映画評「夫婦」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1953年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

上原謙と原節子が夫婦役で共演して好評だった「めし」の姉妹編として企画された成瀬巳喜男監督作。夫婦役を同じコンビで作ろうとしたが、原節子が病気だった為妻役には「青い山脈」で知られる杉葉子が起用されている。

結婚6年目で倦怠期に入った夫婦が東京に転勤、妻を失ったばかりの同僚・三国連太郎の家に下宿することになるが、夫は妻が彼に甲斐甲斐しく尽くすのが面白くない。三国が彼女に懸想するようになり、夫は妻を疑ってまっすぐに家に帰らぬ日が続き、妻は妻で夫の行動が気にかかる。破綻しかけた夫婦の仲は妻の忍耐により元に戻る、という結末になっているが、非常に深い印象を残した二箇所の省略をまず述べたいと思う。
一番目。三国が妻に迫ったところで溶暗。次の場面では自棄酒で酔った夫と口論する妻の前に同じく酔った三国が現れる。これにより妻は三国を拒否したことが判るわけである。
もう一つ。夫の態度に耐えかねた妻が遠くない実家に逃げ帰ってしまう。彼女は家の者に愚痴を言う。両親が冗談を言う。次のカットでは妻が下宿先に帰るところで、彼女の心境の変化は省略されている。しかし、省略されたことにより却って彼女の達観とも言うべき諦観を見事に感じさせる。こうした細かな技術の積み重ねが夫婦の機微を鮮やかに描き出すのである。
その割に星は少なめだが、それは次のような事情がある。この夫婦が新婚の兄夫婦に向って結婚哲学を披露した後、堕胎を巡る騒動をもって幕を閉じたのがどうにも気に入らない。どう割り引いて考えても蛇足であり、流れも損なっている。結婚哲学を疲労して終ってくれたほうが余程快い余韻を残したであろう。

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