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zoom RSS 映画評「君の名は。」

<<   作成日時 : 2017/11/08 09:42   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2016年日本映画 監督・新海誠
ネタバレあり

昨年爆発的なヒットをした新海誠監督のアニメ、などと書くまでもない。物語も書くまでもないだろうが、ストーリーに触れないと具体的に指摘できない事項がある場合もあるので、簡単に記しておきましょう。

東京の男子高校生・立花瀧(声:神木隆之介)と、奥飛騨の神官の家に生まれた女子高校生・宮水三葉(声:上白石萌音)とが、互いに入れ替わっている夢を見る。やがてそれが夢でないことに気づくが、ある時その現象が終わり、彼が奥飛騨に行ったところ彼女がいるはずの村が3年前の彗星衝突で滅び、村人の大半が死に、その中に三葉が含まれていることを知る。
 時間のずれのせいで記憶の薄れていく中、彼が辿り着いたご神体に彼女が生前に残した口咬み酒を飲むと、彼女と交錯する。彼の中身を持つ3年前の彼女が行動を起こし、村人を彗星衝突から回避させようと友達二人と奔走、電気ジャックまでやらかすが、町長の父親は言うことを聞かない。

珍しくも事前に魂交換ものと知っていたので、本作が放映されると知って、わざわざ邦画での嚆矢「転校生」を再鑑賞したが、こちらは性差への当惑が眼目ではないので、その当惑によるコミカルさは程々に済まされてい、その代わり違う時間軸にいる人物の接触というギミックを加えて新味を出している。このギミックにも「オーロラの彼方に」「イルマーレ」といった先行作品があり、必ずしも新しいわけではないものの、二つのギミックをミックスもしくはハイブリッドすることで一定以上の新味を醸成する次第。

SFと言うには些か苦しいが、組紐を時間の関係になぞらえているところは結構本格的である。しかしながら、新海監督は、ヒロインを代々巫女を務める家に生まれた高校生という設定にし、どちらかと言えば科学ではなくオカルトの方向に話を持っていく。この家の女性たちは他人との入れ替わりを代々経験していて、それがこの危機を回避する為だったのではないかと彼女の体を持つ彼に推測させる。神がかりなのである。だから、会ってもいない二人が好き合うのは不思議でも何でもない。運命なのである。

かくして、彼女が上京して中学3年だった瀧に組紐を渡した(渡したというよりは渡った)結果歴史が変わる。その代償が言わば二人から互いの記憶が消えるということなのだろう。それでも、神が配剤した運命の人であるから、互いにテレパシーを発信してそれと知らずに再会する。そんなお話であると僕は理解した。

同時に、僕は、監督がその底に込めたメッセージも感じる。ヒントは彗星衝突という災難であり、記憶の喪失である。死んだ人は忘れられることで二度死ぬと一般的に言われることから推して、一度は被災で死んでしまったヒロイン=3.11で亡くなった人々を忘れるな、と。

作劇としては、日本的「もののあはれ」をモチーフにした旧作「秒速5センチメートル」(2007年)の変奏曲で、あの映画同様に、対位法的な語りが途中からカノン的な語りに変わる。大きな変化があるわけでもないのに数十倍のヒットとなったのは、勿論メジャーに打って出たことが最大の理由であるが、中年以上にも聞き覚えのあるタイトルが良かったこと。そこに加えて、お話がより直球的で大衆の琴線を打つものがあったということだろう。

この作品でも、実景を取り込んで上書きして絵にするという手法を駆使したのであろう、背景が抜群に美しい。

1000年後のために子孫がまた入れ替わり続ける? しかし、村がなくなってしまったからなあ。

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君の名は。(2016)
「ロード・オブ・ザ・リング(王の帰還)(2003)」以来、久々にダンナさんと劇場で鑑賞。なにせ、閉所と大音響が苦手なもので、しばらく硬直してて、最初の、あまりの大音響。汗々で逃げることを考えてたのですが、物語のパワーと画面の美しさに魅了され、最後まで惹き込まれて、じっくりと観てしまいました。予備知識として「高校生の男女が夢の中で入れ替わる?!」程度しか知らなかったので、ものすごく興味深く観ることができました。なんと、東京で暮らす立花瀧のバイト先の憧れの先輩は、なかなか物語に深く入ってくるのですが... ...続きを見る
のほほん便り
2017/11/08 17:21
君の名は。 ★★★★★
「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」の新海誠監督が、夢の中で入れ替わる少年と少女を主人公に贈る青春SFファンタジー・アニメーション。入れ替わりが巻き起こす思春期ならではのコミカルで甘酸っぱい青春模様と、2人を待ち受ける思いも寄らぬ運命の顛末を美しい映像とともに綴る。声の出演は神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子。 あらすじ:千年ぶりとなる彗星の接近を1ヵ月後に控えた日本。山深い田舎町で鬱屈した毎日を過ごし、都会の生活に憧れを抱く女子高生の三葉。ある日、夢の中で自分が東京の男子高校生に... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2017/11/08 19:52
「君の名は。」
よくあるアイデアの話かと思ったら、ひと味違いましたね。 ...続きを見る
或る日の出来事
2017/11/09 08:20
映画:君の名は アイルランド、オランダ(仏)台頭の中、アニメ日本勢の底力を見せつける一本。
この夏、アニメ映画といえば「ソング・オブ・ザ・シー」一押しだった当ブログだった。 がつい先日、ジブリ新作「レッド・タートル」の心を打ち抜かれたところ。 ...続きを見る
日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF ...
2017/11/11 08:49
「君の名は。」☆繊細で瑞々しく
超話題で人気がどんどん高まっていくアニメ。 神木くんも登壇する試写会が当たっていたのに、介護のバタバタで行けずじまいになっていたから、もうDVDでいいやと思っていたら、ママ友が行こう行こう!!としきりと誘ってくれたので思い切って行って見たyo つつーっと頬を伝う涙のなんと清らかに澄み渡っていたことか・・・・・ ...続きを見る
ノルウェー暮らし・イン・原宿
2017/11/11 23:55
『君の名は。』('16初鑑賞80・劇場)
☆☆☆☆☆彡 (10段階評価で 10) 8月27日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター8にて 12:50の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2017/11/13 13:53

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
 >「秒速5センチメートル」の変奏曲

「オーロラの彼方に」のような、よく練られたストーリー性もなければ「イルマーレ」のような逢瀬のジレンマもない・・。アイディア的にも、目を引くようなものとてない作品が超大ヒット!
やはり、プロフェッサーの感じておられるように、日本最大の映画会社である東宝のマーケティングの功績でしょう!
ぼくは、この作品で新海誠を初めて高く評価しましたが、東宝側のアドバイスがかなりあったことは間違いないと思います。過度なセンチメンタリズムがうまく調和されて万人向けになった・・。地に足の着いた良作アニメに仕上がったと思いました。

>監督がその底に込めたメッセージ

この部分は、中々、他の評論には見ることのできないプロフェッサー独自のものだと思います・・。
ぼくらが中学生のころにヒットした、フォークグループ赤い鳥の「翼をください」は、サッカー日本代表の応援歌でもありますが、この歌もまた、鎮魂歌でありましょうね・・。
戦争や災害で失われた多くの命と、人々の嘆き・・。
♪悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ 行きたい♪ の歌詞は、亡くなった人のためにつらい現世から解放される白鳥(しらとり)の翼を与えてほしい、という魂の応援歌にも聞こえます。
浅野佑都
2017/11/10 13:43
 今朝の評論で、不倫に対する最近のヒステリックすぎる世論に触れておられ、同感の至りです・・(不倫が文化と申すつもりはないですがね((笑)。

それと関係あるかどうか・・、調査で若者の50%以上(といっても、選挙に行くのは若者全体の3分の一以下でしょうが)が自民支持とか。
理由はもちろん、安倍政権下の高就職率につきますね。
それと、ヤング特有の、前の世代に対する反発心もある。

