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zoom RSS 映画評「エリザのために」

<<   作成日時 : 2018/05/28 09:18   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年ルーマニア=フランス=ベルギー合作映画 監督クリスチアン・ムンジウ
ネタバレあり

4ヶ月、3週2日」で相当感心したクリスチアン・ムンジウの監督作品。かの作品ではチャウシェスク独裁末期の理不尽を描いていたが、こちらは自由主義体制になった現在のルーマニアの問題を浮かび上がらせる。

医師のロメオ(アドリアン・ティティエニ)は、高校卒業間近の娘エリザ(マリア・ドラグシ)を学校のそばで下す。しかし、彼女はその直後学校に辿り着く前に暴漢に襲われる。幸い軽傷に終わるが、ケンブリッジ大学への留学を希望する彼女は資格取得に関わる試験初日前日に遭遇したこの事件にショックを受け、当日思ったような解答が出来ない。
 先進諸国に比べ色々と問題の多いこの国にいさせたくない父親は、最終日の試験結果に全てがかかっていると思い、肝臓の悪い副市長に臓器提供を優先する代わりに学校関係者に話をしてくれと頼み、最終的に学校関係者もそれに応じてくれる。
 ところが、副市長に贈収賄の疑いが生れ、その捜査中につき試験に関する採点不正要求に気づかれてしまう。副市長に面会させろという検察の要求を断った為彼自身が罪に問われる可能性が生れる。娘は父親の不正の企図を快く思わず、試験に臨む。元来仲が悪かった妻マグダ(マリーナ・マノヴィッチ)はこの不正問題と不倫問題が重なって彼を追い出す。彼は、母親のもとに残った娘の卒業式に出る。

Allcinemaにヒューマン・ドラマとある。確かにヒューマン・ドラマ(人間劇)ではあるが、邦題から想像されるような人情劇ではない。良心の意味を問う作品である。
 副市長は贈収賄の常連らしいし、主人公も、学校関係者も、警察も不本意ながら不正を行う。しかし、主人公の娘への思いが終始綴られ、その葛藤ぶりに“やむを得ない”と観客に思わせるものがある。彼らは常に自らの良心に問い続けるからである。

何故彼らがこんなことをしなければならないのか? それはルーマニアという国が自由主義体制になっても旧態依然の閉塞的なムードが支配し、治安も大して良くなく、不正がまかり通ってしまうような風土にある。主人公は皮肉にも自らの不正要求が通ってしまうところに自国のダメなところを強く感じるのである。この部分が本作を注目に値する作品にしたと思う。

逮捕される可能性が出て来て彼は全てを娘の意志に任せることにする。試験結果は解らないが、父親の束縛から解放され、また父親故の義務から解放された父の様子にエリザの顔は明るく輝く。

ムンジウとしては、旧作よりぐっと素直に作っている印象があり、人間劇の佳作と言いたい出来栄え。

戦後、我が国のラジオ・ドラマに「えり子とともに」というのがあった。題名が似ているので思い出しました。挿入歌が有名な「雪の降る街を」。

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