映画評「怒りの葡萄」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1940年アメリカ映画 監督ジョン・フォード
ネタバレあり

今となってはどうでも良いことだが、1940年に製作されたこのジョン・フォードの秀作が1963年まで日本で公開されなかった理由には、太平洋戦争による米国映画の輸入停止と、戦後の米国における赤狩りがある。赤狩りは50年代後半には収まったわけだが、気分的にすぐ公開ともいかなかったのであろう。
 1920年代から30年代にかけてアメリカの農村地帯にはかなり悲惨な状況を迎えていた場所があったことが痛切に思い知らされる力作。原作は勿論ジョン・スタインベック。

米国の経済体制が大きく変わり、大きな会社が土地を収用するようになったオクラホマからある家族が追い出される。仮出所してきたばかりのトム(ヘンリー・フォンダ)が事実上の家父長を務めるジョード一家である。仮出所した主人公が今では落ちぶれた元説教師(ジョン・キャラディーン)と再会して二人で家に戻るが、家には誰もいない。そこにいた隣人の話を聞いて叔父の家へ向かい、やっと一家と再会する、という一連の流れが実に見事である。
 一家12人は広告につられてトラック一台で遥かカリフォルニアを目指す。途中の人情が温かく、特にパンを巡るダイナーでの人情が良い。

が、カリフォルニアについてからが大変である。数百人の雇用に数千人が仕事を取り合う修羅場。雇用者はそれに乗じて労賃を下げる。煽動者が出てきてキャンプは大混乱になり、一家は今度は桃狩りのキャンプへと移動する。しかし、ストライクを煽動するグループをつぶそうとする雇用者側に元説教師が殺され、巻き込まれたトムも再度殺人をしてしまう。そのキャンプは平穏であるが、周囲が穏やかでなく、ダンス・パーティーを喧嘩に巻き込みつぶしにかかる。これは事前に察知したキャンプ側が無事回避するのだが、トムは家族への迷惑を慮って一人で旅立ち、残った家族は新しい仕事場を目指していく。

最後は楽観主義になって甘さが目立ち、安全なキャンプを政府が運営しているという表現で検閲には引っかからなかったのだろう。社会主義的な主張が全編を覆っているが、今日では当然の権利の主張に過ぎない。130分と長尺であるが無駄は少なく、展開は分かり易い。必要以上に作品が長尺になった現在、映画はこういう時代に戻るべきなのかもしれない。

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  • 『怒りの葡萄』

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