しかし、バブルといっても美味しい思いをしたのは一部の金融、不動産関係者だけで、庶民はNTT株も買えませんでした・・。外国人とも仕事をされたプロフェッサーと違い、ぼくなど当時人気だった(ホイチョイの見栄講座に代表される)フレンチレストランなどテーブルマナーを覚えただけ((笑)、社用以外に入ったことはなかったですし・・。
ぼくの東京時代の80年代、マクドナルドのハンバーガーは210円、吉野屋の牛丼400円(これらはデフレではなく牛肉自由化による値下がり)レンタルビデオ500円でした。現在のほうが安く、当時はなかった生活機器など、何のかんの言っても若者は恵まれている・・。

30歳以下のヤングは、いい時の日本を知らないから今がむしろ「いい兆(きざし)」と受け取ってしまいかねない・・。
彼らが政治に心篤くなるのは危険でしょうね・・。
浅野佑都
2017/11/10 13:49
浅野佑都さん、こんにちは。

>センチメンタリズムがうまく調和されて
そういうことだと思います。コミカルな要素も貢献しているでしょう。
彼の基調ではセンチメンタリズムが強すぎて、逆にそれがお話としては日常的な「秒速5センチメートル」のようなアニメができる理由と分析したことがあります。現在の世相では実写では寧ろ無理。

>>監督がその底に込めたメッセージ
僕は、どうしても被災と記憶がリンクされてしまい、避けることができません。
正しいかどうか解りませんが。

>翼をください
中学のクラス対抗の合唱で候補になりました。結局僕らは新曲だった「夢の中へ」を選んで、審査員長を務めた校長から「合唱向けの曲ではなかったですね」と言われてしまったのを思い出します。
「悲しみのない」が何を意味するのでしょうねえ。単純な歌詞なので、色々と理解できそうですね。

ところで、南沙織の2枚組ベストを図書館に発見。彼女の曲は3、4曲しか知らないかと思ったら、20曲以上知っていましたよ。自分でもびっくり、結構ヒットしたんですね。

思わず長くなったので、後編に続きます。
オカピー
2017/11/10 18:41
>不倫に対する最近のヒステリックすぎる世論
自分が完璧な人間と思う人が多い(多分保守を中心に)のでしょうね。警官や教師が犯罪を犯さないと思い込むくらいバカバカしい勘違いです。
不倫は人間らしさの発露ですよ。積極的にやれとは言いませんが。

>調査で若者の50%以上が自民支持
面白い記事を読みましたが、彼等の多くは「自民党は革新、共産党は保守」と思っているのですって。
共産党が保守というのは何ですが、自民党が革新というのは間違いではないでしょう。小林よしのりがしきりに「自民党は似非保守、共産党より左翼だ」と言うのと、不思議と一致します。

>フレンチレストランなど社用以外に入ったことはなかったです
僕も社用意外にないです^^;
アメリカの大手のメーカーへの接待の際、先方が泊まっていたホテルのフレンチ・レストランに連れていかれた時はドキドキしましたねえ。一品安いものでも5千円くらいで、会社から金も借りて来なかったし「やばいな」と思ったら、こちらが接待する側なのにおごられることになり、ピンチは回避しましたよ(笑)

>現在のほうが安く
相対的物価は確実に安いですね。
40年近く前、貧乏学生の時一番安いブレンド米が3000円以上しました。今なら秋田小町が、安い時なら、同じくらいの価格で買える(笑)

何と、まだ終わらない!
オカピー
2017/11/10 18:47
>いい時の日本を知らない
悪い時も知らないんですよ。
だから、中国や韓国をパクリ大国などとのたまう。
日本の映画が、音楽が、いかに欧米の作品をパクったことか。工業製品だって結構あったんですよ。
「フラガール」の時に、ヒロインの家が「ボロすぎる。在日の監督はこれだから困る」と言う若者(でしょうよ)がいましたが、とんでもない。昭和40年代の初め、東京の山の手以外、日本の家はボロでしたよね。彼女の家の玄関はガラスの引き戸でしたし、勿論鍵もありました。当時の我が家は木製の引き戸で、鍵などかけられなかった。それでも僕の家は最悪にあらず。西毛の田舎はこんなものだったんですよ。福島もそう変わらんでしょう。

