぞれ。大事なことは映画の狙いを外してコメントしないことですね。
「トロイ」「アレキサンダー」「キング・アーサー」と立て続けに歴史劇が公開されましたが、いずれもリアリズムに拘りすぎて、絵としての美しさがありません。その点この作品は映像の構図が魅力満点です。
また、ぶーすかさんが駄目だったというヘストンはスケールが大きく、舞台的な大きな演技で時代劇にはうってつけ。現代劇ではその良さが出ないと思います。
確かにその舞台となる言語で演じられるのが一番ですね。私はロシア語を勉強した人間なので、ロシアを舞台にしたものは特に感じます。
先般スペイン映画「靴に恋して」を観て感じたのですが、田中真紀子氏の喋り方・声質はまるでスペイン女性の話を聞いているようです。
>以前高校のメーリングリストに載せていた頃、思わず訃報が伝わって来たこともあります。
悲しいですね・・・。
>「十戒」
ブログを始めてから15年になろうとしていますが、まだ取り上げていませんね。いつでも見られる状態ですが、時間の余裕がない中ちと長いデス。
>訃報
そうならないように気を付けましょう。
必要以上に長生きしようとは思いませんが、少なくともリストに上げた本を読み終えないうちは死ねない。まだ十年分くらいはあるでしょう。
この映画は有名なミスがあります。でも、それが却って愛着を感じます(笑)。
>息絶えてもなお遺志に則り馬に乗って出陣
「三国志」の諸葛孔明にもこんな場面があった記憶があります。
>まだ十年分くらいはあるでしょう。
まさに「時は金なり」です。
>この映画は有名なミスがあります。
知っていたようなきがするけど、忘れましたなあ(笑)
>「三国志」の諸葛孔明にもこんな場面があった記憶があります。
「三国志演義」は読んだけど、忘れてしまったのか、これにはなかったのかなあ(笑)
>まさに「時は金なり」です。
来年はオリンピックもあり、コミュニティーでは班長ではあるし、色々忙しそうで、思ったようには読めないかもしれません。
最近のだらしない映画を観るより、読書に傾注した方が良い気がしますよ。
>知っていたようなきがするけど、忘れましたなあ(笑)
飢える人々に兵士達がパンを投げる。争って取る人々。そのうち一人の腕に腕時計が・・・(苦笑)。
>「三国志演義」は読んだけど、忘れてしまったのか、これにはなかったのかなあ(笑)
横山光輝先生のマンガで見ました。
>コミュニティーでは班長ではあるし
オカピー教授は、やっぱり頼りにされる人です!(異議なし!)
>一人の腕に腕時計が・・・(苦笑)
思い出しました。「スクリーン」で読んだことがあります。
「ローマの休日」では後の場面のほうが時計が早いというのもありました。こういうのは一般的にスクリプターのミスとされるようですが。
>横山光輝先生のマンガ
なるほど。
それなら「三国志演義」でもあったのでしょうなあ。
情ないが、年には勝てません(笑)。
でも憎めないミスでもあります(笑)。
007映画でも結構ミスがあるそうです。
>情ないが、年には勝てません(笑)。
とんでもございません。僕なんぞは「三国志」を読んだ事がありません。
>でも憎めないミスでもあります(笑)。
逆にそんなところに気付く方がどうかしている!
よほど好きで繰り返し観ているのでしょう^^
>007映画でも結構ミスがあるそうです。
多分、海から上がった俳優の髪の毛が乾いているとか、その類がありそうですね。
西部劇では、左利きだったガンマンが別の場面では右で撃っていたりする映画もあるようです。
こういうのはスクリプト・ガール(最近は男性もいるのでスクリプターと言います)のミスで発生します。後で監督からひどく怒られるでしょうね^^;
>三国志
中国の歴史書などなかなか読み終えられませんよ。
僕は読み始めたら、どんなにつまらなくても最後まで読むのがモットーですから、読みますが。
勿論映画についても同じ。
「007は殺しの番号」でのウルスラ・アンドレスのシャツ。
>左利きだったガンマンが別の場面では右で撃っていたりする
「ワイルドバンチ」。右の腿を撃たれたお爺さん。包帯を巻く。それがいつの間にか左の腿。いいんじゃないですか(笑)。
>どんなにつまらなくても最後まで読むのがモットーですから、読みますが。
片道1時間の通勤時代が懐かしいです。
>「007は殺しの番号」
>「ワイルドバンチ」
有名作にも色々とあるという例。人間的で良いですよね、
僕の文章も、途中で手直しをして、結果的に“てにをは”がおかしくなるなど年中行事です。
>片道1時間の通勤時代が懐かしいです。
読書で時間をつぶして(言葉が悪いかな?)いたんですね。
悪くないですよ。時間つぶしをしたい時こそ、集中して読書が出来ます!
松本清張、司馬遼太郎・・・etc.いろいろ読みました。
>有名作にも色々とあるという例。人間的で良いですよね
その通りです!
「シェーン」に映ってるバスとか・・・(笑)。
>松本清張、司馬遼太郎・・・etc.いろいろ読みました。
両者とも、娯楽性が高く、かつ、軽くない。
良いですね。
僕が読むのは、電車では少々きついものが多い?
