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zoom RSS 映画評「故郷」

<<   作成日時 : 2018/05/16 08:51   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1972年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

“ふるさと”と読ませる。山田洋次監督の“民子”シリーズ(?)の第2作である。第1作の「家族」は何回か観ているか、本作は40年ぶりくらいの2回目に過ぎない。TVには余り出て来ないのだ。

瀬戸内海の小島に住む精一(井川比佐志)は、妻の民子(倍賞千恵子)を機関長とする石船の船長をしている。父親(笠智衆)の仕事を継いだ、言わば家業である。しかし、高度経済成長期後期で産業は既に効率化され、19年も使ったおんぼろ船では勝負にならない。それを知りながらも、島にいる姉(阿部百合子)や街に出ている弟(前田吟)から職変えを提案されると面白くなく、同じ苦しみを味わっている妻にもつい当たってしまう。

という物語のモチーフは、「家族」の長崎小島を瀬戸内海小島に変えただけで殆ど同じであるが、かの作品が移住先までの旅を主題としたのに対し、こちらは移住(転居か?)を決めるまでの過程が主題である。
 「家族」同様にセミ・ドキュメンタリーの手法を取り入れているが、お話の構成がぐっとシンプル。結果的に「家族」の豊潤さはないが、それ故に純度が高いとも言える。どちらも心にしみることに変わりはない。

「寅さん」以外の山田作品で珍しくも渥美清が早めに出て来る。島を巡って魚を売る魚屋で、売れ残った魚を安く届けに馴染みの一家を訪ねる。帰ってきた精一に「仕事が毎日あるだけでも良いよ」と言うと、彼は不満そうに「オイル代も出るかどうか」と応える。それを聞いた渥美氏は事情を察し挨拶だけして黙って家を出る。民子のお金も受け取らない。
 開巻後9分のエピソードで、この場面の見せ方が秀逸である。相手の苦悩と一家の楽ではない暮らしを察し、また、かき回さないように「男は黙ってサッポロビール」とばかりに腰を上げお金も受け取らない。庶民同士の交流が何とも胸に迫るではないか。
 今回の渥美清に喜劇色は全くなく、長女を船に乗せるのを忘れた夫婦に「あわてんぼうの夫婦だね」と言うのが僅かにそれらしいくらい。寅さんにしか見えないという意見がAllcinemaにあったが、そうでもない。口数が少なく、こういう渥美清を見るのも良いと思う。

最後に、石船という船に乗る人々はこれ以外に見た記憶がない。同時代に作られた作品でありながら、既にこうした地方色溢れる情景に対するノスタルジーを醸成するのに心がけた見せ方をしているのが印象深い。

僕が高校に入った時校長が新入生に向って「男は黙ってサッポロビール」(1970年放映)の就職話をした。これは都市伝説であろうが、CMから何年もしないうちに伝説化していたことに今は驚く。

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