映画評「乱れ雲」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1967年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

成瀬巳喜男の遺作となったラブ・ロマンス。

エリート官僚の夫を交通事故で失った司葉子は加害者の立場となった貿易会社社員・加山雄三を激しく憎む。
 彼は裁判で無罪になるが慰謝料を払い続け、青森に転勤になると旅館を経営する青森の実家に戻っていた彼女を訪問する。やがて誠実な彼に彼女もよろめくが、被害者と加害者の立場は二人を結びつけることを許さない。

50年代は林芙美子の映画化を軸に皮肉な視点で男女の愛を見つめることが多かった成瀬は、「乱れる」で純粋な愛情というものに目を向け始めたらしい。「乱れる」は義理の姉と弟という関係のせいで純然たるロマンスにはできなかったが、こちらは王道的な物語になっている。また「乱れる」ではタッチが前半と後半とで首尾一貫しない印象があったのに対し、こちらは開巻早々に夫が死ぬという設定にしたことで序盤から焦点が合い、気持ちよく見続けることができた。野球で言えば、直球一本という感じである。

司も加山も美男美女で、のびのびとした自然な演技を披露している。適材適所の好演と言うべし。
 また、これだけの作品をものしながら間もなく63歳で成瀬は亡くなった。惜しい哉。

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この記事へのコメント

2005年10月27日 01:10
トラックバックをありがとうございます。
成瀬生誕100年ということで東京あたりの
映画館では特集が組まれておりますが、地方では
そういうものはなく、ちと寂しく残念です。
オカピー
2005年10月28日 02:11
そうですね。私も山奥の住人で、悔しい思いもしばしば。NHK-BSである程度カバーできますが。
その昔、京橋のフィルムセンターに数百回通った映画マニアです。
iyahaya98
2006年10月06日 23:22
TBたくさんしていただき、ありがとうございます。
>こちらは王道的な物語になっている
とにかく本当の意味で集大成の作品になっているようです。
うまいな~うまいな~と思いながら終わってしまいました。
ちょっとしたところでも、ずるいぐらい巧いのです。

オカピー
2006年10月07日 01:08
iyahaya98さん、迷惑ではなかったですか。
日本の恋愛映画、しかもメロドラマでこんなに上手く作られた映画は他にないのではないですか。「浮雲」は絶品ですが、あれはメロドラマではなく、扱いは純文学ですから。
時間があったら、また観ようっと。
かよちーの
2007年12月12日 18:42
司葉子が素敵だと思いました。
というか、そういえば森光子が出ていましたね!
オカピー
2007年12月13日 00:31
かよちーのさん

自分で要求しておいて何ですが、コメントは無理しないで結構ですからねえ。^^;
森光子は司葉子の義理の姉さん役でしたね。
かよちーの
2007年12月13日 10:00
いえいえ、お気になさらずに。
たまたま森光子を思い出したんです・笑。
オカピー
2007年12月14日 01:31
かよちーのさん、こんばんは。

お父様が確か加山雄三と同じ年齢だとか。
森光子は、僕の母の姉と同じかな。それにしても若い!

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