プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「映画 聲の形」

<<   作成日時 : 2018/03/16 08:37   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 1 / コメント 2

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年日本映画 監督・山田尚子
ネタバレあり

これまたクイズをやって原作を知り、しかもWOWOWのパンフレットで0.3秒くらい紹介文を読んだところアニメとしては珍しい素材と思って観ることにした。

有川浩の小説を映画化した実写映画「レインツリーの国」と共通するところもあるが、こちらのアングルのほうが断然興味深い。原作は大今良時(知らぬ)で、監督は山田尚子(名前は聞いたことがある)。

小学校6年生の活発な少年・石田将也(声:松岡美憂、5年後:入野自由)のクラスに、先天的聴覚障害のある西野硝子(声:早見沙織)が転校してくる。温度差はあるものの最初のうちノートを使った会話交換も上手く行くが、将也は彼女に虐めを始める。他の生徒も五十歩百歩なのだが、担当教師が一連補聴器破壊事件の犯人を将也と指摘した為虐めの責任が全て彼に負わされ、やがて彼女が転校すると、今度は彼が疎外されることになる。そして、彼が「自分がしたことは自分に跳ね返る」と罪悪感に苦しむうちに5年が経つ。
 罪を精算する為に自殺を遂げる前に、硝子に会おうと彼女が通う手話サークル(?)に行くが、少年実は彼女の妹・結弦(悠木碧)に追い払われる。何回も繰り返すうちに結弦と親しくなり、同病相憐れむ友人もできる。

といった形で種々のエピソードが綴られていくお話の主題は、虐めの加害者少年が自分に跳ね返ってきた罪の意識からの再生である。被害者たるヒロインには自分が自分である故に周囲を破壊してしまったという罪の意識がある。この罪の二重奏に影響される、彼らの友人たちの複雑隠微な心理がややこしいまでにスパイラルを巻き起こす様子は、誰も本質的には悪くないから、全くやるせない気持ちに陥る。しかし、実写なら嫌味になりかねない罪の意識の絡み合いが、アニメの可愛らしい造型故に、重苦しくなりすぎないのが良い。

僕は、嘘と虐めと差別が大嫌いである。が、虐めをする人の中には内面に問題を抱える人もあるだろうし、そういう人には人間的に理解してやらなければならない。主人公がいじめっ子だからといって感情移入できないとしたら浅はかだろう。

本作で大事なのは彼が再生していくこと。そこに込められた心(point)は、虐めの問題ではなく、人間関係を左右するコミュニケーション(ディスコミュニケーション)の問題である。その今日的で微妙なところをここまで追求したアニメを観るのは初めて。星は抑え気味にしたが、秀作と言うべし。

原作者が旧字体を使った理由は何だろう?

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
『聲の形』('16初鑑賞89・劇場)
☆☆☆☆− (10段階評価で 8) 9月22日(木・祝) OSシネマズ神戸ハーバーランド スクリーン9にて 12:20の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2018/03/19 14:09

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
 小説でも漫画でも、いわゆる原作至上主義に犯された人々が、やれ、ストーリーを端折ったとか、好きなキャラクターやエピソードが映画版に出てこないなどの理由にもならない理由で批判するのは本当に見苦しいですね・・。
この作品でも、自分が虐めをした相手に恋愛感情を持つなどありえない、といった幼稚な意見も・・。
レイプ犯が、被害者の女性を心から好きになり、罪を清算後に結婚した、などの事例も世界ではそれほど珍しくもないことを思えば、人間の心理には普通にあることと気づくのですがね・・。
ほとんどのレビューが、虐めを取り上げていて、それに内包された肝心の主人公の再生に触れていないのも問題・・読解力を要する記述式の問題に慣れていないせいでしょう。

 「映画 聲の形」は、ぼくの2016年の実写映画を含めた鑑賞作品のベスト10に入っていて、プロフェッサー恒例の年間ベスト10 2016年版にもコメントで触れています。
このアニメは死が近くにある、ある意味では「彼岸」の世界なんでしょうね。
一歩間違えれば、きわどい作品です。
主人公少年と硝子が死ぬための物語に半分なっていて、どうすることもできない流れがある。
ここまで生と死を繊細に描き、踏み込んだアニメは、プロフェッサー同様、ぼくも記憶にありません・・。

良い原作を、萌えキャラで若い人の誉れ高い旧虫プロ出身者が立ち上げた京都アニメーションが製作し、この女性監督が映画化した。
さらに、何か余白のような、物語に直接関係しない何かがある気がしてなりません。
アニメーションが新しい時代に突入した感さえあります。プロフェッサーの評価は、しごく妥当であります。
浅野佑都
2018/03/19 12:22
浅野佑都さん、こちらにもコメント有難うございます。

>原作至上主義
映画を評するところで、原作を持ちだして単純に比較して批判するのは下の下。原作について語るところでいくらでも悪口を言ってください、というのが僕のスタンスです。

>自分が虐めをした相手に恋愛感情を持つなどありえない
単純に比べられませんが、ストックホルム症候群というケースもあります。彼らはそういう人間心理が解らないのでしょうね。
それに照らせば、ヒロインは生きる為に、虐めた相手が好きになったと言えないこともない。罪悪感を抱きやすいヒロインのそばには常に死が横たわっていたのでしょう。ちょっとしたことで生を構成するブロックが外れ、生が瓦解する可能性があった・・・

アニメは実写よりぐっと可能性があるので、良い作り手にかかれば、寧ろ実写をしのぎやすい。昔の人は漫画・アニメは子供のものという認識が強いですが、「水戸黄門」などの時代劇を見ていると、TVアニメの方が余程鑑賞に堪える内容を持っている、とよく思ったものです。いわんや、劇場用アニメをや。
オカピー
2018/03/19 21:56

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「映画 聲の形」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる