映画評「風立ちぬ」

☆☆(4点/10点満点中)
1976年日本映画 監督・若杉光夫
ネタバレあり

堀辰雄の「風立ちぬ」は好きな小説で、アイドル主演でどのような映画化ぶりを見せるか怖いもの見たさで観たが、出来栄えは星の示す通り。

1942年、軽井沢の別荘で病気療養中の少女・水沢節子(山口百恵)が、近所の学生・結城達郎(三浦友和)と知り合い恋に落ちて将来を誓い合う仲になるが、病魔は彼女の身を蝕み、青年は戦地へと向かう。

原作の存在する映画に対して批評を行う時、映画を原作と比較することは勿論許されるが、【原作と違うから、若しくは原作よりつまらないから駄目な映画である】という立場を取ってはいけない。そうした評価は原作よりつまらないというだけの極めて相対的な理由に過ぎず、純然たる映画に関する評価ではないからである。

さて、この映画で原作と同じなのは節子と達郎が軽井沢のサナトリウムで暫く一緒に過ごすということぐらいなもの。原作は戦前の話でほぼサナトリウムでの描写が全編を覆っていて一般的な意味でドラマチックな要素は殆どなく、観察的な描写が読む者の心を打つのが持ち味だった。節子は十代の少女ではなく、達郎が戦争へ行くこともない。

脚本の宮内婦貴子が戦中に背景を変えた理由は定かではないが、劇的な要素を加えたかったということであろう。
 彼が出征して帰らないかもしれないという設定は観る人によっては劇的なのだろうが、ひねた大人には実にあざといだけである。結果的に、出征した人間が無事に帰国したら恋人が死んでいたという、戦争悲劇とは逆の立場で終了するのが皮肉な面白さとなったと言えないこともないのだが、観客は事前に彼女が死んでいるのを知っているのだから劇的な効果とはなるべくもない。

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