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zoom RSS 映画評「キング・アーサー」(2017年版)

<<   作成日時 : 2018/05/22 09:20   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督ガイ・リッチー
ネタバレあり

トランスフォーマー/最後の騎士王」でも扱われたアーサー王の本格版だが、監督がガイ・リッチーなので相当不安に思いながら観た。事実、同じようなものを何度も作られても困る一方で、本作は挨拶に困ると言っても良いくらいテキトー。一応お話をば。

ブリトン王国。叔父ヴォーディガン(ジュード・ロー)に父王ユーサー(エリック・バナ)を殺され、貧民街に逃げることになった少年アーサーは売春婦に育てられ、やがてユーサーの血を引く者のみ抜くことのできるエクスカリバー(剣)を抜いたことで出生が露わになる。彼の登場に脅威を感じた現王ヴォーディガンは彼を亡き者にしようと命を狙う。

人物関係は幾つかあるアーサー王伝説に則るが、時代考証と歴史考証が出鱈目で観る気を失った。ヘアスタイルや服装が現代人とさして変わらないのは、前衛舞台や前衛映画に見られるように全体に渡って徹底すれば構わないが、必ずしもそれが出来ていない。魔物が幾つか登場する古代ファンタジーの体裁をしているなど、現代風の見せ方とは首尾一貫しないところがあるからである。

そうした現代的な風俗設計は三次元的にアクションを捉える部分などスタイリッシュな見せ方と合っているとは言える。加えて、時系列のいじり方が「スナッチ」辺りの旧作を復活させた感じで、リッチーは正攻法の話術ができない自らの限界に気づいて開き直ったのではないか。

歴史的には、劇中に頻繁に出て来るイングランドという言葉に首を傾げ続けた。当時イングランドという地理的概念はなかったからだ。現代の若者が理解できないからという脚本家の配慮だろうが、こうした程度の低い配慮により、どのような観客を対象にしているか解るというものだ。
 アーサー王は、5世紀ごろローマ帝国(西ローマ帝国)がブリタニアから退いた後(為)、アングロ・サクソンが侵入してきて混乱し始めた同地からサクソン人を撃退した王とされる伝説上の象徴的人物。実在したかしなかったかはともかく、まだグレートブリテン島の中南部がイングランドと呼ばれることになる大分以前の人物である。アングロ・サクソンが力をつけて後にアングリア(英語への変換でイングランド)と呼ばれるには200年くらいはかかるであろうし、まして本当のイングランド王国が出来るのはアーサー王から400年以上も後だ。当然この時代に“イングランドの名家”などないのである。ブリトン人を筆頭とするケルト系はローマが侵入する何百年も前に入っていたから、ブリトン(ブリテン)若しくはブリタニアの名家といった発言なら理解できるのだが。
 しかも、イングランドはアーサー王のアンチテーゼである。解りやすく言うと、邪馬台国の女王卑弥呼に「日本云々」と言わせるようなものだ。

もっと細かいところでは、貨幣の扱いに関して疑問があるものの、それは措いておく。辮髪の中国人(?)も歴史的にはありえない。トルコ系民族なら別だが、どう見てもあれは極東系の風貌である。辮髪を中国人の象徴のように思うのは勿論西洋人の誤解で、単に清を作った満州族の象徴に過ぎない。満州族が中国を完全に支配したのは17世紀から20世紀初めにかけての300年弱に過ぎない。

ファンタジーにおけるポリティカル・コレクトネス傾向も気に入らない。5〜6世紀のブリタニアに、実権を持つ中南部アフリカ人とは(アジア系も勿論その傾向に入る)。

時代劇・史劇は昔を舞台にしていても実際には現在に生きる観客の生活感情を踏まえて作られる以上、時代考証・歴史考証は100%正確である必要はない。例えば、江戸時代のお話だからと言って、それがお話の展開上の意味をなさない限り、既婚婦人役の女優の眉を剃らせたりお歯黒をさせるには及ばない。本作のはその枠を超えている部分が目立つということ。

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『キング・アーサー(2016)』('17初鑑賞67・劇場)
☆☆★−− (10段階評価で 5) 6月17日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター8にて 13:40の回を鑑賞。 2D:字幕版。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2018/05/23 14:43

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