プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「鏡の中にある如く」

<<   作成日時 : 2018/02/01 08:46   >>

ナイス ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 2

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1961年スウェーデン映画 監督イングマル・ベルイマン
ネタバレあり

一時期イングマル・ベルイマンの作品が衛星放送によく出て大半を録画して保存してあるが、本作はNHKやWOWOW、民放には出ていないと思う。そんな予感があったのか、30年以上前に高いビデオを買った。15000円くらいしたが、画質が甚だ良くない。内容が解るだけである。ベルイマンの作品の鑑賞においては画面の美しさも重要なので残念だが、仕方がない。

作家グンナール・ビョルンストランドが、医師マックス・フォン・シドウと結婚している娘ハリエット・アンデルソン、思春期後期の息子ラッシュパースコードを連れて別荘に来ている。ハリエットは精神分裂気味で神を見出したりもするが、父親はそれさえも作品の素材にしようとしている。
 それを記した日記を病気の為か異常な聴力を発揮して眠れない彼女が盗み見し、そのショックで発作を起こす。その間に父親との関係がいま一つうまく行っていない息子が姉と関係を持ってしまう。
 心身耗弱した彼女がヘリコプターで病院へ運ばれた後、父親が「愛は神の存在を証明するものか、若しくは神そのものだ」と言い、それを聞いた息子は父のその言葉に救われる気持ちを抱く。

【神の沈黙】三部作の第一作だが、僕は最後の「沈黙」(1963年)が一番ピンと来る。一番地味な「冬の光」より本作の方が僕には解りにくい。ベルイマンの作品は、キリスト教文化圏のキリスト教徒でないと直観できないところが多く、本作など正にその典型ではないかという気がする。

神の声を聞くなどする人々は時に精神病扱いされたり、場合によって魔女の名目で処刑されたりしてきたわけだが、本作のヒロインの場合、(論理の順番として)精神の病気だから神を見出したのかもしれない。科学的には後者だけが真理であり、見方によって、それに即するベルイマンの神への冷めた感情を感じ取れるところがある。
 その意味で、作家に徹して冷淡至極だった父親が「愛は神の存在を証明するものか云々」と発言することは、(息子は勿論)観客にとって救いになり解りやすくなる同時に、曖昧な印象をもたらす。聞くところによると、ベルイマン本人もこの最後の場面は余分だったと認めているという。

ベルイマンは、随所に登場人物に愛(性)や死に関連する発言をさせているが、彼にあってこれらは常に神の問題に絡む。僕は、本作に限らず、少なからぬ作品を見て、この類稀なる巨匠は神の存在を疑ってもその存在を否定しきったことはないと感じているのだが。

今のところ、本作をきちんと分析できるだけの理解に達していないので、一般論に逃げることにした。悪しからず。僕の趣味として画面分析などをもっとしてみたいのだが、僕の持っているソフトの画質ではそんな気分が起こらない。もう少し綺麗な画質のものが手に入ったら再挑戦しましょう。

ベルイマンはやはり祖国の偉大な劇作家ストリンドベリに非常に近い。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
ナイス
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
今でこそkindleなんぞで読む機会を持って
おりますが手軽なそれより単行本への思慕は
捨てがたく以前「オデッサファイル」の古本をば
購入した折、ページがおおよそチョコレート色で
やっと読めるという大古書にぶちあたりましたが、
まず映像ありきの映画で劣化ビデオは辛いことこの上ない。
30年前でしたらそのくらいの価格したんですね。

とっくに退会しましたが有料チャンネルで本作は
観ました。余り印象に残っていないんですよね。

>存在を疑ってもその存在を否定しきったことはないと

まさにその通り、と思います。
その煩悶が根底にあって優れた映像表現と共に
深淵かつ生々しい人間観察のベルイマン世界なのですね。
vivajiji
2018/02/01 13:50
vivajijiさん、こんにちは。

>ページがおおよそチョコレート色で

図書館で、とんでもなく古い本を書庫から出してきてもらうと、そんなことがあります。そうした本は大概、塩抜けして異様に軽く、かつもろく、ちょっとしたことで破れてしまう。いくら誰も読まないだろうとは言え、借りたものですから、ヒヤヒヤするなんてことも。

>まず映像ありきの映画で劣化ビデオは辛いことこの上ない。

そうなんです。
ベルイマンの映画は、シャープできちんとハイキーの映像で観ないと、殆ど意味をなしません。

>まさにその通り

有難うございます。
姐さんはクリスチャンだから僕らよりはベルイマンが解ると思いますが、キリスト教との関連は別にしても、ベルイマンの人間観観察・観照の素晴らしさ。

オカピー
2018/02/01 19:09

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「鏡の中にある如く」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる