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zoom RSS 映画評「キリング・フィールド」

<<   作成日時 : 2017/11/05 09:44   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1984年イギリス映画 監督ローランド・ジョフィー
ネタバレあり

30年くらい前に映画館で観てショックを受けた。厭世観でいっぱいになった。

1975年、カンボジア内戦について現地人カメラマンのディス・プラン(ハイン・S・ニョール)と取材していたニューヨーク・タイムズの記者シャンバーグ(サム・ウォーターストン)が、アメリカ軍が撤退した後、反体制派クメール・ルージュの首都プノンペン進軍に遭遇、九死に一生を得てフランス大使館に逃げ込むが、関係者の努力も空しく、プランは現地人であるがために革命軍の手に落ちる。
 無事に帰国したシャンバーグがピューリッツァー賞を受賞した頃、カンボジアでインテリが皆殺しにあっている中プランは元タクシー運転手のふりをして生き延びる。ある時ある幹部に教養ある男であることがばれてしまうが、相手がクメール・ルージュの手法が間違っているという信念を持っている人物である為何とか難民キャンプに逃れることができ、シャンバーグとの再会を果たす。

前半クメール・ルージュの脅威から逃げるサスペンスも重量級で圧巻だが、シャンバーグとプランとの対照的な場面が交互に現れる後半がもの凄い。

勿論凄いのは、クメール・ルージュ(僕らがニュースで聞いた名はポル・ポト派)の支配するカンボジアの凄惨な様相である。僕は同時代的にポル・ポト派が起こしている騒乱は知っていたが、ポルポト派がここまでひどいことをしているとは全く知らず、呆然とした。
 彼等は、中国共産党の手法を真似し、過去を知らない無垢な子供に大人を追わせて虐待させる。色々な説があるが、この扱いで少なくても100万人、多いもので170万人が虐殺されたという。当時のカンボジアの人口は僅か800万人とも聞いた。僕はこの事実を知って戦慄したものであり、今でも世界史の中でトップ・クラスの蛮行と思う。ましてその蛮行の少なからぬ部分を担わせられたのが子供というのだから言葉を失う。
 その意味で、戦争の悲劇と捉えている意見が多いのに反し、実際には戦争とは直接関係のない酸鼻な虐殺を主題にした作品と言わなければならない。大国(特にアメリカ)が東南アジアをかき回して起きた分断であるのは確かであるが、本作が見せようとしたのは米軍が撤退し内戦が終息した後の悲劇=虐殺(インテリ抹殺=問答無用の粛清)である。

批判的な意見の中に「カンボジア人を西部劇の(中での悪役である)インディアンに見たてている」というのがあるが、見当違いで、実際にあったポル・ポト派の蛮行を見せているに過ぎない。悪役のインディアンと見なしているにしても、カンボジア人ではなく暴走したポル・ポト派幹部だけである。後年逮捕された幹部は虐殺について謝罪している。
 カンボジア男性と結婚した日本女性で犠牲になった人が数名いらっしゃる。この映画を見た十年後くらいにTVで取り上げられていた。家族はまだ生存を信じていたが。

映画館で観た時、ラスト・シーンでかかる「イマジン」について二名の白人女性が「この映画にピッタリね」と言っていたのを思い出す。歌詞をよく知っていると、映画の内容に重なって「くどい」という印象を覚える人もいるかもしれないが、僕はぐっと来た。

満点をつけたのは、映画芸術のアングルからどうのこうのというより、圧倒的な迫力を以って事実を伝えてくれたことに対する評価である。

全体主義者の「イマジン」の歌詞に対する「国があるから人は守られる」という批判は的外れである。この歌詞の心は、「人に所有欲がなければ、国など必要でなくなる」ということだ。前提が違う。

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キリング・フィールド
(1984/ローランド・ジョフィ監督/サム・ウォーターストン、ハイン・S・ニョール、ジョン・マルコヴィッチ、ジュリアン・サンズ、クレイグ・T・ネルソン/141分) ...続きを見る
テアトル十瑠
2017/11/05 23:16

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