映画評「エロスは甘き香り」

☆☆★(5点/10点満点中)
1972年日本映画 監督・藤田敏八
ネタバレあり

にっかつ時代の桃井かおりと伊佐山ひろ子が見られる、今となっては貴重な作品。監督は一般映画も少なからず撮った藤田敏八だが、これは堂々たるロマン・ポルノである。

米軍基地に近いらしい郊外のボロ・アパートに写真家志望の若者・高橋長英が以前知り合ったという女性・桃井かおりを訪ねる。留守の家に入り込み、夜帰ってきた彼女と再会の挨拶。一度は叩き出されるが、再び帰ってきてそのまま同棲生活を始める。
 暫くすると彼女の知り合いらしいカップルが勝手に上がり込んで、四人の共同生活が始まる。男はエロ漫画家らしいが、女・伊佐山ひろ子の商売はよく分らない。口ぶりから水商売らしい。
 男たちは昼間からトランプ賭博に明け暮れる。賭博といっても金がないので「ごっこ」である。男たちの人生はどんどん閉塞し、目的も失い、最後には自らや知人を被写体としたポルノ写真を売り付ける仕事を始める。

学生運動で成果を得られなかった70年代初めの若者のけだるい生活を描き出しているのだろう。安っぽく四畳半的な画面からは社会の閉塞感に苦悩しながらも現状に甘んじるしかない若者たちのジレンマがひしひしと感じられるが、舌足らずな部分が目立つ。
 マネキンにタバコを加えたアラン・ドロンの写真がかかげてあったり、70年代初めの空気が懐かしい。

この記事へのコメント

映画のせかいマスター
2007年05月18日 16:10
これ!見ました見ました。
なーんだか懐かしくて良かったですけど、最近の人が見ても「何じゃこれ」で終わっちゃいそうな気もしました。この映画の記事があるとは流石ですねえ。同じ監督の「八月はエロスの匂い」を見ようかどうか迷ってます。
オカピー
2007年05月19日 03:33
映画のせかいマスターさん

藤田敏八の作品は悪い言い方をすれば貧乏臭いのですが、我々の世代としますと、それが郷愁を誘うのですな。
「八月の濡れた砂」は本編そのものより、石川セリの主題歌に胸が締め付けられた人間です。

>「八月はエロスの匂い」
記憶にないなあ(笑)。すみません^^;

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