>彼らが政治に心篤くなるのは危険
そんな彼等ですから、恐ろしいです。
オカピー
2017/11/10 18:49
>南沙織の2枚組ベスト

1枚目がシングル盤のヒット曲集で、2枚目にB面&LP収録曲を集めたベスト盤でしょうかね?
プロフェッサーは南沙織ファンというわけでもないのに、20曲以上も彼女の曲を知っているとはすごい!
三人娘の中では、「水色の恋」など歌謡フォーク路線でブームの短かった天地真理や演歌の小柳ルミ子らと違い、大衆ポップスの南沙織はもっとも息の長いアイドルでした・・。
 ぼくのお勧めの曲は、抒情的な旋律の「哀愁のページ」と焼け木杭に火が付き始めたカップルの「粉雪の慕情」
そのココロは・・。どちらも、英語の歌詞が素敵です(笑)

 不倫芸能人バッシングや、不倫を扱った映画を不当に低く評価してしまう昨今の風潮は、ネトウヨの台頭とどうも根っこは同じ気がしますね・・。
キーワードは”嫉妬”ではないでしょうか?

不倫そのものではなく、不倫をするような人は、おおむね金銭面で余裕のある人間であり、余裕のない私たちが真面目にやってるのに不真面目なことは許せない!(在日外国人の場合は、パチンコなど一部の富裕層が気に入らなくて全体を憎む)
不倫ばかりでなく、確か、ダルビッシュのもと妻のサエコというモデルが、熊本震災時に寄付をしたときには売名としてバッシングされたと思います・・。

かなり前から言われていた日本人の気質(民度というイヤな言葉もありますが)の低下が、ここへ来て一段と加速してるように思えます。
浅野佑都
2017/11/12 05:58
浅野佑都さん、こんにちは。

>>南沙織の2枚組ベスト
いや、コンプリートなシングルA面コレクションです。
1978年に一旦引退するまでの28曲と、何故か再デビュー曲のB面1曲。もしかしたらその頃発売されたCDかもしれません。

>「哀愁のページ」「粉雪の慕情」
後者は、アルバム収録ですね。さすがにこれは知りません。しかし、ネット時代故に、歌詞はチェックできました。ネットは人心を悪くする可能性もありますが、確かに便利(笑)

>キーワードは”嫉妬”ではないでしょうか?
ネトウヨは、貧しい中年が多いというのが真実なら、そうなのかもしれませんね。

>熊本震災時に寄付をしたとき
彼等は、自分がやらない行為、自分ができないと思う行為、例えばボランティアは偽善と考えますよね。
僕などは、ヤクザが寄付をして彼に見返りがあったとしても偽善とは断言できませんが。何故なら彼の心底は本人以外は誰も解らない。

>民度
僕も好きな言葉ではありませんが、石原前知事が使ったことにより民度が固定的な尺度と捉えられているのが残念ですね。
僕は、民度は変化していくものだと思うのです。仮に、現在の韓国人や中国人の民度が低いとしても、それは政治体制のせいであり歴史上の発展過程にあるということでしょう。日本だってかつてはそれほど高級な民族ではなかったはず。西洋流の輸入がすべて良いとは思いませんが、現在日本人が持っている礼節は西洋流を取り入れ日本流に素敵に変化していったものが多いように思われます。
逆に、現在の日本人の気質が荒んできたのは、多くはネットのせいですね。そこに嫌っている韓国や中国の真似をすることが加わっている。現政権を含め、彼らは自分たちが非難していることの多くを模倣しているとお思いになりませんか?
オカピー
2017/11/12 18:37

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