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zoom RSS 一年遅れのベスト10〜2017年私的ベスト10発表〜

<<   作成日時 : 2018/01/10 10:12   >>

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 群馬の山奥に住み、持病もあり、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、僕の2017年私的ベスト10は皆様の2016年にほぼ相当する計算でございます。と、毎年同じことを申しておりますが、これもルーティンということでお許し下さい。
 スタンスとして初鑑賞なら新旧問わず何でも入れることにしていており、その年の状況によってはとんでもない旧作を入れることがあります。今回は、果たして?

 2017年鑑賞本数は361本、再鑑賞は75本でした。従って、本稿対象となる初鑑賞作品に関しては286本。数年前から300割れを予想しておりましたが、遂にやってきました。世界的にジャンルが若い世代向けに固まる傾向があり、我々オールド・ファンを楽しませる作品が減っているのでやむを得ません。急激に映画界が映画ファンに向くとは思いませんので、300本台に復帰することは金輪際ないでしょう。

 しかし、少なくとも本年は昨年の数くらいは維持できるようなラインアップであるように祈ります。自分の健康もこのまま維持できますように。

 それでは、参りましょう。


1位・・・ブルックリン
「ふるさとは遠きにありて思うもの」という詩的な主題(正確には人にとっての土地の意味)をロマンスにダブらせて語る文学的手法にしてやられました。強烈な作品ではありませんが、下品な作品が多い中で、こういう品の良い見せ方をする作品には実力以上に惹かれます。

余談です。
 実は昨年唯一☆☆☆☆★を付けた新作があります。「シチズン・フォー スノーデンの暴露」です。採点から言えば1位で良いわけですが、告発ドキュメンタリーという特殊性があるだけに劇映画と比較できるものではないと思うのです。マイケル・ムーアのような茶目っ気のあるドキュメンタリーならまた話は別ですが。

2位・・・スティーブ・ジョブズ
古典文学を多く読んでいる僕であるが故に、こういう演劇的な立派な骨格を持っている作品にはどうも弱い。どの場にも認知してこなかった娘を絡ませ、そこからやがて彼の内部に押し隠された人間性を浮かび上がらせる戯曲的手法が鮮やかで感心しました。よって脚本賞も。

3位・・・ボーダーライン
上位3作が英米映画というのが、自分で選んでおいてなんですが、個人的にはなかなか嬉しい。とは言え、監督をした常連ドニ・ヴィルヌーヴはカナダ出身。それはともかく、メキシコ国境の厳しい現実を、骨太に、同時に善悪論という文学的なアプローチから繊細に見せたところに面白味が大いにありました。

4位・・・ひつじ村の兄弟
ここへ来て急激にキリスト教のフォーマットを使った作品が目立つようになりました。「神様メール」「教授のおかしな妄想殺人」「裁かれるは善人のみ」「孤独のススメ」等々。本作はその中でも解りやすく旧約聖書をなぞった上で、最後にうっちゃるという鮮やかなアンチ・キリスト教ぶりを示し、代表格としてこの位置に。一番面白かったのは「神様メール」かな。

5位・・・パッセンジャー
「スター・ウォーズ」や「スター・トレック」といったチャンバラ宇宙SF映画がもう一つ突き抜けた面白味を出せない中で、本格的とも言うべきこの宇宙SFは、サスペンス的に楽しませながら死生観について考えさせるという狙いが秀逸でしたなあ。

6位・・・さざなみ
小説、演劇、映画は、一つの石を池に投げ入れ波紋を生じさせるというところから始まるのが定石。本作の邦題は正にそれを示し、僕をにやっとさせましたが、個人的には古いポピュラー音楽(の歌詞)が雄弁に登場人物の心境を語る手法を大いに楽しみました。洋楽に疎く、ましてその歌詞を知らないとその付加的お楽しみができないのですがね。同時に、洋画ファンならここでかかる曲くらいは知っておいてもらいたい。

7位・・・サウルの息子
無数の証拠フィルムや管理をしていた当のドイツ人の証言もあるのにアウシュヴィッツは捏造だと言う馬鹿な日本人もいますが、収容所内部を扱い、ユダヤ教の考えを寓意させる形で展開させた内容に心を打たれる。ナチス絡みは他にも幾つかありましたが、純度が高い故に力強い本作が一推し。

8位・・・ある天文学者の恋文
ジュゼッペ・トルナトーレは相変わらず巧いし、もっと上位に置きたいくらいですが、贔屓の引き倒しになってもいけないので、この辺りに。殆どの人が種明かし後の展開を現実的に捉えていたのにがっかり、それでは評価も伸びないわけです。この作品は、哲学映画としての解釈では、種明かし後に神をテーマにしたファンタジーになる。

9位・・・ルーム
欧米映画が近年好んで取り上げる誘拐映画のヴァリエーションで、前半の脱出サスペンスも巧い。後半は、人間の社会性の問題を絡め、社会を全く知らなかった息子のほうが社会を知っていた母親より早く現実に立ち向かえるという展開に心理学や教育論的な面白味がありました。

10位・・・キャロル
採点的には圏外の☆☆☆★ですが、1950年の感覚で現在的なテーマを取り上げるという、僕の言う【幻想映画館】の趣きを買う。特に年末に「逢びき」(1945年)を観て、本作がそっくりになぞっていることに気づいたことが、ベスト10に入れることを後押ししましたね。

