プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「午後8時の訪問者」

<<   作成日時 : 2018/04/28 09:20   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2016年ベルギー=フランス合作映画 監督リュック・ダルデンヌ、ジャン=ピエール・ダルデンヌ
ネタバレあり

エンドロールでダルデンヌ兄弟の作品と知り、納得した。

若い女医アデル・エネルが、応対しようとした研修医オリヴィエ・ボノーを抑えて、診察時間を過ぎた後に押されたチャイムを無視するが、後日警察により押した黒人少女が死体で発見されたと聞かされる。これに罪悪感を覚えた彼女は、名前も分からないまま他国の墓地に人知れず埋められるのを見るのは忍びないと、僅かな端緒から探し当てようと彼女を知る人々を捜し回る。お墓の場所も無縁仏にならない区域に自費で確保する。当たった人々からは煙たがられ、時には暴力を振るわれるが、その結果少女の姉が現れる。

というだけのお話で、序盤のうちは狙いがまるで解らず面白くないが、ヒロインが取りつかれたように人々を歴訪し、そこに作者が言いたいことが集約されていると見当がついてから、俄然興味深くなる。通俗的に言えば歴訪ミステリーの味があるからだが、その言葉から想像されるほど通俗的な興味に視線が下降していくわけではない。

この作品の文学的主題は罪悪感と保身である。罪悪感を覚えた女医が色々と探し回るも、一人の少年ルカ・ミネラの証言から探し当てた人々は例外なく自分が不利になるのは嫌なので語ろうとしない。女医がそんなことにはならないと言っても遠ざけようとする。嫌がり方は色々だがそこに保身という共通性がある。
 しかし、この事件を調べるうちに女医は、ボノー青年が自分を嫌い始めた理由に気づいて自らの処世の仕方を変えていき、医者を諦めると言った青年も復帰する。

こうしたお話の推移のうちに浮かび上がるのは、文学的主題だけでなく、ベルギー若しくはフランスの社会の現実である。移民らしき少女が被害者であり、彼女が関係した人物は色々な意味で彼女を搾取している。移民が直面している厳しい立場を捉えると共に、移民排斥の問題も垣間見える。保身に走る人々は、搾取する一方で、最近目立ち始めた西洋人の民族主義的立場を象徴するのである。

敢えて声高に問題意識を示さず、かかる市井の人々を焙り出すかのようにヒロインが行動するのを見せるだけに推移、そこはかとなく観客の理解力に委ねる形になっているのが良い。ダルデンヌ兄弟の持ち味であるハンディカメラや自然光を意識させないことにも感心したくなる。かくして途中までの印象から考えられないほど滋味を醸成して終る。

地味だけど滋味溢れる。しかし、地味すぎるので、面白く思う人は少ないと思う。仕方がない。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「午後8時の訪問者」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる