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zoom RSS 映画評「僕と世界の方程式」

<<   作成日時 : 2018/04/26 10:01   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2014年イギリス映画 監督モーガン・マシューズ
ネタバレあり

自閉症の少年を主人公にした青春映画で、素材的になかなか新味がある。

エイサ・バターフィールド扮する少年は、数学に異常な興味を持っていて、その為小学生の時に母親サリー・ホーキンズが小学生であるにも関わらず高校に送り数学教師レイフ・ポールに特別に教えてもらうことになる。
 数年が経って数学オリンピック英国代表の候補になり、中国の候補者と切磋琢磨するために他の候補者と共に台湾合宿へ送られる。そこで中国人美少女ジョー・ヤンと出会い、彼の精神に革命的変化を起こす。

というお話なのだが、Yahoo!映画の現在のところ五番目にある投稿が反面教師的に色々な問題を提供しているので、ここからこの映画を考えてみる。投稿者は「主人公の障害が“自閉症スペクトラム”“アスペルガー障害”“発達障害”のどれか、解らない。専門家ではないから映画の中で説明してほしい」というのだが、医学的にも恐らく正しくない意見であろうし、まして映画分析的には丸っきり的外れである。

まず、医学的にこれらは相互に関連するものであって、簡単に分離など出来るものではないと思われ、専門家こそ特定できないのではあるまいか(尤も、彼の言いたいことは、主人公の行動が一貫しないことであって、病名の特定を求めるのが主旨ではない)。
 「彼の行動が一貫しないから我儘に見えてしまう」ですか? 実際には一貫性がないように見えるから映画としての意味が出て来る。彼の行動が中国人少女や競争相手などの前と親などの前と違うのは、友人たちが自分の同類であるという認識をしているからであり、中国人少女については彼が恋をし、自閉症であるが故に守ってきたルールを尽く破っていることを意味している。逆に言えば、恋は自閉症の人間に対しても特別だということだ。心理の洞察なしに病理学だけで解釈できるならドラマ映画を作る必要などない。
 同時に、彼は実際わがままに育てられたのである。少年から交通事故で亡くなった父親ほど好かれない母親としては、自分に関心をもってもらいたいので甘やかすし、息子の教師ポールに数学を教えてもらおうとさえする。ここは少年ではなく寧ろ扱いの難しい子供を持った母親の心情を考慮しなくてはならない。甘やかしたとて人に危害を与えるような人間になったわけではない。
 最後主人公がオリンピック会場を抜け出すのを教師(レイフ・ポールではなくメンバーを指導してきたエディー・マーサン)への裏切りと見るのもちと変だ。人間は自分の為に生きるべきであり、教師の為に生きるのではない。それができないからと言って協調性がないというものでもない。彼がその行為に見せるのは、現場からの脱出=内に閉じこもってしまう障害からの脱出という成長、その表徴である。手を繋げなかった彼が最初は少女と、最後には母親と手を繋ぐことができる。大進歩である。通常人であっても拍手を送るべきであろうし、まして人とのコミュニケーションに関して障害を持つ人間に対しては喝采こそ送るべきではなかろうか。彼は限りなく健常者に近づいたのである。

自分が理想とする性格でない主人公を非難するような感想文がこの映画に限らず多いが、「自分は人から全く非難されないような人間であるか」自分の胸に聞いた方が良さそうな場合が大半。問題がないような主人公ならわざわざお話にする意味がないであろう。
 僕は、投稿者と違い、「卒業」と「小さな恋のメロディ」をどこか思い出させる現状打破のラストに爽快さを覚えた。途中まで日本のスポ根青春映画と大差のない展開だが、そこから急転直下、抜け出るところが全く素敵だ。

因みに、亡父もアスペルガー障害の気があった。数字に強く、変化が嫌いだった。僕が高校を(苦手な水泳を回避する為)ずる休みすると「自転車の位置が変わっていない」と休みを指摘した。「それでは」と自転車を変えると「靴が動いていない」と休みを指摘することもあった。入院中に小道具の位置が変わっていると、必ず元の位置に変えさせた。ベッドの位置がずれていると見える風景が変わるので、ベッドの位置を元に戻させた。僕も数字は好きであるし、少しはその血を引いているかもしれない。

原題は"X+Y"でござる。その昔ちあきなおみが「X+Y=LOVE」と歌ったのと同じこころであろう。

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