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zoom RSS 映画評「アメリカ アメリカ」

<<   作成日時 : 2018/06/28 09:37   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1963年アメリカ映画 監督イーリア・カザン
ネタバレあり

1970年代初めに存在を知って半世紀近くずっと観たかったイーリア・カザンの作品。超のつく貴重品だから、これでNHKに払う一年分の受信料くらいの価値がある。

内容としては、カザンの伯父の波瀾万丈の人生を綴っている。昨年秋に観たオスマン・トルコにおけるアルメニア人迫害を描く「消えた声が、その名を呼ぶ」の前半部分に非常に似たお話である。

ギリシャがまだオスマン・トルコの支配下にあった19世紀末。ギリシャ人の若者スタヴロス(スタティス・ヒアレリス)が、一家の期待を担い父の従弟が店を経営している首都コンスタンティノープルへ赴くが、渡し船の船頭には大切な荷物を奪われそうになり、その窮地を救った貪欲なトルコ人には上手いように利用され、結局一文無しになってしまう。最初は親切だった父の従弟が一文無しと知って態度を変えたため、若者は当時盛んに行われていた抵抗運動に与して重傷を負う。
 かくして店へ戻った彼は、父の従兄の勧めるトルコ商人の娘(リンダ・マーシュ)との結婚を考え始めるが、所期の目的であるアメリカ移住の夢は消せない。商人の顧客だったアメリカ人(トルコ出身)夫婦をつてに船には乗ってみたものの、米国での後ろ盾がない彼には移住は認められない。しかし、馴染みの青年ホナネス(グレゴリー・ロザキス)が喘息に絶望し移民局へ行く前に船上から飛び降り自殺を遂げた為、靴磨きの労働要員であった彼の名前を使って見事に上陸する。彼は靴磨きで稼ぎ、故国で死んだ父を除く家族全員を米国に呼びよせるのである。

現在移民を厳格化しているアメリカへの移住を試みる難民には、主人公のような気持ちで米国へ向かう人が多いにちがいない、と思いながら観ていた。
 移民はともかく難民はなるべく迎え入れてあげたいと思う。僕は厳しすぎる条件を設けて難民を殆ど受け入れず、労働人口確保のために条件的移民を積極的に企図する日本政府の考えには全く賛同できない。寧ろ、条件が付くとは言え絶対的に多くなる移民を制限した方が良い。自民党は思想的に非常に古臭いと思われる一方で、政策には左翼的発想が目立つ。

閑話休題。
 ギリシャ人は同じキリスト教系のアルメニア人ほどトルコに対し反乱を起こさなかったようだが、古くかつ確固たる文化を持つ国民であるから内心忸怩たるものがあったであろう。この映画に出て来るギリシャ人もアルメニア人も謂わば難民である。
 そんな厳しい環境を示す描写が続いた後、結果的に中盤の結婚に絡むシークエンスはアメリカ人妻のツバメとして乗船に結び付く為の前段としての印象が残るばかりで、長い割に今一つ機能しきれてはいない感あり。それでも、序盤からの艱難辛苦により彼が“善人では渡米は叶わない”という人生哲学を育む一方で、事実上の婚約者の金は使えないと断る彼は偽悪ぶることも碌にできない、という部分に人生ドラマとしての面白さがやや出ていようか。カザンの人生観に辛辣さを感じるところでもある。

ごく映画的には、当時のトルコの情勢や時代風俗などが野趣いっぱいに描出・点出され、これが第一の見どころである。ギリシャ人マノス・ハジダキスを起用した音楽もギリシャらしい、欧州と中東とが混じり合うようなテイストがあってなかなか強い印象を残す。

配役陣にはアメリカ人が多いが、主人公役のスタティス・ヒアレリスは名前から言ってギリシャ系であろう。実に濃厚な顔立ちだ。
 惜しむらしくは全編英語で、オスマン帝国の気分が出きらず、最後のエリス島での検査の際、それまでぺらぺら英語(実際にはトルコ語・ギリシャ語であるわけだが)を喋っていた主人公が突然英語を理解しなくなるのが表面的に奇妙に感じられる。アメリカの観客への配慮とは言え、つまらないねえ。全編英語だから、ギリシャ人がトルコ語を強制されていたらしい同化政策の問題も全く表現できない。

昨今は、英米映画でもないのに、英語しか出て来ないおべっか映画が増えている。こんなところにも映画をつまらなくする要因がある。

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