映画評「三十三間堂通し矢物語」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1945年日本映画 監督・成瀬巳喜男
ネタバレあり

女性映画を得意とした成瀬巳喜男には珍しい時代劇。それも1945年の春に作られた貴重品で、時代劇を選んだのは戦意高揚に荷担したくないという気持ちからのだったかもしれない。
通し矢というのは一定時間(通常は日中)の間に何本の矢を的に当てるかを競う、マラソン的な過酷さを要求される試合のことで、TVの「水戸黄門」でも扱われたこともある。

京都の三十三間堂での通し矢奉納試合に敗れて自決した武士の息子・市川扇升が新記録を達成すべく鍛錬を重ねるが、その時の勝者である長谷川一夫が正体を隠して指導する。というお話なのだが、指導と言っても精神的なものが中心であり、これは武士道、即ち、儒教における【仁】という考え方に結び付くものであろう。まして正体を暴かれ袂を別った後に競技中に誤解を招くのも恐れずに声を掛ける場面など正に仁なりや。
この内容なら戦意高揚ではなくても当局はご機嫌であったはずだ。それはともかく、成瀬が得意とした細かな心理描写は生かしきれていないが、きちんとした演出力を持っている人は何を撮らせてもうまいものである。初めての時代劇にも違和感は感じられず、(時代劇を滅多に作らない東宝ということを考慮せずとも)殺陣がしっかりしている。

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この記事へのコメント

iyahaya98
2005年11月14日 21:53
初めてコメントさせていただきます。
ご訪問・TBありがとうございます。
この頃成瀬作品を少しずつ見ている者です。
大変詳しく記事を書いてらっしゃるので
よくわかり楽しく拝見いたしました。
成瀬監督は丁寧な作風で
見終わって満足感を満喫できる監督のひとりです。
他の記事も興味深く拝見させていただきました!
2005年11月15日 03:01
iyahaya98さん、こんにちは。
何しろ鑑賞本数が多く、ざっと映画評とやらを書き上げなければならないので、大したものが書けないのですが、ポイントを絞って書いているつもりです。またお越しください。

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