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zoom RSS 映画評「幸せなひとりぼっち」

<<   作成日時 : 2018/02/12 10:27   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年スウェーデン映画 監督ハンネス・ホルム
ネタバレあり

老骨にはなかなか胸にしみるスウェーデンの佳作である。

きちんと整理された地区。長年連れ添った細君ソーニャ(イーダ・エングヴォル)に先立たれた59歳オーヴェ(ロルフ・ラッスゴード)は、長年奉仕してきた会社からも首を言い渡されて絶望、首吊り自殺を試みるが、隣の引っ越し騒動に水を差される。何度試みてもその度に邪魔が入る。それは彼が元地区会長で、けじめを守らないことが大嫌いで、口を挟まないではいられないからである。いつも面白くなさそうな顔をして他人と距離があるようで、つい口を挟み、頼まれた仕事はまず引き受ける。隣人たちもそれを知っていて平気で頼み事をする。案外気の置けない仲なのだ。
 越してきたばかりのペルシャ人妻パルヴァネ(バハール・パルス)もそんな彼に躊躇せずに接近、夫が入院中の病院に連れて行ってもらったり、自動車の運転を教えてもらう。二人の娘も全く怖がらずに親しむ。
 自殺を試みるごとに、性根時代から妻と知り合い結ばれた若き日(フィリップ・ベルイ)やその後の半生を思い出し、益々親しさを増したパルヴァネに、妻が流産し下半身不随になった経緯を語る。
 自殺願望も半ば遠ざかった頃心肥大に倒れても彼はまだ死なない。パルヴァネに「死ぬのが下手ね」とからかわれる始末。しかし、ある冬の朝、遂に妻が待つ天国へ旅立つ。

僕は主人公と同じ年齢層であるが、どう見てもあんなには老けてはいない。それはともかく、これは日本の長屋ものに通ずる味わいがありはしないか。長屋ものは「人情紙風船」(1937年)でも首吊り自殺が絡み、近所の人々による様々な人情が交錯する。正に本作のテイストである。

恐らく若い人の発信であろう、だらだらしているという意見を読んだ。違うのである。同じような繰り返し、特に自殺しようと試みる度に邪魔される繰り返しが可笑し味を生み、滋味を醸成するのである。解る人には解る面白さなのである。少しもだらだらしていない。

現代の感覚では爺さんというにはまだ若いのだが、主人公は生真面目で悪いことを一切してこなかった人物なので早く老け込んでしまった感じがする。しかるに、移民やゲイには何の偏見もない。嫌いなのは秩序とまでは行かない単純な規則を守らないことである。古い秩序観から言えば、移民もLGBTもけしからんことになるのだろうが、そのような本人にどうしようもないことに彼は文句を言わない。実に見上げた人物である。僕は、典型的な日本人の例に洩れず他人にあれほど文句を言えないものの、性格的に近そうなので、親しみを覚える。

スウェーデンが抱える幾つかの問題や急激に変わりつつある価値観をさりげなく織り込んで反映させ、かつ、その社会の理想像を見せようとした作品であると思う。

今の日本人は、不幸と思っている人が多いのか、「幸せ」という言葉がタイトルに氾濫している。

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『幸せなひとりぼっち』('17初鑑賞57・劇場)
☆☆☆☆☆ (10段階評価で 10) 5月31日(水) パルシネマしんこうえん(名画座)にて鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2018/02/12 14:36

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