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zoom RSS 映画評「シェーン」

<<   作成日時 : 2018/04/17 08:17   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1953年アメリカ映画 監督ジョージ・スティーヴンズ
ネタバレあり

多分アメリカ人以上に日本人に影響を残した、映画史上に燦然と輝く西部劇の名作。少なくとも4回は観ていると思うが、今回は20年ぶりくらいだろうか? 

風来坊シェーン(アラン・ラッド)がワイオミングの開拓地に入り、そこで土地ならしに苦労しているジョー(ヴァン・ヘフリン)と知り合う。ジョーは、先にこの土地に入ってきたライカー兄弟の一派に嫌がらせを受けている。シェーンもその一人と思って冷たく対応するが、やがて誤解が解けると、色々と協力してもらう関係になる。
 息子のジョーイ(ブランドン・デ・ウィルデ)は無口で格好良い銃を持っているシェーンに憧れるが、酒場での喧嘩に抵抗しなかったと聞かされて少々がっかり。しかし、後日シェーンは再び喧嘩を売られると今度は買って、ジョーとコンビネーションよろしく一味をやっつけてしまう。かくしてシェーンはジョーイの英雄となる。
 一派の嫌がらせは収まらず、新しく雇った用心棒ウィルソン(ジャック・パランス)が開拓民の一人を殺し、リーダー的な存在であるジョーがライカー兄との談判に応じるように仕向ける。ライカー兄はウィルソンに殺させる気である。それを知ったシェーンはジョーを殴り倒して単身酒場に乗り込む。

ジョーイから“シェーン、カム・バック”の有名な呼び声をかけられた時シェーンは既に死んでいたのではないか、と昔から取り沙汰された名ラスト・シーン。初めて観た十代前半の時には軽傷を負ったがそのまま無事に旅を続けると思ったが、後に指摘されて見直すと、死んでいなくても瀕死であろう、と考え直した。今回僕が観たのは、デジタル・リマスター版で非常に綺麗な画面である一方、この幕切れが僕の記憶よりぐっと暗くて、分りにくかったと申しておきましょう。

5年間耕作すると入植した土地が自分のものになるという独特なホームステッド法がこの西部劇の背景に横たわっている。カール・マルクスが英国より米国に資本主義の(相対的な)可能性を見、実際に英国が次第に衰退していくのは、恐らくこうした新大陸の政策にある。アメリカン・ドリームが生れた土台も或いはここにあるのかもしれない。

とにかく、先に開拓したと称するライカー兄弟にしてみれば横取りされた気分で、彼らの言い分も一理はある。しかし、独占は出来ないので抗争が生まれているという枠組みが、本作のアクション西部劇としての部分である。日本人のほうが影響を受けているのではないかと冒頭で述べたが、この部分に影響を受けて作られたのが一連の日活「渡り鳥」シリーズである。宍戸錠主演「赤い荒野」(1961年)はそのまま設定を戴いた作品。当時の日活アクションは欧米のヒット映画の所謂パクリが実に多かった。

本作にはホーム・ドラマの要素もある。それも子供の視点とは言わないまでも、子供を軸に描いたのは活劇の要素もある西部劇としては非常に珍しい。こちらの要素を現代日本に蘇らせたのが山田洋次監督「遥かなる山の呼び声」(1980年)である。
 少年のシェーンへの憧憬も素敵ながら、大人の男性としては、シェーンとジョーの妻マリアン(ジーン・アーサー)の恋愛感情寸前にある慕情の、西部劇とは思えない繊細な描出に切なくなる。シェーンが欲望を抑えられない男なら、ジョーがライカーの許へ行くのを止めなかったかもしれない、などと考えてしまう程である。

作り方について。本作は環境描写から人間描写へゆっくりと入っていく。それは一つ、アクションより心理を見せるドラマとしてふさわしい映画のテンポをここで規定する為である。Allcinemaに“緩慢”という評価があった。その認識は正しいが、それが映画の狙いであることに気づいていず、ネガティヴな評価に結び付けるという過ちを犯している。加えて、この緩さが続くシェーンの殺気を強く見せる効果もある。ジョーイのいじったライフルの音に対するシェーンの早すぎる反応に、それまで緩やかなテンポに浸っていた観客はハッとさせられる。これでシェーンの流れ者としての立場も瞬時に解る、実に鮮やかなショットでもある。
 やがて対峙するジャック・パランスのウィルソンの描写も緩急をうまく使って面白い。ジョーの仲間のトーリ(イライシャ・クック・ジュニア)を倒す時にはゆっくりと黒い手袋をはめてからじっくり射殺する。手袋は殺しをするという意思表示である。ジョーの名代シェーンが現れる時には既に手袋をはめている。これで男が殺す準備が万端整っていると観客が理解することができる次第。良い映画はこういう細かいところまで気が利いている。

ジョージ・スティーヴンズは何でも屋で、器用に単打を多く放つ印象。しかし、本作はホームランと言うべし。

Come back は「生き返れ」でもある。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
双葉さんが85点(☆☆☆☆★)を付けられた名作ですね。
僕は観たのが結構遅くて、それもTVの吹き替え。多分子供の頃に見てたらもっと感動してただろうなと思った記憶があります。
9年前の再見記事、名前にリンクさせていますが、<農民達の描写には叙情的なリアリズムが漂いますが、シェーンはどことなく人間臭さがなく現実離れしている>などと書いています。
十瑠
URL
2018/04/17 10:38
十瑠さん、こんにちは。

>☆☆☆☆★
「駅馬車」が☆☆☆☆★★で、これがそれに次ぎますね。多分西部劇も(!)お好きな双葉師匠のベスト3に入るでしょう。

>観たのが結構遅くて
そういうのはありますねえ。
僕は中学生でしたし、素直に参りました。もう抗えません(笑)

>人間臭さがなく
多分一種の寓話だからでしょう。
オカピー
2018/04/17 19:16
 オールシネマに、つい最近この作品を観たという若い人?の「普通に面白い」という意見があり、ぼくとて、「普通」がアベレージでなく、「意外と、けっこう」だという褒め言葉と承知していますが間違っています。これは「最高に面白い映画」です。滋味がありすぎて吸収の仕方がわからないのかも。

ジャック・バランスとのガンファイトで、シェーンの、撃鉄を左手でたたきながら打つファニングという撃ち方では当たらないとかの意見も。酒場のような室内の至近距離では、引き金を戻さずに引きっぱなしで速射できるこの撃ち方が有利とされていたのですが。
子供のころから、必要もないのにモデルガンと、コルトなど銃の図鑑やメーカーの本を読んでいたぼくから見れば他愛ないいちゃもんに思えます。
そもそも、彼らは、刑事ドラマで刑事が銃を構えたときに必ず「チャッ」と擬音が入るのに何故クレームをつけないのか?
本物の銃を構えただけで音がしたら、その銃は故障してますからね(笑) 

>アメリカ人以上に日本人に影響を残した
 ラストの少年の痛切な叫びをパロディにしたかつら会社のCMもあり・・まさに国民的?ヒーローといって過言ない・・。
同じくオールシネマに、「人々に積極的に関わらず、常にアウトロー、傍観者の立場を貫きながらも最後には自ら関わってゆくのが”ゴルゴ13”のようだ」との意見があり、確かにニヒルな木枯門次郎もゴルゴもシェーンと似ている、と思いました・・。
日本人には、こういった屈折したヒーロー像のほうが受けるようです。

妻役の倍賞千恵子、いや、もとえジーン・アーサーが、大立ち回りをやった男二人の介抱の後、離れに去るシェーンをじっと見つめ、直後に部屋に現れた夫に思わず抱きつき「きつく抱きしめて!」と哀願するシーンは、夫のいる身でありながら仄かな慕情を抑えきれない女心をうまく表していて好きですね・・。
浅野佑都
2018/04/18 16:02
浅野佑都さん、こんにちは。

>若い人?
僕らよりは若いけれど、ある程度は行っているという感じもしました^^

>普通
評価の言葉として使う場合、僕らはこれを形容詞と使い、副詞として使う彼らとの間に感覚の差がありますが、ご指摘の通り、彼らは「平均より上」というニュアンスで使っていますよね。

>ファニング
言っていることは浅野さんと同じと思いましたが、距離の感覚に差があるようです。浅野さんは至近距離と捉え、彼は必ずしもそうではないという感じ。
いちゃもんですね。

>本物の銃を構えただけで音がしたら、その銃は故障してますから
 そうですね。しかし、不思議なことに、そういう見せ方をするのが定石となっています。

>“ゴルゴ13”のようだ
僕は高倉健の実写映画版しか知らないのですけど、ニヒルという共通項でくくれるのは解ります。そうか、シェーンはニヒルだったのか(笑)

>「きつく抱きしめて!」
この映画のハイライトです(?)。
その点、夫のいない倍賞千恵子のほおうが気分的には楽ですね。
オカピー
2018/04/18 21:34

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