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zoom RSS 映画評「彼らが本気で編むときは、」

<<   作成日時 : 2017/12/23 10:14   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・荻上直子
ネタバレあり

自民党議員に「日本にLGBTの伝統はない」と言う人が少なくないが、彼らの言う伝統は本当の日本的文化ではなく、西洋の考えに立脚した明治以降のことに過ぎない。キリスト教は元来同性愛に否定的であったが、それでもルネサンス初期の「デカメロン」「カンタベリー物語」などを読めば同性愛・両性愛は当たり前のように出てくる。西洋がLGBTに実質上も否定的になったのは、産業革命で労働力が必要となり、それに寄与しない同性愛が問題とされたからである。
 翻って日本。「日本書紀」には既に同性愛の記述があり、それを井原西鶴が巻頭に取り上げて「男色大鑑」をものし(曰く、「男色は通常の恋愛よりも誠実でずっと良い」と)、山本常朝は武士道に関する「葉隠」で男色の心得まで書いている。武士や僧侶の両性愛は当たり前のようにあったと日本の古典を読めばよく解る。そして、明治時代に産業革命を本質的な原因とする「LGBTは御法度」という考えを取り入れたのだ。
 彼らは「日本書紀」による日本開闢(その逆算的計算は中国の十二進法的な考えによる)を信じているくせに、都合の悪い部分は認めない。実は欧米べったりの彼らに日本の伝統を語る資格などありはしない。

個人的には、僕は同性愛者やおかま・おなべは苦手である。同性愛者を主人公にした映画を観るのは余り気が進まない。
 中学生時代に同性愛疑惑が僕に起きたのは単なる勘違いで、当時は内気で人に頼りがちな性格であった(その後好きな女生徒のことを考えて僕は性格改造を試みてかなり成功した)為に頼りになる或る同級生と一緒に過ごすことが多かっただけに過ぎない。実際、同じ男子校に進学した後、クラスが違ったため僕は彼とは一度も口をきかないまま卒業したほど。彼には申し訳ないが、僕は彼を便利に使っただけなのである。
 しかし、苦手意識と彼らの権利についてどう考えるかは全く別問題である。混同する人は差別をしてしまう。

本作は、かなり本格的に性同一性障害を取り上げた作品で、その種の映画作品が殆ど作られていないのが我が国の現状とは言え、邦画では断然優秀な出来映えと言いたくなる。

お金がたまると好きになった男と姿を消す癖がある母親ミムラがその伝で消えたため小学5年生の柿原りんかちゃんは、戻ってくるまで叔父さん桐谷健太に養ってもらうことになるが、彼が一緒に暮らしているのは性同一性障害の元男性・生田斗真である。
 既に肉体改造をしているので彼女と言わなければならないが、彼女をトランスジェンダーとする解説やストーリーは、トランスジェンダーは肉体改造を求めない人々のグループを指すらしいので、厳密には間違いなのであろう

生田氏とほぼ同じ状態の少年・込江海翔(こみえかいと)君を避けるりんかちゃんではあるが、叔父さんのパートナーには素直に接する。優しくもあり、逆らえば生きていけないからであろうが、それでも心の中で本当に求めるのは、親としては相当に問題がある母親なのである。
 いずれにしても、少女はかくして性同一障害なるものを理解し、避けていた込江君とも付き合い出す。そんな彼らを偏見、多分にキリスト教右派的偏見で考えるのは少年の母親・小池栄子である。
 保守的なキリスト教右派は「神は男をあるいは女をこう作った」という人間観で全てを捉え、そこから外れる者は全て罪深いということになる。だから、生田君のような人々を「神が設計ミスをした」とは考えない。何と狭量であることであろう。

本作はそこに親子・育児の問題も混ぜて、多層的に観られるように作った。そこが脚本も兼ねている監督・荻上直子の進境を感じさせるところで、娘に非難された母親ミムラが、娘としての自分に立ち返り、認知症の母親りりぃの許を訪れる挿話などはそこはかとなく良い味を出している。2週間前に観た「ジュリエッタ」と同工異曲である。

荻上作品としては従来のアキ・カウリスマキ臭をほぼ払拭しぐっとオーソドックスになった印象。しかし、カウリスマキの向こうに漂わせていた小津安二郎の面影は、三人が編み物をするショットの相似性に今まで以上に顕著に表れていはしないだろうか。

実は母親役を吉田羊と思って見ていたら、別人ミムラでした。今まで区別できなかったことはないと思うが、この作品のミムラは実によく似ている。

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