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zoom RSS 映画評「ヒトラーの忘れもの」

<<   作成日時 : 2018/01/25 09:11   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2015年デンマーク=ドイツ合作映画 監督マーチン・サントフリート
ネタバレあり

戦争秘話とまでは行かないにしても恐らく余り世界に知られていない終戦直後のお話である。

ナチス・ドイツが敗れ去った直後のデンマーク、海岸線には数百万の地雷が仕掛けられていた。一つの海岸沿いを十代後半の少年兵14名(当初は11名)が終了後帰国させるという約束で担当することになる。デンマークのラスムスン軍曹(ローランド・ムーラー)は祖国を蹂躙したドイツ人が憎くてたまらず、相手が少年であっても非常に厳しく接する。近所の若い母親(ローラン・ブロ)もその点に変わりはない。
 しかし、軍曹も人の子、手を吹き飛ばされた少年兵が呻きながら母親を呼ぶのに心密かに感情を揺さぶられ、次第に健気な少年兵たちに同情を覚えていく。彼に子供がいれば自分の息子くらいの年齢である以上、当然であろう。
 が、数え間違いで一つ残っていた地雷を踏んづけた彼の愛犬が爆死、元も木阿弥になってしまう。それでも「帰国させる」という約束を守らない軍部に憤懣やるかたない軍曹は、次の作業のため呼び戻された生き残りの四人を国境沿いに送り、逃がしてやるのである。

こう見えて僕は心優しい人間だから、かかるヒューマンな幕切れには胸を打たれる。しかし、それも前段で彼らへの同情と当初の憎悪との間で揺れる軍曹の心理を抑えたタッチで描いていればこそ湧き上がる温かい気持ちである。最初から彼が少年兵に対して専ら好意的であれば生ぬるい作品になったであろうし、最初の犠牲者が出た時のややもすると無感動に見える軍曹の様子があるのでその葛藤が後段において強く浮かび上がるという効果も生まれる。若い母親が地雷原に入ってしまった幼い娘を少年兵たちに助けてもらって変心(その後が出発する時親子で見送っている)するのが軍曹の心理と共鳴するのも良い。遍く“誰かの子供である少年兵”というアングルで話が進められているような気がする。

風景の見せ方が叙情的である一方、人物を捉えるタッチはなかなか厳しく、ネタの新味を含めて、この作品を大いに買う。"Land of Mine"という英語タイトルは、“我が国”と“地雷原(地雷のある土地)”の掛詞で、優れてかつ辛辣である。

地雷を本格的に意識したのはカンボジアであるが、戦後のデンマークにもこんなにありましたか。

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「地雷と少年兵」第28回東京国際映画祭 (日本公開タイトル「ヒトラーの忘れもの」)
コンペティション作品。軍曹役のローラン・モラーと少年兵役ルイス・ホフマンとが最優秀主演男優賞を受賞。最優秀主演男優賞…。そうきたか!という感じだ。私はこの作品はグランプリでいいと思っている。と、なんか急に偉そうだけれど、偉そうな意図は全くなくて…何故この作品がグランプリに相応しいと思ったかというと、内容の衝撃度や展開のドラマ性ももちろんなのだが、マーチン・ピータ・サンフリト監督自らがQ&Aで語っていた、「デンマークにも暗黒の部分がある。それを描きたかった。」という気持ちに大変感銘を受けたからだ。... ...続きを見る
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『ヒトラーの忘れもの』('17初鑑賞56・劇場)
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