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zoom RSS 映画評「風とライオン」

<<   作成日時 : 2017/10/31 08:08   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
1975年アメリカ映画 監督ジョン・ミリアス
ネタバレあり

40年弱前にTVで不完全版を観て以来。オリジナル言語完全版は今度が初めてである。

ジョン・ミリアスはまず脚本家としてなかなか注目すべき作品を書き、やがて監督も兼ねるようになって本作や「ビッグ・ウェンズデー」という良い作品を発表したが、脚本だけ担当した「地獄の黙示録」を最後にじり貧になった。

1904年、欧州列強に分断されているモロッコで米国軍人の未亡人(キャンディス・バーゲン)と二人の子供が小部族に拉致される。首長ライズリ(ショーン・コネリー)は、彼らを人質に、ドイツに傾く国王(=サルタン)やロシアに言いなりの知事の鼻を折って、国の主権奪回を図るつもりなのだ。
 米国大統領セオドア・ルーズヴェルト(ブライアン・キース)は彼等の奪還を大義名分に列強に割って入る魂胆を抱く。そうこうするうちに気の強い未亡人は首長を理解するようになり、米軍により解放された後米軍をけしかけて、ドイツ軍に捕らえられた首長を救出する。

この少し後の事件をテーマにした「アラビアのロレンス」などと併せると、欧米がイスラム諸国に残した傷が如何に深く、それが現在のテロに繋がっていることが明確ではなくても解る。
 本作についてはアメリカは半ば善玉のようになっていて、事実を考えれば良い気なものだという印象は禁じ得ないが、かと言って不愉快に思うのも心得違いだろう。

ミリアスが黒澤明のシンパなのはつとに有名だったが、本作でのアクション・シーンにはそれが伺える。特にコネリーが単独で、逃げ出した挙句に山賊に捕らえられた母子を救出する場面などは三船敏郎の雰囲気があり、ご機嫌な見せ場である。
 キャンディス未亡人が米軍に働きかかける形でドイツ軍を襲う場面は気分的に西部劇そのものになるが、これも黒澤御大が西部劇の影響下で時代劇を作っていたことを却って思い起こさせるわけで、先祖返りみたいな印象だ。

が、作劇的に上手くいっていない箇所がある。ミリアスとしては、首長と米国大統領を好敵手として見せようとしたのだろうが、大統領自らモロッコなどに出かけるわけもないので、二人の関係性が結局は有機的に構築されないことである。それならキャンディスにルーズヴェルトを説明させたように第三者による説明だけに済まし、「ゴドーを待ちながら」のゴドーのように登場しないキー人物として扱ったほうがお話として締まったのではないか。ブライアン・キースは好演でしたがね。

コネリーはいかにもこの時代の彼らしい人物像を楽しそうに演じているが、僕のイメージするキャンディス・バーゲンが久しぶりに観られたのが今回の再鑑賞の収穫。

コリン・ウィルソンによれば、アラビアのロレンスはアウトサイダーだった。

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コメント(16件)

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冒頭。賊が豪邸に侵入
主人が賊を一人一人リボルバーで撃つ。しかし、弾が尽きる。多勢に無勢・・・。あの演出は上手いです

>コネリーが単独で、逃げ出した挙句に山賊に捕らえられた母子を救出する場面などは
>三船敏郎の雰囲気があり、

同感です

>近藤氏は、最近、再びよく見るようになりましたね。

北野映画に朝の連ドラ
蟷螂の斧
2017/11/04 20:09
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>冒頭
ここがハイライトという気もします。
この感覚が良いので、最後まで乗せられて観てしまう。
ミリアスは才人でしたが、世の中ままなりませぬTT

>北野映画に朝の連ドラ
バラエティでも見ました。
実際どうなのか知りませんが、映画でも素でも、江戸っ子みたいな感じが良いですね。
オカピー
2017/11/04 21:51
>映画でも素でも、江戸っ子みたいな感じが良いですね。

彼は京都府出身。
「ごちそうさん」「あさが来た」では、大阪の人を好演しました

>ミリアスは才人でしたが

「デリンジャー」が良かったです

>この感覚が良いので、最後まで乗せられて観てしまう。

つかみはOK
蟷螂の斧
2017/11/06 21:01
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>彼は京都府出身。
そう言われれば、上手い関西弁を聞いたことがある気がします。
関東人も関西人も問題なく演じられるわけですね。

>「デリンジャー」
ウォーレン・オーツがお好きでしたね。
これから益々活躍という時になくなってしまいました😞
この作品で、暫く忘れられていたデリンジャーは再び有名になりました。
オカピー
2017/11/06 22:28
>関東人も関西人も問題なく演じられるわけですね。

上手い役者さんです
今ふと思い出しました。「太陽にほえろ」で犯人役。猟銃を使う凶悪犯ショーケンと闘う。
CSまたはCATVのチャンネルで「太陽にほえろ」が再放送されているけど、その話は放映されない。なぜ

>デリンジャーは再び有名

1930年代が舞台。
1970年代の人たちが憧れた時代?
蟷螂の斧
2017/11/08 20:58
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「太陽にほえろ」・・・放映されない
最近は差別用語の使用で欠番となるケースが多いようですが、この挿話は実際の銃が使われているという理由らしいですね。
 僕は、個人主義者を自認しているので、人権を重んじ、差別を嫌っていますが、差別用語を理由に放送しなかったり、音声を遮断することは次元の違う話と思い、常に批判しています。臭いものにふたをしても何も解決しませんし、却って人々の寛容度が下がっていることを示すような気がしています。
 先ほど見た「東京湾消失」というパニック映画(テロ映画)でも、外国のテロリストが日本語で日本人を批判するのですが、そっくり音声が抹消されていました。拘束されている日本人が激しく反応する理由が分かりません。それでいて「作者の意図を尊重し、一部修正して」などと言われても、腹が立つだけです。
 とにかく、「きちがい」は、「めくら」「つんぼ」以上にご法度のようですね。

>1970年代の人たちが憧れた時代?
どうもそのようです。
 1972から75年くらいにかけて「スティング」「ペーパー・ムーン」といった、1930年代前後を背景にした作品が大量に生まれましたね。
オカピー
2017/11/09 10:12
>実際の銃が使われているという理由

残念です

>「きちがい」は、「めくら」「つんぼ」以上にご法度

近頃、僕が気に入ってる座頭市シリーズ
それらの用語がたくさん出て来ます。その方が自然で見やすいです
ウルトラセブンの第12話も放映するべきでは?

>「スティング」「ペーパー・ムーン」といった

そうですね。1930年代ファッションも楽しいです。
禁酒法の時代でもありました。
蟷螂の斧
2017/11/10 06:20
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>それらの用語
そうなんです。
映画以外でも、再発売された古い本の巻末に、言い訳が書いてあるのを読むと、息苦しい世の中になったものだなと思います。
 アメリカで言われるポリティカル・コレクトネスという考え方と同じものですが、表面的に繕っても本質は変わらず、一人の人物の出現により、差別・分断が簡単にはびこってしまう。人間はまだまだですね。

>ウルトラセブンの第12話も放映するべきでは?
これは被爆者への配慮ということですね。
 しかし、作者は寧ろそれ(被爆者への思い)を訴えていると思うわけですが、逆に捉えられることが多い。

>禁酒法の時代
「禁酒法」は、良かれと思って施行した結果、ギャングがはびこることになった、という失敗の典型例。共謀法もその可能性があると思っていますが。
 差別用語も同じとは言いませんが、差別或いは差別助長の目的で行われる発言以外はそのまま放映されても何の問題もないと思いますがねえ。

>「東京湾消失」
ではなく、正しくは「東京湾炎上」でした。「首都消失」と合体してしまった過ちです。訂正してお詫びいたします<(_ _)>
オカピー
2017/11/10 17:44
>ポリティカル・コレクトネス

『行きすぎた「ポリティカル・コレクトネス」アメリカはいつから社会主義になったのか』
今ネットで見つけました

>作者は寧ろそれ(被爆者への思い)を訴えている

その通りです。また作品の出来も良いです

>良かれと思って施行した結果、ギャングがはびこることになった

共謀法もどんな方向に行ってしまうやら・・・

>訂正してお詫びいたします<(_ _)>

いやいや。とんでもないです
蟷螂の斧
2017/11/11 07:20
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>ポリティカル・コレクトネス
実際には、日本はこれを1970年代から輸入し始め、現在に至るわけですが。
西部劇の対訳で、インディアンを「先住民」と書かれたりすると、怒りにかられます。当時の誰が「先住民」などと言ったんだってね。現在でも、母国の西部劇では"Indian"と言われている。日本が勝手に変えているわけです。
クリスマスの日に「メリー・クリスマス」と言えないなんて、変ですね。ユダヤ人やイスラム教徒の人に「そう言え」と強制するとしたらダメですけどね。

>共謀法
若しくは共謀罪法ですが、今日の新聞によると、宝塚市が厳しい要綱を示したようです。良いことだと思います。
反面、「政治的」として護憲派の人の集会に場所を提供しない自治体が増えていますが、今年流行った「忖度」というやつですね。「政治的」というのは口実で、安倍氏が改憲主義だからそれに合わないことを排除しているだけ。「では改憲派の集会にも貸さないか?」と言えば、まず貸すのですから。

オカピー
2017/11/11 21:20
>クリスマスの日に「メリー・クリスマス」と言えないなんて、変ですね。

今、調べました
「アメリカでは最近「メリークリスマス」と言ったり書いたりしません。」
いやいや、驚きました
「特にニューヨークではユダヤ人が多い。ユダヤ人の4人に一人がニューヨークに住んでいる。」
なるほどねえもう、何でもいいやって感じです。

>「では改憲派の集会にも貸さないか?」と言えば、まず貸すのですから。

それもまた妙な話です

>ブライアン・キース

彼も晩年は随分悩んだんですね
蟷螂の斧
2017/11/13 20:07
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>いやいや、驚きました
そうでしょう^^:
日本などキリスト教徒でもないのにクリスマスだ、ハロウィンだ、ですよ。
この節操の無さが日本が宗教的対立が殆どなく過ごした理由でしょう。
これこそ日本人の特技ですよ。
一見悪いことが良い面として表れる典型ではないかと思っております。

>それもまた妙な話です
そもそも、「政治的」と判断することが「政治的」です。この矛盾が一部の小役人には解らないようですよ。

>ブライアン・キース
記憶していなかったので、調べてみました。
彼も自殺組でしたか。ふーむ、悲しいですね。
僕がよく憶えているのは、脇役で有名だったギグ・ヤングが結婚したばかりの奥さんを殺して、自分も後追い自殺(日本流にいえば心中)した事件です。正確には解らないらしいけれども、心中で間違いないようです。
オカピー
2017/11/14 19:25
>ギグ・ヤング

「ガルシアの首」では殺し屋の役。そして、ブルース・リーの遺作「死亡遊戯」で主人公に協力的な記者役。それから1年もしないうちに、その事件・・・何で心中したのでしょうか?

>「政治的」と判断することが「政治的」

自分がその通りだから、そう言う言葉が出てしまう人っていますよね

>この節操の無さが日本が宗教的対立が殆どなく過ごした理由
>一見悪いことが良い面として表れる典型

なるほど勉強になります。
蟷螂の斧
2017/11/15 22:06
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>ギグ・ヤング
理由は解りませんが、アメリカで銃で亡くなる人のうち半分くらいは自殺者ということですから、アメリカの銃社会の問題は深刻です。自殺者に関しては、銃がなければ別の手段を選ぶのでしょうが。
最近は、テロリストでもない白人が乱射をするものですから、差別主義者トランプは何も言えない。

>自分もその通りだから
ネトウヨと言われている連中もしくは彼らが支持する人々は、韓国人を批判して韓国人を真似(例えば自国有利な歴史教科書)し、中国人を批判して中国人を模倣(報道機関への批判、締め付け)する。もしくは自分がそうだからそういう批判をする。
彼らがこのまま日本を牛耳っていたら、そのうち日本のほうが民度の低い国になりますよ。僕の予想が外れることを祈ります。
オカピー
2017/11/16 21:26
>アメリカで銃で亡くなる人のうち半分くらいは自殺者

そうなんですかどうも事件に巻き込まれたかと思ってしまいますテレビ版「スーパーマン」のジョージ・リーブスも・・・?

>テロリストでもない白人が乱射をするものですから

この人種が犯罪を犯すとか・・・決められませんね

>そのうち日本のほうが民度の低い国になりますよ。

そうです。オカピー教授の予想が是非外れて欲しいです

>キャンディス・バーゲン

思春期に憧れたとか?
蟷螂の斧
2017/11/19 13:00
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>ジョージ・リーブス
自殺か他殺かはっきりしないようですね。

>予想が是非外れて欲しいです
一方で、人間は振り子のような行動をすると思うところもあるわけで、そこまで行くと反動があるはずなのですが。
まだ、そこまで言っていないということですかね。

>キャンディス・バーゲン
一番好きだったのはキャロル・リンリーちゃんで、「ポセイドン・アドベンチャー」で少し人気が復活したけれども、厳密には僕らの世代より前の青春スター。
キャンディスは彼女より少し後発ですが、僕が映画ファンになった頃はキャサリン・ロス、ジャクリーン・ビセットなどと競い合う感じで、その中では一番好きだったかなあ。フランスではカトリーヌ・ドヌーヴやナタリー・ドロン。
この時代のスターは僕にしてみると、大昔の人、或いは僕が大人になった後出てきた俳優と違ってやはり思い入れがあるんですよね。彼女たちがその時代(僕が思春期だった頃)のイメージで出てくる作品が好きです。
オカピー
2017/11/19 22:57

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