>「シェーン」に映ってるバスとか・・・(笑)。
聞いたことがあるなあ^^
近年はデジタル撮影ですから、多分、この手のミスはあっても消されてしまうので、全くつまらんですね^^
と言いますか、時代劇や西部劇のロケに現代的なものがあっても平気で撮るでしょう。後ですいすいと消せますから。
やはり売れるだけの理由があります。
松本清張&司馬遼太郎。
オカピー教授が好きな作品は何でしょうか?
>この手のミスはあっても消されてしまうので、全くつまらんですね^^
つまらないです。
大河ドラマ「草燃える」のOPで鉄塔が映ってニヤリとした思い出(笑)。
>オカピー教授が好きな作品は何でしょうか?
松本清張では、「点と線」。短くて切れが良いですね。
「砂の器」はミステリー的に難あるも読み応え抜群。
短編集「影の車」。映画にもなって「潜在風景」が特に良い。
司馬遼太郎はさほど読んでいず、とりあえず「竜馬がゆく」を上げておきましょう。
「坂の上の雲」も未読。子供時代に作り上げた読書リストがやっと終わりに近づいたので、ぼちぼちこの辺りを読んでいける態勢になりました。長いことかかりましたなあ。
>大河ドラマ「草燃える」のOPで鉄塔が映ってニヤリとした思い出(笑)。
調べてみたら1979年の放映ですね。
こういうミスは楽しいものです。
明日は終戦(敗戦)記念日。でも当時よりも平和な現在で自殺者や高齢引きこもりが多いのはなぜか!?またいろいろ教えて下さい!
>松本清張では、「点と線」。短くて切れが良いですね。
まさに最高傑作!
>「砂の器」はミステリー的に難あるも読み応え抜群。
「人間の証明」にも影響を与えたそうです。
>「竜馬がゆく」
桂小五郎と剣道で三本勝負!まあ、いいんですけど・・・。
>明日は終戦(敗戦)記念日。でも当時よりも平和な現在で
>自殺者や高齢引きこもりが多いのはなぜか!?
これは複雑ですから一言では言えませんが、戦時中は文字通り生きること自体に精一杯ですから、逆に自分から死に向うなんてことはなかなか考えられなかったのではないでしょうか。村社会でしたから引きこもりはしたくてもできなかったですね。
翻って、現在は、行動の自由度が大きくなっていると同時に他と違うことを嫌うムードが一部にある。日本人は協調を重んじ、全体主義に流れやすいですから、疎外感も生まれやすい土壌でありましょうか。
また、物質的に豊かになっていますから、経済的に悲観する人も多いのでしょうね。僕の一家は食べるだけの金があれば良いかくらいに思っていますから実に気楽です。金に縛られた人は実に不幸です。
日本人は考えすぎる傾向があります。例えば、親切にしたいのはやまやまだけれども、その相手がどう思うかまで気にして、結果的に何もできないということがままあります。新聞等で「日本人は親切と聞いたのに?」という外国人(特にアジア系)のコメントを読むと、不親切だからやらないわけでないのだ・・・と日本人独自の感覚を教えてあげたくなりますね。でも、欧米人のように素直にふるまったほうが良いことが多いのではないかとは思います。
>>「砂の器」はミステリー的に難あるも読み応え抜群。
>人間の証明」にも影響を与えたそうです。
特に、人間の黒い歴史を焙り出さざるを得なくなる展開に、共通性がありますね。
>>「竜馬がゆく」
>桂小五郎と剣道で三本勝負!まあ、いいんですけど・・・。
ははは^^
蟷螂の斧さんお薦めの司馬小説は何でしょうか。既にスケジュールいっぱいの今年は無理かも知れませんが、来年にでも読んでみます。
>蟷螂の斧さんお薦めの司馬小説は何でしょうか。
「大村先生、今日は暑いですねえ。」「(怖い顔で)夏は暑いのが当たり前です!」
「花神」が一番好きです。
「国盗り物語」は斎藤道三編が好きです。
>人間の黒い歴史を焙り出さざるを得なくなる展開
それで潰される人は結構います。
>戦時中は文字通り生きること自体に精一杯ですから
そこなんですよね!
>僕の一家は食べるだけの金があれば良いかくらいに思っていますから
それが大事です!
休日に関しても同じ。子供の頃、週休1日が当たり前。それが今は週休2日どころか、祝日を月曜日にもって行って3連休にする。それで良いのでしょうか?
>親切にしたいのはやまやまだけれども、その相手がどう思うかまで気にして
日本人特有の「ありがた迷惑」とまで思ってしまう。気にし過ぎなのでしょう。
>「花神」が一番好きです。
>「国盗り物語」は斎藤道三編が好きです。
渋めです^^v
鎌倉時代が好きな僕ですから、戦国ものや幕末ものは、これからの宿題です。鎌倉時代と違って、無数にある中から選ぶのも大変ですよ(笑)
>子供の頃、週休1日が当たり前。それが今は週休2日どころか、
>祝日を月曜日にもって行って3連休にする。それで良いのでしょうか?
休みが増えた結果、富裕層の子供は塾などに行って、それが格差社会に繋がる一要因とも言われていますね。
学校の先生は休みが減っていると、今日の「チコちゃん」でやっていました。小学校でもまがりなりに英語を習うようになり、英語が出来ないから小学生の先生になったのに、誠に気の毒です(笑)。