プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「華麗なるヒコーキ野郎」

<<   作成日時 : 2018/04/10 08:38   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 1 / コメント 12

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1975年アメリカ映画 監督ジョージ・ロイ・ヒル
ネタバレあり

ジョージ・ロイ・ヒルはご贔屓監督で、その中でも爽快さと滋味が併存する本作はお気に入り。機関車同様複葉機や三葉機を見るだけで、僕の世代の平均的な男の子は舞い上がってしまうのである。本当はもっと画質の良いもので観たいのだが、いつまで経っても出て来ないので、昔S−VHSで録ったもので再鑑賞する。

第一次大戦後のアメリカ、出征はしたものの実戦での活躍がないヒコーキ野郎ウォルド・ペッパー(ロバート・レッドフォード)は、遊覧飛行で食いつないでいるものの収入が乏しく、より稼げそうな曲芸飛行に乗り換える。ライバル関係だったオルソン(ボー・スヴェンスン)と一緒に或る興行主の下で働き、彼らはオルソンの恋人メアリー(スーザン・サランドン)をフィーチャーした催し物を企画するが、悲劇に終わり、この事件で当局から目を付けられ、彼らは曲芸飛行興行を禁じられる。
 スタントマンになったオルソンを追ってハリウッドに仕事場を見出したペッパーは、そこで憧れの元ドイツ軍の勇士ケスラー(ボー・ブルンディン)と出会い、彼の有名な一騎打ちの挿話を映画の中で再現することになる。

飛行機上で硬直してしまったメアリーを助ける一幕のサスペンスが強力で見応えたっぷりだが、胸をジーンと打つのはペッパーが、憧れであり実際に戦ってみたかったと夢見たケスラーと、撮影であることも忘れて本気で一騎打ちを繰り広げる場面である。

邦題より原題(The Great Woldo Pepper)のほうが感じが出ているが、こんな邦題になったのは、主人公の行状とは関係なく、レッドフォード主演の「華麗なるギャツビー」がヒットした後だからであろう。実際には、“無謀なるヒコーキ野郎”といった趣で、さらに言えば、戦争が終って遊覧飛行や曲芸で食べるしかない空の勇士のうらぶれた悲哀感がいっぱい。Allcinema某氏の“江戸時代の武士の心境”という表現は言い得て妙で、武士道ならぬ騎士道にも日本人の琴線に触れるものがある。そうした悲劇性が基調にありながら、ヒルは極力明るく作って屈託のない作品にしたのが良い。

結局(架空の人物と思われる)ペッパーはこの直後に何らかの理由で死に(1895−1931)、ヒコーキ野郎の悲しみが浮き彫りにされるのだが、それでも合成を使っていないように見える数々の飛行場面で覚える爽快な(時に酔いそうになる)気分を維持したまま見終えることができる。タッチが陰にこもっていないのが奏功した結果と言うべし。

日本での評価と比べると、IMDbでの平均点が低すぎる。アメリカには野暮天が多いのだろう。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
華麗なるヒコーキ野郎
20年代のアメリカ。 第一次大戦中、空軍で活躍し今は曲芸飛行師として地方を回るウォルド・ペッパー。 ある時、元ドイツ空軍の花形撃墜王、ケスラーと出会う…。 空中アクション・ヒューマンドラマ。 ...続きを見る
象のロケット
2018/04/21 08:15

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
 >邦題 「華麗なるギャツビー」がヒットした後だから
石原裕次郎も出演した「素晴らしきヒコーキ野郎」とのハイブリッド(笑)ですかね?

