プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「追憶の森」

<<   作成日時 : 2018/04/22 09:09   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 5 / コメント 0

☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年アメリカ映画 監督ガス・ヴァン・サント
ネタバレあり

日本人好みの感傷的な邦題が付けられているが、原題は「樹海」である。監督はガス・ヴァン・サント。

その“樹海”即ち日本の青木ヶ原に妻ナオミ・ワッツを失ったばかりのアメリカ人科学者マシュー・マコノヒーがやって来て、死ぬ場所を探し始めると、そこへ突然日本男性・渡辺謙が現れる。マコノヒーはその危なかしそうな様子に出口を探してやろうと協力するうち、ドツボにはまった感じになる。
 彼と森を彷徨ううちに先に死んだ男のテントでトランシーバーを発見、これを使ったところレンジャー部隊が反応し、結局マコノヒーは救われるが、残してきた男はいなかったと関係者から言われる。退院した彼が現場を再訪すると、テントの下に一凛の花が咲いている。

という寓話で、実は死ぬ直前まで彼は妻と最悪の関係に陥っていた。どちらが始めたというわけでもないが、二人とも自分の非を知りながら相手を責めることでその苦しさから逃避しようとしていたのであろう。先日「家族」で述べた状況である。ところが、妻に脳腫瘍が発見される。これがそうした苦悩を取り除き仲の良い夫婦が復活する。しかも、除いた腫瘍は良性と判明、いざ転院となり救急車で運ばれる最中交通事故に遭遇するのである。

妻の死後、彼の脳裏を横切る後悔は妻の好きなこと――特に好きな色と好きな季節――を知らなかったこと。渡辺謙が何かの霊であることは比較的早めに想像がつくが、彼の言う妻の名前“黄色”と娘の名前“冬”がそういう伏線だったとはなかなか想像できない。

科学者であるが故に霊体など信じないマコノヒーに対し、渡辺氏が早めに“愛する人はいつも隣にいる”と言う。渡辺氏がその愛する人そのものであったのだが、テントの下に花を見出した時にその言葉を確信する。庭にその花を移し替えた彼は、かくして亡き妻に謝罪し、再生する。それが彼女への一番の贖罪である。言い換えれば、妻の霊が夫を再生させるお話である。

精神的かつ内省的な作品で、加えてスピリチュアルだから、“単調”という一部の指摘は間違ってはいないものの、少なくとも樹海の場面は単調でなければならない筈である。ここに余り起伏があったら霊体もびっくりする。じっくり何事が進行しているのだろうと注視させることで、観客の心情を低回的になっている主人公の心情と同期させるべく、単調さは必要である。これを面白く観るかどうかは鑑賞者の趣味であって、映画の責任ではない。

また、寓話であるから、実際と違ったり現実的でないことも問題ではない。そう思えなければ寓話と言えないと言っても良いくらいである。取り立てて買いたいとは思わないものの、こういう作品があっても良い。

本作のことではないが、巷では邦題への批判が溢れている。原題の方が良いと言うケースが多い。日本の大衆は題名に感傷性を求めそれに配給会社が応えようとし、映画評を書くようなインテリ層と齟齬を生じる。民族性を考えないと、邦題をつける人々が気の毒ではあるまいか。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(5件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「追憶の森」
もうなかなかの年月を生きてきて、色んな事を経験して、本を読んで映画を観て、自分の知らない世界の事も垣間見たような気になって、社会生活ではその場その場でのお作法も学んで、物事を大人として客観的に見たり俯瞰で見たりする訓練を経て、想定内やいつか来た道だと思う事が増え、斜に構えたり、冷静を装ったり、時には多勢に無勢でやり過ごしたり、強く何かを願う事が稀になってきたり、まあいいかと諦める事が増えたり、そんなやさぐれた私にでさえ、心に染み渡る大人の童話だった。スピリチュアルな作品は、…スピリチュアルなもの... ...続きを見る
ここなつ映画レビュー
2018/04/23 12:36
『追憶の森』('16初鑑賞47・劇場)
☆☆☆☆− (10段階評価で 8) 5月5日(木・祝) 109シネマズHAT神戸 シアター3にて 11:55の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2018/04/23 16:15
青木ヶ原樹海〜『追憶の森』
 THE SEA OF TREES ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2018/04/24 10:11
追憶の森
富士山の北西に広がる青木ヶ原樹海の森。 この地を訪れたアメリカ人男性アーサーの目的は、永遠の眠りにつくことだった。 死の準備を始めた彼の前に、怪我をした日本人男性タクミが現れる。 見かねたアーサーは、薬にふらつきながらもタクミを森の出口へ案内しようとするが、方向感覚を失った二人は森をさまようことに…。 ドラマティック・ミステリー。 ...続きを見る
象のロケット
2018/04/28 23:39
映画評「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」
☆☆☆★(7点/10点満点中) 2015年アメリカ映画 監督ジャン=マルク・ヴァレ ネタバレあり ...続きを見る
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
2018/06/17 10:30

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「追憶の森」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる