映画評「大阪物語」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1957年日本映画 監督・吉村公三郎
ネタバレあり

「日本永大蔵」など井原西鶴の作品を溝口健二が映画用に作り変えた原案を依田義賢が脚色、それを逝去した溝口に代わって吉村公三郎が映像化した大映作品。

借金に追われて農村を夜逃げした仁兵衛(中村雁治郎)が妻(浪速千栄子)と二人の子供と大阪へ到着するものの、当てにした商人も町民も冷たい。が、子供たちがこぼれた米を発見、これを拾い集めて転売することを思いつき、10年の間に財を築き、大店を営むまでに出世するが、薬代を惜しんで重病の妻を死に追いやり、金の無心のなさそうな商人のどら息子に娘(香川京子)を嫁がせようとする始末。
 結局、息子は家を出て、娘は手代と駆け落ち、かき集めた金を継がせることも出来なくなった仁兵衛は発狂してしまう。

「クリスマス・キャロル」のスクルージは改心するが、仁兵衛はそれもできずに終わる。見どころは、常識を遥かに超えた仁兵衛のどけちぶりで、履いている草履も減らないようにするなど、見ていて哀れになってくる。
 彼が娘を嫁がせようとした相手の家では息子が掠めた金を使って花魁を受け出し、駆け落ちする。その親も仁兵衛に引けを取らない吝嗇家なのだが、結局意味を成さないのである。

嫌いなタイプの話ではないが、吝嗇家ぶりをこれでもかとばかりに描いた中盤に比べ、終盤の破滅への階段が呆気なさすぎ、バランスが取れていない印象がある。
 憎まれ役が得意な中村雁治郎がここでも好演。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2006年09月05日 17:50
TB&コメント有難うございます。そのまま喜劇でいけば良かったのですが、ラストは雰囲気が一転して悲劇的な感じになりましたね。中村鴈治郎と三益愛子のドケチ合戦には爆笑しました^^)。
オカピー
2006年09月06日 02:50
ぶーすかさん、こんばんは。
悲劇的な始まりだったので、私はこれを喜劇とは見ていないんです。中盤の吝嗇争いは確かに可笑しいですが、人間が一生懸命に生きる様を客観的に描いているのを、我々が嘲笑的に理解して笑いとなっているように思います。ですから、最後の発狂もトーンが変わったとは考えていないのですが、それまで積んだ場面の重さを考えると崩す場面が余りに呆気ない気がするんですね。
それから、監督の吉村公三郎は「安城家の舞踏会」「西陣の姉妹」など没落、零落を得意とした監督ですので、この作品もそうした流れになるであろうと予測しておりました。

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