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zoom RSS 映画評「追憶」(2017年)

<<   作成日時 : 2018/03/31 15:00   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・降旗康男
ネタバレあり

ありふれた一般名詞だから「追憶」という題名(洋画では邦題)の映画は幾つもあるが、一般的に思い出す人が多いのはロバート・レッドフォードとバーブラ・ストライサンドが共演した1973年のアメリカ映画だろう。本作は勿論それとは全く関係ないドラマで、大ベテラン降旗康男が監督なので観ることにした。

25年前の富山。喫茶店を経営する安藤サクラは、風俗嬢時代に訳あり関係だったヤクザが現れて困る。昵懇になった男性客の吉岡秀隆と、親に捨てられるなどして彼女が引き取っている状態の三人の少年が男をやっつけてしまおうと図り、少年の一人が殴殺に失敗した後別の一人が暴れる男を刺殺する。ナイフを抜いて血を浴びたサクラが責任を一手に引き受け、少年たちはばらばらになる。
 現在。刑事となった三人組の言い出しっぺ岡田准一が、東京から富山を訪れたその一人・柄本佑と出会い、土建屋として成功しているもう一人・小栗旬に金の無心をするのだと言われる。小栗の妻はもう少しで臨月である。
 しかし、他日、小栗にお金を融通してもらったに違いない柄本が死体で発見され、刑事としての岡田は昔の仲間が犯人であるという疑いを抱くも、柄本に会ったことを黙ったまま捜査陣に加わるが、やがてそれが上司にばれて捜査陣から外される。

という刑事ミステリー仕立ての内容で、新しい事件が昔の事件にかかわった人々のその後を焙り出し、一定の滋味がある。「天城越え」のような構成と内容だから、松本清張の香りも少し漂ってくるが、彼の小説あるいはその映画化に共通して見られる厳しさに欠ける。着想よろしく彼らの人生から重さは感じられるものの、脚本の詰めが甘く、物足りない。

小栗が岡田を避けてまでも守りたかったものが判るくだり、というよりそのもの自体は表面的にはなかなか感銘的である。が、その前段たる、真犯人が判るまでの一連の流れがミステリーとして手抜きに過ぎる。上映時間が短くその過程の見応えがないので、親子の愛憎やその有無を通奏低音にして進められてきた人生行路の最終的な段階での感銘が上っ面に終わってしまうのである。

やや細かいことだが、詰めの甘さの一例。岡田刑事が「会えなかった懐かしい人に会えて嬉しかった」と言ったと伝えられる柄本の言葉を聞き、その“懐かしい人”に小栗を入れたがるのはおかしい。彼は生前の柄本から彼が何回か小栗に借金を申し込んだ過去を聞いているのだから。
 登場人物が馬鹿でも良いが、主人公たる刑事をそんな馬鹿な設定にすると、脚本家が馬鹿に見える。原案と脚本を、プロデューサー上がりの青島武と共同で担当した瀧本智行は才能ありと思ってきたので、もっとがっちりしたものを作ってもらいたい。降旗監督の見せ方は昔ほど気取りがなくなった。

清張映画のスタッフ・キャストから選んでみる幻想映画館。刑事に加藤剛、被害者に緒形拳、土木業者に山崎努。監督は野村芳太郎、てなところで如何?

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