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zoom RSS 映画評「人間の値打ち」

<<   作成日時 : 2018/01/23 10:43   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2013年イタリア=フランス合作映画 監督パオロ・ヴィルズィ
ネタバレあり

洋の東西を問わず、インテリが楽しめそうなドラマである。

クリスマス・イヴに高校の発表パーティーが行われ、一人の給仕係が早く退出し、交通事故に遭う。というのを序章にしていよいよ4部構成の本番である。

不動産業ファブリツィオ・ベンティヴォリオが、高校生の娘マティルデ・ジョリをボーイフレンドのグリエリモ・ピネッリの家に連れて行き、その父親のファンド王ファブリツィオ・ジフーニと懇意になると、銀行に融資をしてもらって70万ユーロという大金でファンドを購入する。そんな折り後妻で心療内科医ヴァレリア・ゴリノの妊娠が判明するが、やがてクリスマスにファンドが大不調に陥り、これを嘆いていると、警察が娘を訪れる。TVではひき逃げ事故を報道している。
 ここで章が変わって、今度の主人公はファンド王の妻ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。彼女は古びた劇場再建にソフトの面で関わろうとするが、ハード担当の夫はマンションにしようと計画を変更したのでがっくり、秋風を送ってくる美術監督によろめいてしまうが、これを息子に見られる。クリスマスにその息子はひき逃げ事故の加害者として浮上する。
 続いては、そのガールフレンドたるマティルデ嬢の行状記で、二人の仲は事実上終わり、継母の患者で、麻薬事件で知られる少年ジョヴァンニ・アンサルドと心を通わせていく。彼女は少年が父親代わりの叔父の代わりに罪を着たことを知るが、やがてクリスマス・イヴに泥酔した元BFピネッリを父の車で家に送り届ける時に少年が彼の車を運転して冒頭の男をはねてしまう。
 最終章。少年は前科がある為重罪になるのを畏れるが、不動産屋は娘のメールから真犯人を知り、ファンド王の妻に交換条件としてファンドの全額補償プラスαを要求する。かくして犯行の知られた少年は自殺未遂を起こした後、懸念したほど重くはない一年余りの刑を言い渡される。

高校時代であったと思うが、何かの授業で交通事故の死亡保険金は亡くなった人の稼ぐ金額と考えられる出費とを相殺してはじき出されると聞いたが、正にその内容がエンドロール前にテロップで流される。

交通事故問題に関わった三人の男女の行状を同じ時系列で三度も繰り返して別のアングルから見せるという時間巻き戻し手法は、2000年代に流行したスタイルで、特にアメリカでも日本でも大評判になった「クラッシュ」(2005年)を想起させる。僕は同作の見せ方を当時世評ほど買わなかったし、ましてこうした見せ方についてはもはや新味がなく、くどい感じすら覚えるので、全体として余り評価できない。

しかし、話はそう単純ではない。映画として「クラッシュ」に及ばないものの、同作になかった発想がある。この時間巻き戻し手法を一種のミスリードとして使う発想、これなり。本作は本筋が終わった時「(この人間模様の主役に扱われませんでしたが)一人の男が亡くなり、その男の保険支払額はこれこれ、即ちそれが人の値段なのです」とテロップで示し、ドラマに没入していた観客をアッと言わせるのである。
 そこには人の営為を風刺する視座があり、それを資本主義批判論調で展開する。その資本主義批判も新聞の社会面的な切り口ではなく、経済哲学の角度から見せているのがなかなか興味深い。だから、一部の人が仰る“資本主義の安易な批判(例えば経済格差など)映画”ではなく、インテリが喜ぶ作品と僕は言うのである。

最後のテロップは逆説だが、文字通りに理解して罵詈雑言を放つ人がいましたぞ。

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