映画評「パッション」

☆☆☆★(7点/10点満中)
2004アメリカ=イタリア映画 監督メル・ギブスン
ネタバレあり

キリストの生涯はサイレント初期の「まぐさ桶から十字架へ」に始まり、これまで時代の問題作が作られてきたわけだが、今回メル・ギブスンが果敢に挑戦した本作は物語的にはさほど大きな問題はない。マーティン・スコセッシの「最後の誘惑」とはその辺りが異なる。

ポイントの一つは、お話がキリストの逮捕から処刑までの12時間にほぼ限られ、所謂伝記映画的な作りではないこと。それでも回想により簡単にその生涯が描かれてはいる。史実と違うという人もいるが、それはあくまで聖書などに照らした史実であり、この時代のものに厳密な史実はないことを忘れてはならない。

この作品の問題作たる所以は、キリストの肉体の酷烈な描写に尽きる。恐らく相当ひどいものであったことは想像に難くない。そのリアリズムにより、お話に新味はないものの、目を反らせたくなるにつれ画面にくぎ付けになるという矛盾した感情を覚えることになる。ただキリスト教国ではない我が国では、米国のような大きな反応には至らなかった。やむを得ないであろう。

特殊メイクのせいで殆ど素顔も分からないが、同時にそのメイクのおかげもあって、キリストに扮したジム・カヴィーゼルに凄みあり。

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この記事へのコメント

viva jiji
2006年08月12日 09:46
中学時代に刷り込まれた聖書世界にはずっと惹かれつづけていますが、底に流れているのは神と人間の不可思議な関係、矛盾、拮抗、混沌・・・です。聖書の物語はなんにも美しくありません。M・ギブソンはそこに鉄槌を打ち込んだと評価します。カヴィーゼルはベスト・キャスティングです。「シン・レッド~」からのファンです。実際のイエスは30才まで肉体労働(大工)をしていたのですから筋肉質で正解。ヒョロ~っとしたよくあるキリスト像は後の人の願望の具現化でしょう。それにしても大スクリーンで観たときにはさすがに目を伏せること幾たびかありました。優れた絵画を観るような美しい映像でしたが再見はちょっと・・・。時の施政者ローマ帝国に限らずあの時代の拷問や処刑は凄まじいものがありましたからね。ラストの「復活」の暗示の描写でもなければ「やり切れない」映画でしたわ。
オカピー
2006年08月12日 15:58
viva jijiさん
信心深い人、イデオロギーに固まった人は、芸術を嗜好するのに適さない。「ダヴィンチ・コード」も新解釈を巡って我々にはどうでも良い非難がされています。その点我々は幸福ですよね。純粋に映画として或いは文学として良いのかどうかを判断すれば良い。それを楽しむことができる。
この作品は物語は特に目立つところが無いように思います。注目すべきは、目を被いたくなる徹底したリアリズムでした。
メル・ギブスンも「マッドマックス」といった通俗アクションで芽が出た役者とは思えない、素晴らしい映画人に成長。何十年もかけてこういう変遷を見るのも映画ファンの愉しみなのであります。
2008年05月05日 21:48
僕はキリスト者ではないんですけどね、敬虔な信者の方たちは、あの酷く鞭打たれるシーンに何を感じていらっしゃったのでしょうかねぇ。映画が、入り込むのは微妙なところまで、演出してしまったのかもしれません。
オカピー
2008年05月06日 02:05
kimion20002000さん、TB&コメント有難うございます。

目を覆いたくなるという意味では信者も非信者も変わらないようにも思いますが、逆に何か得るところがあるのかもしれませんよ。

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