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zoom RSS 映画評「ブルーに生まれついて」

<<   作成日時 : 2018/01/08 10:14   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2015年カナダ=イギリス合作映画 監督ロバート・バドロー
ネタバレあり

ここ数年ポピュラー音楽家の伝記映画が続けざまに紹介されているが、内容と作り方に共通性が見られる。
 内容については麻薬がらみである。アメリカのポピュラー・ミュージシャンで麻薬に手を出していない人はいないのではないかと思われるほど当たり前のように映画の中で扱われている。いずれも故人とは言え、そうしたマイナス面を避けないで、というより半ば主題にして作る辺りいかにも欧米映画である。
 作り方については、伴侶たる女性との関係に軸が置かれている。

さて、今回のチェット・ベイカーについては、カセット・テープに数曲録音してあるのみ。名前以外は殆ど知らない。白人トランぺッターであることは知っていたが、歌も歌っていたとは知らなんだ。ルイ・アームストロングのケースもあるものの、モダン・ジャズ系では珍しいのではないか。

始まりは1966年。麻薬でぼろぼろになりかけていたベイカー(イーサン・ホーク)自身が演ずる自伝映画の撮影により、彼がチャーリー・パーカーに認められジャズ・クラブ“バードランドで人気を集めた頃が再現される。現在と過去が一緒に描ける一石二鳥の、なかなか上手い手である
 妻役で共演中の黒人女優ジェーン・エレイン(カーメン・イジョゴー)と親しくなるが、麻薬のディーラーに襲われて顔面関係に重傷を負って暫し本業が出来なくなる。真面目に仕事をしろと催促するうるさい監察官の目もさることながら、妻ともみなす彼女の為に懸命に脱麻薬を目指し、麻薬の代替となる鎮痛剤メタドンで凌ぐうちにトランぺッターとしての再起もなり、“バードランド”で演奏することになる。しかし、ここで緊張の余りヘロインを使い、演奏の様子でそれを察知したジェーンは現場を去っていく。

幕切れの部分は70年代前半ではないかと思われるが、そうだとすると事実と違う部分がある。バードランドは1965年に閉店し、1986年に同名のクラブが別の場所でオープンしているからである。映画として全く問題でないものの、ジャズにうるさい人なら文句の一つくらいは言うだろう。

それはともかく、恋人との関係を軸に据えたドラマは、ジェーンが彼との縁を切るこの場面で鮮やかに、殆ど感情を断ち切るような形で、終了する。実話につき、エンドロール前に簡単にその後の活動を綴り、そうした厳しいタッチを半ば台無しにしてしまうのが惜しいが、また最近の音楽家伝記映画として型通りと言いながらも、僕が観た中では一番がっちりと作られている。

麻薬依存を批判するのは簡単だが、芸術家には僕ら凡人の解らぬ苦しみがある。まして欧米特にアメリカでは麻薬が日本に比べて簡単に手に入る。それを避けるのは難しいだろう。日本の基準で批判してはなるまい。

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「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」(第28回東京国際映画祭) (日本公開タイトル「ブルーに生まれついて…
コンペティション作品。この第28回東京国際映画祭のコンペティション部門では無冠であった。上映プログラムが発表された時から、大変期待していた作品である。実話物、ジャズ界の伝説、何と言ってもイーサン・ホーク主演。暗いブラックとブルーを基調にしたポスターは、イーサン・ホークがペットを吹くアップのワンショットであり、大人の作品を予感させる。…平たく言えば、才能のあるダメ男の話なのである。もちろんそう言ってしまえば身も蓋も無いのだが。そしてこの「才能のあるダメ男」をさせたら、イーサン・ホークの右に出る者は... ...続きを見る
ここなつ映画レビュー
2018/01/09 13:36
ブルーに生まれついて
1950年代に一世を風靡した白人ジャズ・トランペット奏者チェット・ベイカー。 彼の演奏は多くのファンを熱狂させていた。 しかしドラッグ絡みのトラブルを度々起こし、スポットライトから遠ざかってしまう。 麻薬の売人から暴行を受け、トランペット奏者としては致命的なケガを負い、どん底の毎日を送るチェットは、女優のジェーンと出会う…。 実話から生まれた音楽ヒューマンドラマ。 ...続きを見る
象のロケット
2018/01/10 16:45

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
本作で彼女は去ってしまいましたが
実際のチェットは死ぬまで女性には
不自由しなかったそうで。
いつの世も、ダメ男に惹かれる女あり、ってね(^^)
成り切ってはいましたが、
イーサンのチェットはミスキャスト。
歌うシーンなど酷くて目伏せましたです。
エピソードがなぞられているだけの印象。
と、新年から辛口感想コメントでございますが
本年も相変わりませずよろしくお願い致します。




vivajiji
2018/01/08 13:52
vivajijiさん

今年もよろしくお願いいたします。

>死ぬまで女性には
かの細君同様の女性は、架空の人物というのが、本作を観た人のおおよその理解ですね。

>ミスキャスト
やせ形で外見的には比較的近い感じはしましたが。

昨年半ばからハンク・ウィリアムズ、ジェームズ・ブラウン、マイルス・デーヴィス、そしてこのチェット・ベイカーとポピュラー音楽家の伝記作品が続いています。
どれもこれも同じような作り方、内容ですが、本作が一番映画になっていました。どれも佳作とまで行かず、少し勉強になった程度止まり。
オカピー
2018/01/08 21:24

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