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zoom RSS 映画評「リリーのすべて」

<<   作成日時 : 2018/02/11 10:16   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年イギリス映画 監督トム・フーパー
ネタバレあり

本格的な性同一性障害を扱った実話である。その中で性転換を希望しないものをトランスジェンダーという定義が正しいとするなら、本作の最後に出てくる「トランスジェンダーを鼓舞した」という説明は間違いということになるが、違う定義を見ることもあり、よく解らない。

1926年デンマーク、風景画家アイナー・ヴェイナー(エディー・レッドメイン)は、人物像画家の妻ゲルダ(アリシア・ヴィカンダー)に頼まれ、女性モデルの代わりを務めたことを契機に、その内部に潜在していた女性リリーとしての心を呼び覚まされ、次第に女装している時間が増え、やがて体が男性であることに苦痛を覚えて、遂に手術に踏み出す。一回目の男性器除去の後、二度目の手術である女性器造成手術の際に合併症を起こして亡くなる。

年代(結婚した時期、パリへの移転)などは実際とかなり違うが、お話の流れは実際とほぼ同じである。

自民党議員で「LGBTは自然に反する」と言った人がいるらしいが、カタツムリのように両性具有の生物や、クマノミのように一生の間に性を変える生物は結構あるので、自然科学的にも間違っている。まして人間は考える葦であるから、本能だけの動物と違ってこういう体と心(と言うが実際には頭)が一致せずとも何ら不思議ではない。
 宗教原理主義者に多いのは“肉体に合わない頭がおかしい”という考え方だが、性同一性障害者にしてみれば“頭に肉体が合わない”のである。どちらにしても神の間違いだろうに、原理主義者は神に間違いはないので後者はありえず、前者は修正できると考える。
 本作にはそうした差別的な人々は殆ど出てこない一方、90年前に“性同一性障害”の概念をきちんと認めた医師(セバスチャン・コッホ)の革新性が、本作の中でもなかなか強い印象を残す。

それ以上に印象的なのは細君の対応である。映画の中では彼が彼女に画家としての成功をもたらすわけだが、それにより夫がその心の中の女性たるリリーに奪われ、孤独と苦痛に苛まれる辺り心理ドラマ的に大いなる見せ場を構成する。そのジレンマに打ち勝っていく彼女の心理に至ると、ドラマというより心理学的に研究が必要となる難しさがあって、映画も回答を出していないように見える。人間的に親しい他人の苦しみを見ていられなったといったこと、広義の”愛”の発露ということだろう。

事実上の主役であるそんな彼女をアリシア・ヴィカンダーが好演している。性同一性障害の出現の仕方も人によって違うのだろうが、ヴェイナー(デンマーク語ではヴィーグナー)氏転じてリリー・エルベの場合、当初においては二重人格的に見える。こういうケースを映画で見るのは初めてで、興味深い。レッドメインも力演。

リリー・エルベが世界最初の性転換手術を受けた人だそうであるが、40年以上前、性転換をした人の映画を初めて観た。多分日本劇場未公開だったと思う。有名な「マイラ」ではない。

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これほどの愛〜『リリーのすべて』
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