次点・・・隣の八重ちゃん
一昨年より大分減らしたとは言え、相当観ている新作邦画の中にベスト10に絡めそうな作品がついぞ見当たらない。宮崎駿の深遠さを知っていると「君の名は。」は相対的に浅い。「シン・ゴジラ」は相当頑張るも、全世界的なレベルのベスト10となると逡巡してしまう。キネ旬ベスト10作品も内省的な純文学的世界に陥り、「ブルックリン」のような広い視野に欠け、物足りない。
 その点84年前に作られた本作には、実にのびのびした自然さがあり、当時の日本人(但し中流階級)の感覚が解るという教科書的な価値も見い出せ、唯一の邦画としてここに残しておきたいと思ったわけです。

画像

ワースト・・・愛・旅立ち
旧作ですが、所謂“とんでも映画”ですね。中森明菜と近藤真彦という当時の二大アイドルを出しながら、彼岸と此岸を往来させ、子供みたいな耳なし芳一が絡んでくるという、全く変てこな作品でした。彼岸と此岸を往来させるにしてももう少しまともな作り方があっただろうに。


****適当に選んだ各部門賞****

監督賞・・・アレハンドロ・G・イニャリトゥ〜「レヴェナント:蘇えりし者
男優賞・・・トム・ハーディー〜「レジェンド 狂気の美学
女優賞・・・シアーシャ・ローナン〜「ブルックリン」
脚本賞・・・アーロン・ソーキン〜「スティーブ・ジョブズ」
撮影賞・・・エマニュエル・ルベツキ〜「レヴェナント:蘇えりし者」
音楽賞・・・「シング・ストリート 未来へのうた

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2016年マイベスト44(おまけで第12回シネマ停留所映画賞)
「ベスト10」だけでは、つまらない! 全部に順位をつけましょか! という、毎年恒例のお遊び。 ...続きを見る
或る日の出来事
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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
 今年初めてのコメントですので、変わらずよろしくお願いします!
例年に比べ、やや小粒の作品が多かったと思われますが、その中で1位の「ブルックリン」は、「一年遅れのベスト10〜2016年版」へのコメントで、ぼくも上位にあげているとお伝えした作品、堂々のトップは素晴らしい・・。昨今人気の、東洋的風貌の美人の一人シアーシャ・ローナンの最優秀女優賞は文句のつけどころがありませんね!

SF好きなぼくが、「パッセンジャー」は圏外に置き、プロフェッサーがベスト5に入れたことも非常に興味深く感じています・・。

「ある天文学者の恋文」は、周囲の、普段かなり映画を見ている女性陣に「死後も女の運命を左右するなんて・・」と、意外や評判が悪く(笑)
「種明かし後のエピソードはすべて、主人公が彼女を導く星の存在になった(要はプロフェッサーと同じかと・・)だから当然」というぼくの見方はあえなく却下されましたよ(笑)

新年早々、続きます(失礼!)
浅野佑都
2018/01/10 14:43
>新作邦画の中にベスト10に絡めそうな作品がついぞ見当たらない。

これについては、ぼくは数年前から邦画はもう(観るべきものは)アニメだな、と確信(笑)しているほどでして(それくらい悲惨な状況だと思います実写映画は・・)
それを裏付けるように、2016年はアニメの当たり年で、正月の地上波放送で再鑑賞し、かなり良くできていると初めて深海誠監督をほめた「君の名は。」が凡庸に感じられるほど、「この世界の片隅で」「聲の形」「ひるね姫 知らないワタシの物語」などが目白押しでして・・。
WOWOWでもアニメ特集のときにかかるかと思いますが、ご期待ください。

「シン・ゴジラ」は、日本人の第一次と二次怪獣ブーム世代へも配慮して作られていて力作と思いましたが、日本の憲法と派閥政治にある程度知識がないと分かりずらく、海外ではハリウッド版ほど浸透はしませんでしたね・・。
ただ、ゴジラ映画のポテンシャルを改めて見せつけた作品ですし、近日制作される新ハリウッド版と本家の競争も見ものですね!
浅野佑都
2018/01/10 14:52
こんばんは。
「ブルックリン」は、2016年マイベスト2位です! いいですよね、これ。
シアーシャさんは今年のアカデミー賞、新作「レディ・バード」でイケるかもしれません。
「ルーム」は、同じく5位、「キャロル」はWOWOWで見ましたが公開時に観ていたらマイベストに入っていたと思います。
「さざなみ」もWOWOW、星4つ、つけました。「ボーダーライン」は好き嫌いで星3つ半どまりにしました。
ボー
URL
2018/01/10 22:14
浅野佑都さん

今年もよろしくお願いいたします。

>「ブルックリン」
人間が上品なので(笑)、上品な作品が好きなのです。

>シアーシャ・ローナン
素晴らしかったですねえ。最近日本の若手女優さんが「えいやっ」であげることが多かったですが、今年は彼女で文句なしでした。

>「パッセンジャー」
僕がSFに見慣れていないせいですかな。
スペース・オペラ系列やアメ・コミ系列よりずっと面白かったですよ。

>「ある天文学者の恋文」
僕と同じ意見です。僕らの意見は、間違いないのですがね(笑)

>「この世界の片隅で」「聲の形」「ひるね姫 知らないワタシの物語」
昨年出るかと思いましたが、買っていなかったのですかなあ。特に「この世界の片隅に」は早く見たい。

>「シン・ゴジラ
日本の政治について知らないと、ダメでしょうねえ。僕もそこを一番楽しみましたからね。
オカピー
2018/01/10 23:39
ボーさん、こんにちは。

「ブルックリン」「キャロル」「ルーム」「さざなみ」はほぼ似た評価だったわけですね。共通性は高い部類でしょう。よかよか(笑)

>「レディ・バード」
そうなると良いですね。

>「ボーダーライン」
星三つ半なら、それほど差がないでしょう。
そもそも☆☆☆☆★以上は滅多に出さないという点でも、ボーさんとはスタンスが近いと思います。
オカピー
2018/01/11 10:41

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