>IMDbでの平均点が低すぎる

同感ですが、考えるに、アメリカ人、とりわけ、IMDbに来るようなファンにとっては、レッドフォードの”甘さ”がお気に召さないのじゃないですかね?
もし、イーストウッドが同じ役を演じたら、本国でも大人気になったと思うくらい傑作ですよ・・。

かくいう僕も、若いころは、レッドフォードの、あまりに屈託のない「突き抜けたようなハンサムぶり」は能天気に思えましたし、彼の出世作である「明日に向かって撃て」や「スティング」でも、兄貴分のポール・ニューマンのほうが渋くて評判良かったですね・・雑誌スクリーンなどの女性投票ではレッドフォードの圧倒的勝利でしたが・・。
同世代の2枚目スターだった、アル・パチーノや、ウォーレン・ベイティのような哀愁が漂ってこない(笑)

>僕の世代の平均的な男の子は舞い上がってしまう

宮崎駿の「紅の豚」の元ネタといっても、さほど言い過ぎでないような・・少なくともインスパイアはされた作品でしょうね・・。
大方の女性映画ファンには、主人公ほか、登場人物が次々に死んでしまうこの作品のどこがいいのか、いくら僕が口角泡を飛ばせても、さっぱり魅力が伝わらないでしょうね(涙)
いや、女にわかるはずがない!(女性読者の方、失礼)
 なんとなれば、空を飛ぶことそのものが、冒険たり得た時代の開拓者が、ただの飛行士(パイロット)に成り下がらねば生きて行けなくなったときに、彼ら飛行家(アビエイター)に捧げた鎮魂歌でもありますから・・。
浅野佑都
2018/04/10 11:43
浅野佑都さん、こんにちは。

>「素晴らしきヒコーキ野郎」
10年後くらいの公開ですから、多分ハイブリッドでしょうね。

>能天気に
そうですね(笑)
本来悲しい話ですから、パチーノ辺りだと陰にこもってしまう感じがします。イーストウッドですと、反体制的になってしまうかなあ。
後味を考えると、レッドフォードで良かったなあと僕は思いますね(実際は、イーストウッドの方が保守ですけど)。

>「紅の豚」
宮崎駿は、飛行機に関心大ですから、この映画は好きでないはずがない。しかも、御大は古典にアイデアを求める傾向がありますから、仰る通りでしょう。

>冒険
僕らの世代は、冒険だのロマンだの、この手の概念が好きですよねえ。複葉機は完成度が低いので、何があるか解らない。そこに冒険性がある。パイロットとアビエイター・・・なるほどお。浅野さんにしてやられました(笑)
オカピー
2018/04/10 21:17
>オルソンの恋人メアリー(スーザン・サランドン)をフィーチャーした催し物を企画するが、悲劇に終わり

悲痛な場面でした・・・

>スーザン・サランドン

「テルマ&ルイーズ」を思い出します。
彼女も共演者のジーナ・デイヴィスも高齢出産不思議な偶然です。

>それが日本映画の迫力のなさにも繋がっているわけで、残念なことですね。

歯がゆいです。でも日本古来の良さもあるかも?

新年度早々こき使われてダウン寸前の蟷螂の斧より
蟷螂の斧
2018/04/12 19:54
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「テルマ&ルイーズ」
上の作品の頃にはもう有名でしたね。
「ヒコーキ野郎」の頃は知られ始めた時代。顔かたちが余り変わらない印象が強い女優です。

>高齢出産
それは知りませなんだ^^

>日本古来の良さ
日本映画が実名を隠す奥ゆかしさを、僕も、100%は否定できませんね。作品の性格によっては生きるケースもあるかと思います。具体的には思い浮かびませんが。

>ダウン寸前
Take care of yourself!
オカピー
2018/04/13 20:31
>ペッパーはこの直後に何らかの理由で死に

飛行機事故?具体的に明かさないところがうまいです

ペッパーの友人が焼死(撲殺)。あれは悲しい場面でした

>顔かたちが余り変わらない印象が強い女優です。

確かにそうですね
蟷螂の斧
2018/04/15 09:38
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>飛行機事故
多分そういうことでしょう。現在よりは安全性が全然低いですからね。
あるいは、あの一騎打ちでそのまま墜落したのかもしれない。僕が見たところでは相手の損傷のほうがひどかったですが。

