プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「ヘイル、シーザー!」

<<   作成日時 : 2018/04/01 09:38   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 3 / コメント 0

☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年アメリカ=イギリス=日本合作映画 監督イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
ネタバレあり

この邦題からターゲットは中年以上であることが解る。何となれば、最近学校では英語読みの“シーザー”ではなく本来の発音に近い“カエサル”のみで教えるからである。今の若者には、シェークスピアの「ジュリアス・シーザー」もバーナード・ショーの「シーザーとクレオパトラ」もピンと来ないのですな。

1950年代前半(多分1952年から53年くらい)のハリウッドをめぐる内幕ものの一編で、ジョエル・コーエンとイーサン・コーエンの脚本・監督コンビ作。

ある大手製作会社スタジオ。俳優らに起きる色々なゴタゴタを専門的に解決する重役ジョシュ・ブローリン(MGMの副社長エディ・マニックスがモデル、と言おうか、その名前で登場している)は、TVの台頭に対抗すべく企画したスペクタクル史劇「ハイル・シーザー」に主演するアル中男優ジョージ・クルーニーが誘拐され巨額の身代金を支払うが、やがて碌に演技もできない西部劇俳優オールデン・エアエンライクの活躍で、共産主義者の一味による犯行と判明する。
 その騒動に関わったミュージカル俳優のチャニング・テイタムがソ連の潜水艦に乗ってソ連に渡り、他の共産主義連中は逮捕される。

その他、当時の倫理観では認められない水中レビュー女優スカーレット・ヨハンソンの未婚の母事件をめぐる騒動があり、1950年代前半のハリウッドの様相を色々と諧謔的に再現しているので、当時の映画を少なからず見ている僕は大いに楽しんだ。

全編通して諧謔であって、潜水艦を巡る部分をシリアスと捉えるAllcinema某氏は見当違いをしている。そこを勘違いしているから、共産主義者とクルーニーを巡る一連の騒動を“お粗末すぎる”と評価してしまうのである。表面的にお粗末だから諧謔の意味が出、諧謔としてはそれほど“お粗末”でないということになる。お解りですかな。
 勿論これは当時吹き荒れ1990年以降色々な映画で扱われてきた赤狩りへの風刺であるが、実際には赤狩りの対象は共産主義者というより自由主義者と言われている。強烈な主張を持っている自由主義者・個人主義者が共産主義の名の下に排斥されたのが実際であると、僕はずっと思ってきた。チャップリンもヒューストンもマルクスなど知ったことではなかったであろう。本格的な共産主義者は映画人の中に殆ど存在しなかったのではないか? 僕の推測が正しければ、この映画の誘拐騒動が諧謔として一段と意味を成す。

クルーニーはヴィクター・マチュアがモデルのように見える一方、キリストを軸にしたお話は「ベン・ハー」(1959年)に近いが、MGMなので1953年の「ジュリアス・シーザー」がベース。テイタムはジーン・ケリーもどきで、映画は「踊る大紐育」に似ているが、時代から言えば「雨に唄えば」がモデルか。スカーレットはエスター・ウィリアムズもどきで、作品は彼女が1952年に主演した「百萬弗の人魚」がモデルだろう。しかし、女優のキャラクターは人気上昇中のマリリン・モンローに近い。
 監督ローレンス・ローレンツ(レイフ・ファインズ)の名前は、1910年代サイレント中期に大活躍した美人女優フローレンス・ローレンス(今やこの女優を知っている人は、映画マニアでも少ないだろう)のもじりみたい。

といった具合に映画ファンならではのお楽しみは絶大であるが、諧謔の奥に何があるのか解りにくく、映画として大いに褒めたいという感じにはならない。IT絡みの現在の映画界における閉塞感をTV台頭時代の映画界にダブらせたものか?

女優が未婚の母という事実をもみけさなければならない当時の道徳観を考えると、この半世紀少しでどれだけ世界が変わったか解る。人間の変化は一見ゆっくりだが、加速度的に進化する。昨今のサウジアラビアの変化を見ても、イスラムの男尊女卑(彼らは女性庇護を大義名分にしているが、男性側のおためごかし)も2050年までにほぼなくなるのではないか。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
映画万歳!〜『ヘイル、シーザー!』
 HAIL, CAESAR ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2018/04/01 23:21
「ヘイル、シーザー!」
もう今週はバタバタでぐちゃぐちゃで疲れ果ててて、だからと言って来週の事も見えなくて、もうどーでもいーから週末位はノー残業(死語)で何もかも忘れてさくっと映画でも観てやる!明日の事は明日考えるんだもんね!などという気持ちになった金曜日の夜などにはちょうどいい作品。つまり、可もなく不可もなく、という娯楽作品である。しかし、しかーし!本当は深〜いのかもしれない。当時のアメリカでは(って正確にいつの時代設定だかは知らないけど)赤狩りの嵐が吹き荒れ、その影響がハリウッドにまで及んでいる頃だった筈だから。「... ...続きを見る
ここなつ映画レビュー
2018/04/02 17:56
ヘイル、シーザー!
1950年代のハリウッド。 超大作映画「ヘイル、シーザー!」の撮影中、世界的大スターで主演俳優のウィットロックが誘拐されてしまう。 事件解決を任されたのは、スタジオのあらゆるトラブルを解決する“何でも屋”エディ・マニックス。 彼は密かに身代金の準備をするが、スクープ屋の耳に入ったのか、既に事件は周囲に知られていた。 そんな中、ウィットロックは海辺のとある“家”で目を覚ます…。 ミステリー。 ...続きを見る
象のロケット
2018/04/14 22:57

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「ヘイル、シーザー!」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる