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zoom RSS 映画評「ソフィーの選択」

<<   作成日時 : 2017/10/05 09:13   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1982年アメリカ映画 監督アラン・J・パクラ
ネタバレあり

映画館で観て以来33年ぶりくらいに観る。栴檀は双葉より芳しを地で行く名女優メリル・ストリープの数多い名演の中でも僕は最も好きかもしれない。

1947年、南部から出てきた作家志願“スティンゴ”(ピーター・マクニコル)が、ブルックリンの下宿でポーランド出身の女性ソフィー(メリル)と同棲中のネイサン(ケヴィン・クライン)二人と懇意になる。ネイサンは精神分裂気味で、激怒したかと思えば次の日には優しさを見せる。“スティンゴ”は悲しげなソフィーを慰めるとともに思いを寄せるようになるが、彼女の話には嘘や隠していることがあることが次第に解って来る。

戦後アメリカに移住してきた人々の中には戦時中のひどい経験をひきずる人が多かった。まして1947年という直後では、なおさらであっただろう。
 ナチスに銃殺された大学教授の父に関して彼女は嘘をつく。父親が実はユダヤ人抹殺論者だったからである。ソフィーが収容所から生還したポーランド人、同居しているネイサンがユダヤ人であり、そうした背景に絡めて前半に秘められていた謎が徐々に判明してくる構成が実に巧い。

展開が進むに連れ明らかにされる過去は過酷さを増し、彼女の最後の告白は衝撃と言って良いくらいになる。収容所で彼女は、幼い息子と娘のどちらかを焼却炉に送るか決めろと迫られたというのである。時に美しい女性としての立場を利用して生き残ろうとしたのも確かであるが、誰がそんな彼女を責めることができよう。

600万人虐殺とも言われるホロコーストだが、悲劇はさらに生き残ったユダヤ人やポーランド人に生き残ったが故の苦痛を与えるのである。恐らくその苦痛が彼女をして第二の選択を行わせる。即ち、“スティンゴ”が、精神の病気が高じてひどい暴力性を発揮し始めたネイサンから離したソフィーを故郷に連れ帰り結婚しようとするのだが、結局彼女はネイサンの許に戻り、間もなく二人は青酸カリで心中する。

収容所から生還した者が選ぶ死の意味はひどく重い。彼女の二回の選択はいずれも生死に絡む重すぎるもので、これを重ねたことでドラマ的に豊かになった。人間が生きることはなかなか難しい、と僕らは安易に言うが、彼女のようにトラウマを抱える者、ネイサンのように死に至る病(絶望)を抱える者の苦しみは真には理解できないであろうと思う。

冒頭で述べたように若手演技派だったメリルの演技は抜群、映画デビュー作のクラインも好演。アラン・J・パクラの進め方も堂々たるもので、彼の作品ではベストと思う。

今回観た字幕は公開時のものと思う。しかるに、ネイサンの病気については当時の表記「精神分裂病」から「統合失調症」に替えられた。何だか煩わしいですな。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「あの映画のあのシーンは
辛くて観れない」で賞、というのが
あれば本作はかなり上位に入るかと。

79年「クレーマー・クレーマー」以降
80年代でのメリルさんの快進撃は
すごかった。その中でも本作の彼女の
演技は素晴しいですね。
長い原作も読んだ記憶があります。
なんともいえない後味でしたが
映画も原作も、名作と思います。
vivajiji
2017/10/05 13:56
vivajijiさん、こんにちは。

>「あの映画のあのシーンは辛くて観れない」で賞
そうでしょうねえ。
人によってはトラウマになるくらいでは?

>本作の彼女の演技は素晴しい
演技に関しては、僕なんぞよりはるかに厳しく一家言あるvivajijiさんのお墨付き!
結果的に同意見となり、当方も自信を持ちました^^

>長い原作
映画の原作を次々と読むという読書の選択肢もありますかねえ。僕の場合は読んだのが映画にもなっているということが多いのですが。
映画の原作と言えば、「日の名残り」のカズオ・イシグロがノーベル賞を受賞しましたね。日本が注目している村上春樹ではなかったですが、日本人(現在は英国籍)であることには違いないので、明日から図書館で彼の本、特に「日の名残り」は暫く借りるのが難しくなるでしょう(笑)
オカピー
2017/10/05 22:07

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