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zoom RSS 映画評「大いなる西部」

<<   作成日時 : 2018/01/02 09:45   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1958年アメリカ映画 監督ウィリアム・ワイラー
ネタバレあり

西部劇としては166分という長い作品だが、ウィリアム・ワイラーが実力を遺憾なく発揮していてご機嫌、多分4回目の鑑賞である。

東部の船長グレゴリー・ペックが、東部で知り合った娘キャロル・ベイカーと結婚する為に、彼女と父親チャールズ・ビッグフォードが住む大牧場にやって来る。彼は降り立った駅で帽子を笑われ、一家の牧童頭チャールトン・ヘストンから少々小馬鹿にされたような扱いを受ける。
 東部と西部の対立の構図が早くも仄かに浮かび上がる形だが、それがもっと具体的に現れるのは、キャロルと牧場に向かう途中で邪魔をする敵一家のからかいである。からかいと言うには、投げ縄でがんじがらめにする悪どいものだが、知性を優先する東部式思想のペックはむしろ面白がる。西部式思想のしみこんだキャロルには彼が反骨精神を見せないのが不満である。
 ビッグフォードの一家と敵一家の対立の一因として水の問題がある。水源地を持つのは女教師ジーン・シモンズで、ペックはキャロルへの贈り物かつ両家の和平のために水源地を買い、新たな牧場を始めることにする。水は両者に平等に分けるつもりである。しかし、キャロルはその理性的な考えが結局理解できず、ペックは彼女と別れる決意をする。
 一方、敵一家の長男チャック・コナーズはジーンを拐かして水を独占しようとするが、父親バール・アイヴズはその強引なやり方が気に入らず、丸腰でジーン救出に訪れたペックの誠実の方を買うも、結局二人の決闘を仲介す、卑怯な手を使った息子を射殺しなければならなくなる。ペックの努力も空しく、両家が戦闘状態に突入する。やがて、息子を殺して自分が古い西部男の最後と自覚せざるを得なくなったアイヴズは子分たちに戦闘を止めさせ、ビッグフォードと一対一の勝負に出、両者ともに倒れる。
 古い大西部はここに終わり、ペックらの若い世代が台頭する新しい西部の訪れを意味するのだ。

東部式思想と西部式思想はそのまま新時代と旧時代の対立で、映画は最初から最後までこれで押していく。ワイラーはお話を縦横無尽にスムーズに進行させているが、それを成すのは、圧巻とも言うべき画面の構図の力である。
 特に西部の雄大さを表現するロングショットが素晴らしく、これがペックとヘストンの喧嘩の時に大いに活用される。ロングショットも3つくらいの種類が使われ、そこへ随時フルショットを挿入する形になっているが、大西部における小さな人間の対決を表現してこれほど適切なものはない。通常のアクション西部劇のような寄りは一切ない。二人の戦いは人間同士の戦いではなく思想の戦いだからである。

ペックは表にこそ出さないものの反骨精神の持ち主であり荒馬も遂に乗りこなす。それをコナーズとその牧童たちの行状をクロス・カッティングで見せるのが秀逸。ここでは、いち早く逃げるコナーズの卑怯さが早くも描写されると同時に、捕らえられた他の牧童たちへのリンチが音だけで表現され効果的である。

恋愛映画としての面。ジーンはキャロルと違ってペックの精神的な強さに気づいている。やがてペックの心情は自分を理解する新時代の女性ジーンに傾いていく。この辺りのお話の流れも思想の対立という図式の中で解りやすく、映画は古い時代の象徴であるアイヴズの地所を去る二人(とメキシコ人牧童)を背後から捉えて、終わる。

誠にワイラーは上手い監督である。

ワイラーはドイツ系移民。ビリー・ワイルダー、その師匠エルンスト・ルビッチ、スタンバーグもそう。ルイス・マイルストンはロシア系。チャップリン、ヒッチコックは英国から(移民ではないけどね)。大いなるアメリカ、いまどこに。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
随分前に観た切りですが、3時間近いのが分からない程集中して観れた映画でしたね。
「世界を彼の腕に(1952)」とか「白鯨(1956)」を観てたので、海の男の印象が強かったペックさんが、ここでも船乗りだったのが面白かったです。
キャロル・ベーカーに横恋慕する牧童頭のチャールトン・ヘストンが、一人で馬で出かけようとするペックに向かって、『テキサスは広いから、迷子になるなよ』と馬鹿にした態度をとって、でも、『これがあるから(大丈夫)』と上着のポケットからコンパスを見せるのが痛快。
ペックさんが共同プロデュースしたらしいですが、興行的には失敗だったという話しも残りましたね。
十瑠
2018/01/02 12:13
十瑠さん、こんにちは。

>集中して観れた映画
最初から最後まで対立の図式で押したのが良かったのでしょうね。

>ここでも船乗りだったのが面白かった
言われてみれば、そうですね。

>コンパス
メキシコの牧童が「時計」と思い込んでいるのが可笑しかった。

>興行的には失敗
アメリカの評価は日本ほど高くないんですよね。アカデミー賞でも殆ど無視されました。自分の地元のことで、灯台下暗しだったのでしょうかね。


オカピー
2018/01/02 20:56

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