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zoom RSS 映画評「ハイ・ライズ」

<<   作成日時 : 2017/09/24 10:19   >>

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☆☆(4点/10点満点中)
2015年イギリス=ベルギー合作映画 監督ベン・ウィートリー
ネタバレあり

太陽の帝国」での経験を経てSF作家になったJ・G・バラードは、僕を一時的にSF嫌いにした恩人である(笑)。中学生で「燃える世界」「結晶世界」などという訳のわからないニュー・ウェーヴSFを読んだのが間違いだったのであるが、これ以降SF=哲学という固定観念が出来上がってしまった。今でもそれほど間違った考えではないとは思うが。

本作は、そのバラード氏が1975年に発表した同名SFの映画化で、「世界」3部作に比べれば(あくまで相対的に)解りやすい感じ。

一応の近未来で、貧困層と隔絶した40階建てのコンドミニアムが舞台だが、住民の間では所得格差がやはりある。現実の日本でも、マンションの高層階に行くに従って相続税が上がるようになるらしいように、その富裕度は階の上昇にほぼ比例する。
 ここに3人の男が住んでいる。ビルの設計者であるロイヤル(ジェレミー・アイアンズ)は最上階に住み、名前が示す如く住民に君臨している。医師のラング(トム・ヒドルストン)は中ほどに住んでいる。最下層に住むワイルダー(ルーク・エヴァンズ)はTVプロデューサーで、やがて停電を発端に階級対立が顕在化して暴力的になっていく様子をドキュメンタリーとしてとらえようとする。
 コンドミニアムが壊滅的になる中、女性陣を侍らすラングが勝ち抜く形で終わる。

完全な貧困層はいないので中途半端になっているが、まあ、コンドミニアムの階層が社会の経済的ヒエラルキーをそのまま象徴していると考えれば良いのだろう。こんなお話が現在映画化されるのは、やはり、経済格差が再び顕在化してきたからと思われる。
 ユートピアと思ったところがとんでもないディストピアだったというお話で、型にはまったディストピアSF映画よりは興味をそそられるにしても、中盤以降は大して変わり映えしない、しかも、雑然とした情景が延々と続く形になって退屈させられ、その結果混沌を増すお話そのものも解らなくなってくる。

奥さんエイミー・ジャンプの脚本(脚色)を映画に移したベン・ウィートリーの絵作りにはスタイリッシュで魅力的なところもあるが、中盤以降前述したように雑然としてその魅力が発揮しきれなくなる。

その昔「雨のバラード」なんて曲がありましたが。

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ハイ・ライズ ★★★
巨匠J・G・バラードのSF小説を「マイティ・ソー」のトム・ヒドルストン主演で映画化。上層階と下層階の間に大きな階級格差が存在する40階建て高層マンションを舞台に、ある出来事をきっかけに内部の秩序が破壊され、それまで死守されてきたヒエラルキーが崩壊していく... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2017/09/25 17:14

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
 この映画は、ちょっと面白そうだなと思いつつ,未見であります・・。

「結晶世界」を読み、訳もよくわからずに感動し、スペキュレイティブ・フアンタジーなどと耳慣れぬ言葉を喜んで使っていたアホな中学生でした(笑)
プロフェッサーとは違って、そのままSFの果てしないセカイにズブズブと浸かり続けましたが(笑)
短編集「時の声」などを読み返すと、やはり、バラードはSF純文学の人であり、短編の作家だと思いますねぇ・・。

「太陽の帝国」では、軍国主義の日本に対して、西洋とは違う立場で世界を切り開いていく存在として、主人公の少年(バラード自身)から見て、ある種好意的に描かれていたと思います。

ここ2,3年のディストピア、A・I物のSF作品でお勧めなのが、「エクス・マキナ」で、これはぜひ、プロフェッサーの評論を読みたいところであります。
内容もさることながら、主演のアリシア・ヴィカンデルと日英ハーフのソノヤ・ミズノのバレエ経験のある両女優が好演しています。


 ・・・労組と日教組を支持母体として持つ民進党が、自分たちとは真逆の綱領はあれど、党としての政策も実態もないに等しい「希望の党」と名を変えてまで生き延びようとするのは見苦しい以外に言葉がありません・・。
安部政権が良くないとしても、小池百合子氏のような、名政界サーファーではあってもプロの政治家として腹の据わっているか甚だ心もとない人に投票するのは、モーゼに不審を抱いて金の仔牛を崇拝した、イスラエル人の愚を犯すことになりかねないのでは・・。

橋本さんあたりは、国民は、そんなに甘くないと仰いますが、いやいや甘いですからね、この国の大衆は(笑)

浅野佑都
2017/10/02 04:13
>訳もよくわからずに

わけもわからず、の間違いですね!
浅野佑都
2017/10/02 04:15
浅野佑都さん、こんにちは。

>ちょっと面白そうだな
そうなんですけどね〜、後半が気に入りませんでした。

>プロフェッサーとは違って
同じ作品を読んでも大分違う結果となったわけですね^^
どちらが良かったか解りません。その代わり僕は百科事典(の索引)に載っている古典を読破することに決めて40余年、未だに読み終えておりません。やれやれ。

>「太陽の帝国」では、軍国主義の日本に対して
そうですね。好意的でした。
当時は多少日本を悪く描いたところで騒ぎにはなりませんでしたが、最近は安倍首相と産経新聞のせいで力を付けたネトウヨさんがすぐに騒ぎます。未鑑賞ですが、反日的でも何でもない「アンブロークン」の日本公開阻止騒動は見苦しかった。
今なら「戦場にかける橋」など大変なことになりますよ。もうリバイバルはできないかな?

>「エクス・マキナ」
デウス・エクス・マキナから来たタイトルでしょうね。
内容は想像もつきませんねえ。
もし観ることが出来たら(なかなか積極的に行動しない僕です^^;)、何とか書いてみます。

800字に収まらなかったので、後篇に続きます。
オカピー
2017/10/02 23:56
続きです。

>小池百合子氏
安倍氏も政治家と言うよりは政治屋ですが、彼女はそれ以上に政治屋ですよね。
TVキャスターをやっていた時から知っていますが、国のトップにまでならんかという存在になるとは夢にだに想像できませんでしたねえ。

>民進党
安倍政権との1:1との対決という前原氏の目的は理解しますが、僕は現在の自民党が余りにもひどいので当座は共産党よりぐっと現実路線である民進党に入れようかと思っていたから、その対象がなくなって比例代表はどこに投票したら良いのか解らなくなりました。余り野党の票がばらけて安倍政権がさらに威張り続けるのを見るのも癪ですし。
そもそも今、700億円もかかる総選挙をする理由がないのだけれど。これこそ税金の無駄遣い。

>国民
内閣をちょっと改造したくらいで、支持率がかなり上がるような国民ですからねえ。

それとは別に、先週末の「朝まで生テレビ」を録画して観ましたが、北朝鮮に関する視聴者アンケートの結果にびっくり。乱暴にまとめて対話派と軍事解決派が6:4くらいの比率だったですよ。この方々は、その場合に日本に火の粉が降りかかって来ないと思っているのでしょうかねえ。
オカピー
2017/10/02 23:57

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