>焼死(撲殺)
ペッパーが飛行停止中なのでアイデアを出した友人が自ら出た・・・という悲劇。

>顔かたち
フェイ・ダナウェイは、途中からメイクががらりと変わり別人の様でしたし、キャンディス・バーゲンも1970年代と90年代以降では大分違います。
彼女たちの後輩に当たるスーザン・サランドンはどの作品を観ても瞬時に解る、という具合。
オカピー
2018/04/15 21:00
>あの一騎打ちでそのまま墜落したのかもしれない。

しかし、相手はセーフ?
そこまで突っ込むのは野暮ですね・・・

>アイデアを出した友人が自ら出た・・・という悲劇。

そして友人を安楽死(?)させる悲劇

>途中からメイクががらりと変わり

オカピー教授。鋭いチェックです

>ジョージ・ロイ・ヒル監督

「時代から過ぎ去ったものや取り残されたもの、滅び去ったものの哀愁を優しい視線で描くのが特徴。」とウィキに書いてあります。
「スラップ・ショット」は盛りを過ぎたホッケー選手が主役
蟷螂の斧
2018/04/21 22:08
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>相手はセーフ?
僕の印象では、あの一騎打ちでダメージが大きかったのはドイツの英雄の方で、ペッパーはさほどでなかった感じ。僕はこの対決ではなく、別の遭難で亡くなったと思ってはいるのですが、この一騎打ちで死んでも良いかな、と。

>安楽死
そうせざるを得ない状況でしたね。

>ジョージ・ロイ・ヒル監督
「明日に向って撃て!」「スティング」等、内容面から言えばそういうことになりますかなあ。ユニークな着想な作品をスマートに処理する才人です。
「スラップ・ショット」は確か来月NHK−BSに出ます。ブルーレイでは持っていないので、保存版を作ります^^v
オカピー
2018/04/22 19:02
男には「自分はこう言う世界で生きたい!」と言う欲望がある・
ペッパーは空。オカピー教授は学問でしょうか?

>この一騎打ちで死んでも良いかな、と。

そうあって欲しいです。

>保存版を作ります^^v

ヒル監督も喜ぶでしょう

GW目前。クタクタです・・・
蟷螂の斧
2018/04/27 20:19
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>男には「自分はこう言う世界で生きたい!」と言う欲望がある
>オカピー教授は学問でしょうか?

学問と言うと大げさになってしまいますが、残る人生は本を読んでいれば良いと思っていますね。
相当読みましたが、まだまだ残っています。

>GW目前。クタクタです・・・
今週もお疲れさまでした。
当方は、近年発症し始めた花粉症に悩まされています。ついに臨界点を超えたようですTT
オカピー
2018/04/28 21:44
>相当読みましたが、まだまだ残っています。

司馬遼太郎や松本清張は如何でしょうか?

>近年発症し始めた花粉症に悩まされています

今年は凄いです

>「スラップ・ショット」

ラストもちょっと粋な終わり方です
蟷螂の斧
2018/05/05 13:15
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>司馬遼太郎や松本清張
僕が古典と見なしている1950年頃までの日本文学(江戸以前は別)はもう読むべきものが殆どなくなり、司馬遼太郎や松本清張がやっと視野に入ってきたというところ。寧ろこれから重要になってくる作家ですね。
 司馬氏は実際「竜馬がゆく」しか読んでいないので、「坂の上の雲」あたりは早めに読むことになるでしょう。
 清張は映画化されたような重要なものは読んでいますが、その周辺はまだまだ。芥川賞を受賞した「或る『小倉日記」伝」の選評で、推理作家として台頭するだろうと予言した坂口安吾の慧眼にびっくり。

>今年は凄いです
僕はまだ新米で、比較する資格がない(笑)のですが、依然鼻水は出るし、目もかゆい。今のところこれが二大症状ですね。

>ラストもちょっと粋な終わり方です
ヒルらしいですかね。再鑑賞して確かめてみましょう。
オカピー
2018/05/06 09:06

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「華麗なるヒコーキ野郎」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる