映画評「女の中にいる他人」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1966年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

成瀬巳喜男としては珍しい心理サスペンス。原作はエドワード・エタイアの「細い線」である。

三橋達也の妻・若林映子が殺される。三橋の友人・小林桂樹は何気ない顔をして葬式に参列するが、心の中で葛藤を続けていた。実は彼が加害者で情事の悪ふざけの結果による過失致死だったのだが、良心の呵責に耐えかね、まず妻・新珠三千代に自白する。それでも心は休まらず自首を実行しようとする彼に対し妻は意外な行動を取るのである。

意外とは言っても妻の行動は【推して知るべし】であるが、忍耐と諦観を抱えて生きるいつもの成瀬スタイルとは違う終わり方である。よって「女の中にいる他人」なのである。ここの【女】は「つま」と読んだほうがふさわしく、終幕部分で女性映画的になるのが成瀬の作品らしい。
 しかし、心理サスペンスということで撮影スタイルはいつもと大分違う。コントラストを強め、クローズアップを多用、犯行場面でポラライゼーションを使用し、十分な効果を上げている。

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この記事へのコメント

かよちーの
2006年01月24日 01:13
おぉ!最近わたしがハマっている成瀬巳喜男だ~と思ったら、オカピーさんとダブっていませんね、偶然に。
これはサスペンス映画ですか~、好きなので優先順位高いです。
次回借りるリストに入れておきます。
かよちーの
2006年07月14日 23:52
トラックバックがないないと思ったら、直接ありましたね~。
慣れって怖いと久々に思いました・笑。
実は「私の中のもうひとりの私」と思いっきり勘違いして借りました。
(ぽすれんのお気に入りで選ぶとこういう勘違いありです)
オカピー
2006年07月15日 21:52
かよちーのさん、こんばんは。
今日は雷雨の為暫くパソコンを休ませていました。
トラックバックの表示は変わったばかり。私も焦りました。
「私の中の・・・」はウッディー・アレンでしょうが(笑)。しかし、そういう勘違いも楽しいものですね。
トム(Tom5k)
2012年06月02日 01:34
オカピーさん。こんばんは。
凄い作品ですよね。
若林英子の演じた被害者の側への表現はいささか類型的ではありましたが、主人公の奥さんの気持ちを、あの映像表現と新珠三千代の演技及び演技指導で表現した成瀬監督に脱帽します。
現代では、誰しもが多かれ少なかれ、公に出来ない闇の部分を持っているものだとも思います。法令に照らさない中では、それをどのように昇華すべきかの選択もいくつかは用意されているようにも思います。
良い悪いの二者択一の選択のみでは、誰も救うことなどできないような気がしますよ。複雑な現代社会であることを学習しない怠慢が、今の日本の不幸の原因のようにも思いました。映画では、主人公のいわゆる「良心」が、皮肉にも妻と親友の二人を最大の不幸に陥れているわけです。
良妻賢母でイノセントな封建的な奥さんが、最後の最後に選んだ選択肢を誰が責めることができるでしょうか?
わたしは、封建から現代への脱皮には、必ず闇に隠された暗部があることを象徴した作品だと解釈しています。
またまた、ロッコ・パロンディとトム・リプリーを同時期に演じることができたアラン・ドロンを想像してしまいましたよ。
では、また。
オカピー
2012年06月02日 21:20
トムさん、こんばんは。

戦前から小津に似ていると言われ、戦後も小津を意識した作品をわざと作ってきた成瀬監督ですから、この作品は異色でしたねえ。小津より演出に柔軟性のある成瀬監督だから出来た芸当なんでしょう。
仮に小津がこれを作ったら腰を抜かしたでしょうけどねえ(笑)。

善悪の二元論で全てを処してきたのが宗教で、その宗教に則り道徳観を培ってきた我々は科学の発達とともに人間・世界がそんな単純なものではないと気付き、徐々に道徳観を変え宗教を変えてきました。これが近世から現代に至る人類の歴史でありましょう。
これがなかなかできないのがイスラム教で、未だに彼らはその枠の中で苦闘していますよね。

>ロッコ・パロンディとトム・リプリー
そこまで考えるのがトムさんなんですよねえ^^
当方、少なくとも本作を観た7年前は全く思い至りませんでした。最近はトムさんの影響を受けておりますから、もしかしたら感じたかもしれませんけど^^
トム(Tom5k)
2012年06月03日 20:02
オカピーさん、こんばんは。
>小津がこれを作ったら腰を抜かした・・・
山田洋二なら、創れるかもしれません。
そういえば、「東京物語」・・・山田洋二でリメイクだそうですね。
リメイクに期待することは、最近ほとんどないんですが、これは期待しちゃうなあ。
>そこまで考えるのが・・・
いえいえ、それしか考えないのが、わたしでございまして。
周りをそこに付き合わせて、いつも申し訳なくも思っています。
では、また。

PS
シュエットさん、ブログ休まれるそうですね。淋しいですよ。早く復帰してくれることを願ってしまいます。
オカピー
2012年06月04日 15:32
トムさん、こんにちは。

>山田洋次
彼はどちらかと言うと、ご本人が仰るようにアンチ小津の立場でスタートしていますし、初期には「霧の旗」を作り、「砂の器」を共同で脚色しているように、喜劇作家でもホームドラマの作家でもなく、喜劇第一作の「運が良けりゃ」で失敗していたら本作のような作品を発表する作家になっていたかも知れませんね。
僕は昔から正確な映画文法を駆使して作品を作る山田監督はサスペンス向きと思っているんですよ。人生が二度あれば、彼にはサスペンスを作る監督になって貰いたかったですね。

>「東京物語」
しっかりした映画になることは間違いないでしょう。恐らく舞台は現代ですから、脚色せねばならないところが多いでしょうが。

トムさんのようなブログは実に興味深いわけですが、残念なのはネタが限られている為(笑)更新が減っていることでしょうか。
しかし、徹底したものと、感心するばかりです。<(_ _)>

>シュエットさん
諸般の事情があるようですが、昨年も地震の影響でかなり長く休まれましたし、きっとそれほど遠くない将来戻ってきますよ。
自身のブログを休まれてもコメントを残してくれると有難いのですが、彼女の場合は自分のブログと他の方のブログへのコメントも精神的にかなりリンクしているところがあるので・・・リスタートするまで多分来ないでしょうTT

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  • 女の中にいる他人

    Excerpt: 女の中にいる他人 ++story++ 田代(小林桂樹)の親友の杉本(三橋達也)の妻さゆりが何者かに殺される。 ++++++ 成瀬巳喜男監督作品です。 2時間サスペンスドラマ好きと.. Weblog: cino racked: 2006-07-14 23:42
  • 女の中にいる他人

    Excerpt: &#39;&#39;&#39;『女の中にいる他人』&#39;&#39;&#39;(成瀬巳喜夫監督 1966 日本) &#39;&#39;&#39;圧倒。&#39;&#39;&#39; .. Weblog: とんねるず主義 racked: 2007-02-20 22:39