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zoom RSS 映画評「エレファント・マン」

<<   作成日時 : 2017/09/25 09:10   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1980年アメリカ=イギリス合作映画 監督デーヴィッド・リンチ
ネタバレあり

大学時代に映画館で観た。19世紀英国の埃まで感じさせる傑作であると評した。今回見直しても、基本的にその評価は変わらない。違うのは公開当時デーヴィッド・リンチは新人で「すごい新人が現れた」という感想を抱いたのに対し、現在は異色監督リンチの出世作という思いで他作と比較して観ることくらいである。
 リンチのファンではない僕はいかにもリンチらしくない「ストレイト・ストーリー」を一番買っているが、本作がそれに次ぐ。その他はよく解らない。

19世紀後半、ロンドン病院の外科医トリーヴズ(アンソニー・ホプキンズ)は見世物小屋に“エレファント・マン”と呼ばれる不幸な奇形人間ジョン・メリック(ジョン・ハート)を発見、親方(フレディー・ジョーンズ)と交渉して病院で世話をすることにする。最初は渋い顔をした院長(ジョン・ギールグッド)も青年に知性があると知り入院を認める。
 しかし、病院の夜警は小遣い稼ぎに有償で物見高い大衆を病院に連れてき、その中に紛れ込んだ親方にメリックは連れ去られ、再び見世物小屋の人になる。
 が、仲間が彼を脱走させて帰国の船に乗せる。無事に病院に戻ってきたメリックは、彼を名士にした恩人である女優ケンドール夫人(アン・バンクロフト)の招待を受けて劇場へ行き万雷の拍手を受ける。これに満足したメリックは大聖堂の模型を完成させると、静かに仰向けに横たわる(病気の為にこの態勢を取ると彼は死ぬ)。

この作品はヒューマン(人間的)な映画だが、必ずしもヒューマニスティック(人道主義)ではない。
 原作者であるトリーヴズは博愛主義の人物だが、その彼とて自分の利を追ってい、見世物小屋と親方と変わるところがないのではないかと自問自答する。ケンドール夫人も慈愛の精神を発揮するが、本当に慈愛の気持ちだけでああした行為をしたのであろうか、という疑問を残す。
 その他の人々に至っては一見温かそうに見えても好奇心で接するだけであり、況や主人公の奇形ぶり見たさに寄って来る人々をや。

人々のこうした扱いは“人間的”であるが、博愛精神以外で接する人々、特に夜警に連れられてやって来る人々の場面に至ってはホラー映画の様相を呈する。彼らほどひどくなくても、人は外観で他人を判断しがちであり、ひどい場合は差別や虐めに発展する。
 それに対して、写真以外で画面に現れない母親を崇拝しその愛情を求め続けるメリック青年の純粋なことよ。虐める人が複数いれば人間的にひねくれるのが人情だが、彼はトリーヴズらの愛情に素直に応える。本作で一番胸を打つのは彼の純粋さ・崇高さである。

フレディー・フランシスを撮影監督に迎えたモノクロの画面は非常に美しく、画面の構成にリンチらしさがところどころ出てくるが、全体としては正統的で比較的万人受けする作品と言えるだろう。ホプキンズ、ハートら出演陣は揃って好調。

島崎藤村「破戒」を再読した。良心があれば義憤にかられないではいられない下層階級への差別=実質的虐待のお話である。大昔から言っているように、差別する人間こそ弱い。

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