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zoom RSS 映画評「The NET 網に囚われた男」

<<   作成日時 : 2018/03/14 08:25   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2016年韓国映画 監督キム・ギドク
ネタバレあり

キム・ギドクらしからぬストレートなドラマである。

韓国との国境に程近い村で漁師をしている北朝鮮のナム・チョル(リュ・スンボム)が、モーターボートに絡んだ網を切ろうとしてエンジンを回し、壊してしまう。【角を矯めて牛を殺す】というヤツである。
 ボートは流されて海に敷かれた国境の目印を越える。北朝鮮の監視所は勿論発砲するが、国境を超えるとそれもできない。この辺を律儀にしているのは、先日のニュースそのまま。
 韓国に入れば入ったで、ナム氏、韓国の当局に詰問される。警護の若者オ・ジヌ(イ・ウォングン)は状況からスパイであることを否定するナム氏を信用し優しく接するが、取調官(キム・ヨンミン)は拷問寸前のところまで行く。
 紆余曲折の後、結局ナム氏は妻子のいる北へ戻るという希望通りに帰国するが、歓迎は表面上だけで、今度は北朝鮮の保衛部の詰問が待っている。

という物語は、形而上的な命題をテーマに映画を多数作ってきたキム・ギドクが作ったとは信じられぬくらい正攻法で解りやすい。彼本来のアート性を求めるムキには不満かもしれないが、これはこれでかなり満足できる出来栄えと思う。

韓国と北朝鮮の取調官は全く同じである。その徹底した相似により、資本主義国家も共産主義(を標榜する独裁)国家も、国家と個人の関係においては何ら違いがないとギドクは皮肉を投げつける。庶民にとって国家権力はかくも不合理なものだと言うのである。籠池夫妻の長すぎる勾留を見ると、日本の当局も余り他国のことは言えない。

ナム氏は、自由で豊かであるはずの韓国で売春をする一人の女性を観て、資本主義に疑問を覚える。祖国が良いと本音で思っているわけではないが、自分が「不幸である」と決めつける南側の人間の言うことも間違っていると思う。彼は妻子との最低限の生活に満足し幸福なのである。人間の幸福感=資産÷欲望と何かの本に書いてあった。ナム氏の欲は最小限であるから北朝鮮の貧しさにおいても何の不幸も感じない。北朝鮮の取調官も彼の欲の小ささを理解しないから、くだらない嫌味を言う。
 かくして、ギドクは、人の幸福は(経済を判断材料とする範囲において)国家の体制に関係ないとも言うのである。

非常に解りやすいが、これもまた哲学の映画と言って良い。

近くに大きな物質欲を持つ人がいる。僕は常々“足るを知る”人は幸福だと言っている。だから、ナム氏のことがよく解る。

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